プラチナ社会研究会 新産業は、人が輝く暮らしから

生涯学び続ける社会 ラーニング・ソサエティ (2009/12/14)

 

 理事長 小宮山宏

 新政権では教育と職業訓練に手厚い予算を組んでいます。過去の工業化社会と異なり、知識社会では市場も技術も変化が早くなっていますので、生涯学び続けることが必要となっています。

 では、何を学んだらよいのか。国の研究施策に関する産業界のアンケート結果を見ると「何よりも人材の基礎力を高めるべきである」という要望が多く出ています。ここで言う基礎力とは何をさしているのでしょう。企業がいう基礎力と、大学がいう基礎力は違うのです。一昔前の人たちよりも基礎力の範囲は広がっています。彼らの時代には情報科学・ライフサイエンス・量子力学の応用がありませんでした。しかし、それらを個別に学べば基礎力が高まるというわけではありません。私は、具体論をやったほうが良いと思います。学生に車やロボットを作る実験をさせても良いでしょう。そうすると、必ず線形というアイデアや行列、オームの法則などの基礎的学問が一通り出てきます。そうすることで、一つを深く習得しながら、それを具体的な対象に対して応用できるT型人間を育成することができるのです。

 初中等教育の質を高めることも重要です。今、日本で教職課程の6年制へ延長する方向で進んでいますが、それがベストでしょうか。学校という特殊な社会を改めることが必要なのではないでしょうか。それには、社会経験を積んだ人が小中学校の英語、理科、総務の分野に再就職するとよいと思います。教職員にも多様性が必要だからです。例えば、地方建設業従事者を再教育して、小中学校で図工、技術指導をしてもらえばいいのです。そして、10年したらまた別の職場に行くことのできる流動性が必要でしょう。

 理系離れも日本の将来の大きな問題です。グローバル競争の時代となり、研究者やエンジニアは教育投資がかかる一方で、雇用は不安定化しています。科学技術に興味を持たせることも重要ですが、根本的には理系人材の経済的な魅力を増すことが必要でしょう。彼らの給料を上げるというのは、なかなか難しいのですが、理系の教育費を無料にするというのはどうでしょう。また、社会に出た人の再教育の場が必要でしょう。人は勉強し続けなければ、役に立たないのです。学ぶ場に循環があってもいいはずなのです。現役の大学生も学ぶ、大学院生も学ぶ、社会に出て10年ぐらい経験した人も学ぶ、生涯学び続けられるシステムが必要です。ドクターコースを出ても職の無いポスドク問題の解決方法の一つとして、社会人をもっと受け入れ、理系人材の再教育機能を強化するのが良いと思います。

株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

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