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米国におけるカーシェアリング:都市と地方自治体で高まる新しいトレンド

 
エネルギー環境 2011年8月23日

科学技術部門統括室
主任研究員 松田智生

協力 Rapid Access International, Inc. 2010年4月
http://www.rapidaccess.com/

米国は広大な国だ。鉄道や高速鉄道といった公共交通機関のインフラには限界があり、その結果、ほとんどの米国人は移動、通勤、食料雑貨の買い物などで自動車への依存度が極めて高い。

近年、米国人は環境保護をますます意識するようになっており、公害や二酸化炭素の削減に貢献したいと考えている。また、ガソリンのような化石燃料の使用も制限したいと考えている。ワシンントンDCのような大都市に住む米国人にとって革新的な代替案が、路上の自動車台数と自動車のCO2排出を削減し、経済的かつ環境保護的な交通手段としての「カーシェアリング」を利用することだ。

米国では、「カーシェアリング」とは短時間で、多くは数時間単位で自動車をレンタルすることである。主なメリットは、ユーザーは車が必要なとき、また車の利用がユーザーのニーズに応じた不定期のものであるときに利用できるという点にある。米国では、ZipCarやCar2Goといった民間企業の利用が一般的であるが、カーシェアの共同体を組織する公的機関、協同組合、ユーザーグループからの利用の場合もある。

カーシェアリングの人気は上昇傾向にあり、現在世界中1000を超える都市でカーシェアリングを利用することができる。

事例研究:テキサス州オースティン市、カーシェアリングによる公害・交通量の削減の新モデルを採択

テキサス州では、2つの州機関がスマート・カーズ(Smart Cars)製造の2人乗り「スマート・フォー・ツー(Smart –For-Two)」車を用いたカーシェアリングのパイロットプログラムを立ち上げた。スマート(Smart)はダイムラーAG社のメルセデス・ベンツのメンバーブランドの1つである。このプログラムおよびパートナーシップは2009年11月中旬にスタートした。

このカーシェアリングプログラムでは、2つのテキサス州機関(テキサス州保全委員会(State Preservation Board)と競争的政府に関する委員会(Texas Council on Competitive Government))の職員がスマート車を利用できる。この指定の車両は、テキサス州会議事堂敷地内の所定の駐車場に優先的に駐車することができる。

このパイロットプログラムは民間企業のCar2Goによって運営されている。同社では、州の職員に対し車を公用に利用する際は無料で提供し、私用または業務終了後や週末の個人利用に関しては小額料金で貸し出している。

Car2Goはオースティン市でも同様のプログラムを有しており、同市では市内の至る所にカーシェアリング用車両の指定駐車場を設けている。車両は青と白に塗装され、市職員による利用が一目でわかる。最近、有名な自転車選手のランス・アームストロング氏(オースティン在住)が自身のランス・アームストロング財団(The Lance Armstrong Foundation)でのCar2Goプログラムおよびオースティン市の下での自動車利用に供する契約を結んだ。

オースティンのカーシェアリングプログラムの主要な目標は、市内の細かい移動のために大型車ではなくスマート・フォー・ツーを市職員に利用してもらうことで公害を削減することだ。この小型車の平均燃費効率は、Edmunds.com(自動車情報サイト)によると、1ガロンあたり36マイルである。

日本にとってのビジネスチャンス

米国では日本から排気ガスを出さない最大100%まで電化された自動車(日産のリーフなど)が入ってきており、高燃費・低公害車の開発を先導しているのは日本であることは間違いない。こうした性能はカーシェアリング企業やカーシェアリングプログラム団体の支持を受けるので、カーシェアリングは日本企業にとってますます重要なビジネスチャンスとなるのではないだろうか。

カーラ・ヴィラロン氏はオースティン市運輸局(City of Austin Transportation Department)のカーシェアリング・パートナーシップ担当者だ。彼女は、カーシェアリングのパートナーを選ぶ際に考慮する主要な要因は、市内の自動車の総コストと環境影響と説明する。環境影響だけを考慮してしまうと、様々なカーシェアリングの主要目標達成のためには、環境対応性能の良い車を選ぶことになる。

一方でヴィラロン氏はコストという要因の重要性にも触れている。スマート車は安くないが、オースティン市は、市職員が公用で車を利用する際には無料で車を貸してもらう代わりに駐車場は市が提供するというCar2Goとのパートナーシップにより、市の主たる目的を達成することができる。おそらく、Car2Goは市職員による公用以外での利用や市の職員でない住民や旅行者による利用による収益でコストの採算を合わせることができる。

カーシェアリングのメリット

 米国で人気が高まりつつあるカーシェアリングプログラムは、以下の主要メリットに特徴付けられる。

  • カーシェアリングはサービス提供企業の就業時間に制限されない
  • 予約、引き取り、返却は全てセルフサービス
  • 車は時間単位、日単位でレンタル可能
  • 利用に際しては、運転の事前承認を受けた会員になること(自動車運転免許の確認、支払いメカニズムの設定)
  • 車はサービスエリア内に分散して配置されており、公共交通機関の利用に便利な場所であることが多い
  • 保険および燃料の代金は使用料に含まれる
  • 車の利用後、清掃やガソリン満タンにする等の整備は不要

■ 三菱総研の視点

「所有から利用へ」。自動車についてもこの発想は今後進むことになるだろう。

ポイントは環境対応とコスト対応だ。国や地方自治体としては、CO2削減で車の果たす役割が大きいことから環境対応面でカーシェアリングへの期待は大きい。

コスト対応で言えば、一般的なサラリーマンの地域住民の自動車利用は原則週末だけであり、走行距離も基本的に短い。駐車場代、保険、車検などのランニングコストは多大であり、カーシェアによるコストメリットは魅力的だ。あとは使い勝手の良さと機能・サービスの向上だ。

街づくりの視点では、民間ディベロッパーでは、カーシェアを活用した環境負荷の低減と、車の保有から利用による住民の自動者関連コストの削減は、街の付加価値を高めて、資産価値を低下させない重要なポイントである

参考リンク:

  • Car2Go: http://www.car2go.com/
  • ZipCars: http://www.zipcar.com/
  • City of Austin: http://www.ci.austin.tx.us/

株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

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