プラチナ社会研究会 新産業は、人が輝く暮らしから

無人航空機の民間市場への拡大

 

協力 Rapid Access International, Inc. 2013年5月
http://www.rapidaccess.com/

無人航空機(無人機とも呼ばれる)が、ここ数年だけでも急激に強力な影響を及ぼしている。無人機の利用は、特に米軍内で、関心の的となっており、道徳主義か現実主義かで白熱した議論に発展している。道徳的な観点からは、無人機は個人の自由を侵害すると言い、現実的な観点からは「必要悪」であると擁護されている。しかし確かに言えるのは、無人機の存在が一般に意識されて以来、米国やその他の世界においてその利用が劇的に拡大したということだ。無人機は、郊外で逃走する犯罪者の行方の特定や、中東でテロリストやそのシンパの追跡等、世界での犯罪者の取り締まりにおいて効果を発揮できることが実証されてきている。無人機の利用をめぐり、政治的なレトリックは激しさを増す一方、このような無人機の能力の軍事や法施行以外への利用に関心が高まっている。連日、民間部門のサービス迅速化に無人機をいかに活用できるのか議論が重ねられている。また、賛否はともかく、2015年までに1万機を超える無人機が米国上空を飛行することとなる。

無人機の導入開始以降、特に米国内の産業界は、これを現実的に活用できる術を見出そうと奔走してきている。最近では、昨年法案が米国議会を通過し、オバマ大統領の署名をもって立法化されたことで、今後は米国領空での無人機の飛行が可能となり、連邦航空局(FAA)は2015年までの規制整備が義務づけられることとなった。残念ながら無人機といえば直ちに死や破壊が連想されてしまうのだが、民間、行政部門を含む様々な部門で社会・経済的利益に適うような無人機の活用方法について興味深い案が複数示されている。米国経済の様々な部門がどのような形で無人機を利用するにせよ、その市場は劇的に拡大する様相を呈している。

農業

エコノミスト、科学者、農家はいずれも、米国における無人機の主な利用は、少なくとも初期段階としては、農業分野となるだろうと予測している。無人機は、通常の航空機よりも低い高度を飛行できるため、高い精度で農耕地の調査ができる。無人機は、非常に小型の航空機で、大部分に発泡材料を使用しており、一般的な有人航空機と比較して費用も安くつく。そのため、米国の農家にとっては非常に有効な選択肢となる。国際無人機協会(Association for Unmanned Vehicle Systems International:AUVSI)という業界団体による最近の報告では、2015年における無人機の経済効果のうち90%(約20億ドル)は農業関連となり、カリフォルニア州、コネチカット州、カンザス州、ワシントン州がそのブームからの利益の大半を享受する見込みとされている。米国での無人機利用の将来動向は農業が中心と思われるが、現在その他にも探索中の分野が存在している。

空中監視事業

無人機の利用・導入で最も急速な成長が見られる分野の一つとして、航空監視が挙げられる。無人機は、ヘリコプターや一般の航空機と比較してコストが低いため、都市部、地方のいずれにおいても、広範囲の監視が十分可能となった。監視の利用例としては、家畜の監視、野火のマッピング、パイプラインのセキュリティ、ホーム・セキュリティ、路上の巡回等がある。対象物の自動検知方法の開発が進み、空中監視事業での無人機技術利用は急速に拡大している。つまり、ある人が特定の場所に所在しているのか否かをリアルタイムで正確に検知できるのだ。これは、広大な領域で監視が必要な場合に非常に有益である。また、今や技術は誤検知がほぼゼロの水準まで達した上、コストも比較的低くなったことから、監視分野の将来に関して最も顕著な動向となりつつある。

運輸

無人機は運送業にとっても魅力となりうる。しかし、この分野での無人機利用はまだ黎明期に過ぎない。ヘリコプターにも似て、貨物は無人機の側面や下部にも搭載できるが、毎回移動時の空気力学(距離、天候等)を慎重に確認する必要がある。現時点ではこの点が運搬には不都合である。しかし、機体のコストが下がり、技術への投資が増加すれば、無人機の存在が運送業、貿易、交通のロジスティクスを根本から変える可能性がある。

科学的研究

もう一つ、無人機から好影響を受けている分野に、科学・研究がある。無人機は機体が小型で機動的であるため、人間が行くことのできない場所でも操作が可能である。例えば、海洋大気局(National Oceanic and Atmospheric Administration: NOAA)は2006年にエアロゾンデ(Aerosonde)という無人機を「ハリケーン・ハンター」(ハリケーンの気象観測機)として運用を開始した。オーストラリアのビクトリア州を拠点とするAAI Corporation社はこの無人機システムの設計・製造を手がけている。このシステムは重量約16キログラムであり、ハリケーンに飛び込んで、ほぼリアルタイムで直接フロリダ州にある国立ハリケーン・センターへとデータを送信することができる。有人のハリケーン・ハンターが捉えた標準大気圧や気温データに加え、エアロゾンデ・システムはこれまでよりも遙かに水面に近い部分での計測値を提供してくれる。

ここに挙げた産業は、無人機の商業利用の影響が最も大きいと見込まれるもののみに過ぎない。その他にも、石油、ガス、鉱物探査、人命捜索・救助、空中給油、森林火災防止、環境保護等で、既に無人機が利用されているか、もしくは将来導入が見込まれている。現代の世界では、企業・産業は迅速に変化を遂げることができる。無人機は、防衛目的のみであったのが、ロジスティクス、研究、運輸にまでも拡大しつつあり、さらに今後は計り知れない産業にまでも広がりうることは非常に興味深い。

株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

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