プラチナ社会研究会 新産業は、人が輝く暮らしから

米国で始まる自動運転車の登場

 

協力 Rapid Access International, Inc. 2013年8月
http://www.rapidaccess.com/

米国の自動車メーカーは、常に最先端であり続ける能力を誇ってきた。米国の自動車産業における年間新車販売台数は約1千万台であり、ここ数年は順調に伸びてきている。自動車メーカーは、消費者の関心を喚起し売上を伸ばし続けていくために、今後数十年でどのような車が市場を席巻するか明らかになったと考えている。自動運転車だ。

自動運転車の開発は、数十年も前から行われてきていた。しかし、高効率で商用に適うモデルが製造されるようになったのは最近になってからだ。「自動運転車」は、5年以内に「一般の人々」にとって現実となる、とGoogle社のセルゲイ・ブリンCEOは2013年7月に述べている。同社が過去数年にわたり行ってきた自動運転車の試験走行が上々の結果を上げたことを受けてのことだ。Google社の自動車エンジニア・チームは2012年8月、最新モデルが走行距離30万マイル(約48万キロメートル)を超えたと発表した。また、米国の3州(ネバダ州、フロリダ州、カリフォルニア州)が昨年、自動運転車の公道での走行を合法とする法律を可決した。Google社のブリンCEOによると、自動運転車を開発し、普及させる最大の理由は、効率化に加え、安全のためだ、としている。

毎年、米国では4万人、世界では1千万人が自動車事故で亡くなっている。Google社の自動車が路上試験走行30万マイル(約48万キロメートル)超を達成したことから、自動運転車が一般に導入される時期が到来したといえよう。Google社によると、自動運転車が「安全確保のための介入(safety-critical intervention)」(ドライバーが操作を要する状況)なしに走行できた距離は最長で5万マイル(約8万キロメートル)だったという。ブリンCEOは、自動運転車は、燃費の向上や事故の低減につながり、さらに、「現状の交通システムでは十分な対応がなされていない」視覚障害者に門戸を開くこととなるだろうという。また、「障がい者もいれば、(運転には適さない)若年者、高齢者もいる。また、飲酒しているときもある。」という。

Google社の推測では、自動運転車は渋滞緩和効果もあるという。高速道路での車間距離を縮められ、スピードを調整できるため、渋滞ゼロになる可能性があるためだ。テキサスA&M交通研究所の2012年の調査によると、米国人が2011年に交通渋滞で足止めされた時間は55億時間であり、その結果失われた時間と燃料をお金に換算すると1210億ドルに相当する。

国家道路交通安全局(NHTSA)では、自動車の自動化の度合いを5つのレベルに分類している。レベル0(全般的にドライバーが操作)、レベル1(一部の機能に限って自動化)、レベル2(例えば、アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)等、複合的な機能の自動化)、レベル3(特定の環境や交通状況になった場合にドライバーが自動車の操作を止める、限定的な自動化)、レベル4(ドライバーがナビゲーションに入力はするが、自動車の機能をコントロールできない、完全な自動化)。現在、Google社の自動運転車はレベル3であるが、同社は10年以内に都市交通の多くはレベル4となり、事実上、人間が自動車の舵取りをする必要がなくなる、と考えている。

自動運転車革命で、革新を起こしている別の企業として、スウェーデンのVolvo社がある。Volvo社の構想は、同社の自動車では死傷者を絶対に出さないようにするというもので、2020年までにこの目標を達成できるような自動車を製造する計画だ。Volvo社の究極の自動運転車技術は、自動駐車だ。これは、駐車場へのハンドル操作を手助けしてくれるというものではなく、人間が完全に車外に出て、スマートフォンのアプリケーションを使い、駐車するよう操作する、というものだ。この車両にはコンピュータ技術も搭載され、新技術や改善があればVolvo社が自動車システムを更新できるようにもなっている。現時点でVolvo社には、運転状況が理想に達していない場合に自動車自体がコントロールをしてくれる、レベル3の自動運転車がある。この自動車はカメラとレーダーを搭載しており、周辺状況に適応でき、歩行者や障害物、路上の他の自動車をよけて通ることができる。

Volvo社の他には、日産自動車も2020年までに全自動運転車を発売するという計画を発表した。日産自動車のカルロス・ゴーン社長は記者発表で、「2020年までに新しい画期的技術、自動運転車を発売する構えであり、その実現は順調に進んでいる」と述べた。アンディ・パーマー副社長はカリフォルニア州のメディア・イベントでのスピーチで、「当社の自動運転車はカメラ、センサー、GPSに加え、既に当社製品の多くに導入されているセーフティ・シールドを含む技術を活用して、人間の介在が少なく、あるいは全くなくとも操作できるようにする」と述べた。

その他の自動車メーカーで今後10年に無人自動車の発売計画がある企業としては、GM、BMW、メルセデスがある。自動車メーカーのほとんどが将来の優位を見据えて早期参入を試みている分野が自動運転だ。多大な社会的利益が見込まれる中、残る課題は価格だ。残念ながら、現時点では販売価格は公表されていないが、技術が普及するにつれ、これら自動車メーカーは当然、顧客にとって妥当な価格の打ち出しにあらゆる努力をするであろうと思われる。

三菱総研の視点

自動運転により、これまで運転席に座ることのなかった体の不自由な方のような全く新たなユーザー層への拡大が期待できる。
また経済的な視点では、「米国人が2011年に交通渋滞で足止めされた時間は55億時間であり、その結果失われた時間と燃料をお金に換算すると1210億ドルに相当する」との調査は大変興味深く、自動運転による渋滞の緩和がもたらす経済的なメリットや運転者のストレス軽減にも大きな貢献をすると予想される。

自動運転という自動車のロボット化は、社会・経済・健康・文化など多面的なメリットをもたらすことが期待される。(松田智生 主席研究員)

株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

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