プラチナ社会研究会 新産業は、人が輝く暮らしから

米国における高齢者ケアの新たな潮流~Live!yの新たな見守り

 

協力 Rapid Access International, Inc. 2013年4月
http://www.rapidaccess.com/

米国では、ベビーブーム世代が退職期に入り、毎日1万人近くというペースで老後に向かう中、ヘルスケア関連企業にとっては高齢者ケアをより効率的に、コストを押さえて提供する方法の模索が重要になってきている。現在、ベビーブーム世代は米国の人口の約26%を占めているが(約7千9百万人)、これは将来の産業動向を確実に左右する規模だ。今後20年で、米国では高齢者ケアのニーズは史上例を見ないほどにまで達するであろう。つまり、この産業が成長もイノベーションも遂げるということだ。現在、「Live!y」という米国の企業は、祖父母がその家族とのつながりを保ちながら、安全に暮らせるよう日常生活を見守ることができるシステムを開発した。

Live!y社は、Iggy Fanlo氏、David Glickman氏、Keith Dutton氏の3名が創業し、現在は生産準備段階にある。同社は2013年4月16日、スタートアップ収入と製品知名度を上げようと、クラウド・ファンディングを行うウェブサイト「Kickstarter」で資金調達活動を開始した。Live!y社の意図は、多くは独り身だが、計画されたコミュニティではなく自宅で安全・快適に暮らしたいと願う高齢者を見守る、というものだ。Live!yのシステムは、独自の携帯電話ネットワークと、高齢者の自宅中そこここの(冷蔵庫、薬箱、洗面所等)見えるところに設置したセンサーを利用して、高齢者個人の活動を毎日見守ることができ、日常のパターンに何らかの乱れが見られれば、最愛の家族や、関係当局に伝達される仕組みになっている。これにより、高齢者が自立して、尊厳を持って自分の生活を送ることができ、利用者である高齢者自身もその家族も満足することができる。

これはLive!ly社にとって重要な点だ。問題発生時には然るべき当局に通報されることで、高齢者の日常生活を見守ることがその命を救うことになるためである。実際、1982年以降には、全米郵便配達員労働組合(National Association of Letter Carriers)と地域社会の関係当局が協力し、高齢者が自宅で明らかに変わったことはないか見張っておく「Carrier Alert Program」という活動を自主的に実施している。しかし、このサービスが利用できるのは一部のコミュニティに限られており、また、人間による見張りに依存している。一方、Live!yは場所を問わず利用でき、状況の変化や通常とは異なる様子が見られればいつでも家族に通報できる専用センサーを活用している。

センサー技術

Live!y社が利用するモニタリング・センサーは、磁石になっており、家中の至る所に貼り付けて設置できる。デザインは小型で洗練されており、色が白のため各種機器や家具になじむようになっている。このシステムには電話やインターネット接続は不要だ。住宅のどこにでも設置できる小型の専用ハブで接続できるためだ。これで高齢者は技術的な心配もなく暮らしを継続できる。一旦接続を開始すれば、センサーが日常生活(食事、薬の服用、外出等)を記録し、日常の習慣が崩れた場合にのみ家族に通知される(スマートフォンのアプリケーション、電子メール、電話での通話等を利用)。また、人に機器等を装着する必要はない。これも、高齢者が自立しながらも家族とのつながりを保つのに役立つ。

高齢者向け個別ニューズレター

Live!y社の製品でもう一つ興味深い試みとしては、技術にあまり明るくない高齢者が、家族のソーシャルメディアを、より簡単に、有用なかたちで見ることができる、というものがある。Live!y社が提供開始を目論んでいるのが、毎週ソーシャルメディアの更新をニューズレターの形にし、高齢者にハードコピーを配達する、というものだ。このニューズレターは、任意の人のソーシャルメディアの更新状況、写真、コメント等を、毎週、Live!yのスタッフがレイアウトやデザインをして作成する。これにより、インターネット利用者でなくとも家族とつながっていられ、近況を知ることができる。Pew Research Centerが2012年に実施した調査によると、70歳以上の人口のうち49%はインターネットを利用しておらず、この割合は年齢が上がるにつれて高くなっている。

サンフランシスコに拠点を構えるLive!y社は、スタンフォード長寿研究センター(Stanford Center for Longevity)の所長を務めるローラ・カーステンセン(Laura Carstensen)博士を顧問に招いている。カーステンセン博士は、高齢者の社会情動的福利に関する世界的権威であるが、Live!y社の諮問委員会の委員就任、同社の製品開発の初期段階からの監督を引き受けた。Live!yのプロトタイプ開発後、製品の研究を全米に仕向け、見込みの高い成果が戻ってきた。

同社CEOのIggy Fanlo氏は、「フロリダでは、医療モニタリングや緊急応答とは全く異なるものと捉えてくれた」と言う。「日常の活動を共有できるという考え方なのだ。活動していることを他の人に知らせ、健康であるということを明確に示すことができる。このような視点こそ、Live!yが解決しようとする問題なのだ。」という。

現在の米国の高齢者層は、前世代から劇的に変化した。総じて、現代のこの世代は、これまでと比べ、モダンで健康的であり、ある部分では経済的に安定しているといえる。実際、Pew Research Centerによると、ベビーブーム世代の61%が実年齢よりも9歳若いという感覚を持っている。この世代は一般的に、米国のこれまでの高齢者世代よりも遙かに活発で活力にあふれている。このような背景から在宅でのヘルスケアの需要が大幅に伸びてきている。自らの希望するところに住まうという自立性や快適さを重視する高齢者が増えるに従って、体系的・計画的な環境に高齢者を押し込むという時代は衰退をたどっていく模様だ。Live!yは、高齢者の行動を見守りながらも干渉は最小限に留め、家族や友人とのつながりを保てるものであり、同社は在宅の高齢者ケアに関し、新しく現代的なアプローチを先駆けている。

株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

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