プラチナ社会研究会 新産業は、人が輝く暮らしから

ニュートラ・スーティカルが市場を拡大する! ~オメガ3系脂肪酸の加速~

 
食と農 2011年8月23日

科学技術部門統括室
主任研究員 松田智生

協力 Rapid Access International, Inc. 2010年6月
http://www.rapidaccess.com/

近頃は栄養が良く売れる。栄養強化シリアルであれダイエットサプリメントであれ、こうした健康に関連した商品への関心が巨大な成長市場をつくり上げている。

ここでは特に「栄養(nutrition:ニュートリション)」と「医薬品(pharmaceutical:ファーマスーティカル)」という言葉が組み合わされてできた「ニュートラ・スーティカル(nutraceuticals:栄養医薬品)」について触れる。 これは、健康および医療効果を持つ食品のことである。例えば、栄養素が強化・補強された天然に近い状態の食品は機能食品と呼ばれる。ダイエタリーサプリメント(栄養補助食品)はニュートラスーティカルズという別の主要なカテゴリーに属する。

ニュートラ・スューティカル産業は全世界で何十億ドルという巨大市場を形成している。ミンテル(Mintel)、フリードニア(Freedonia)、フロスト&サリバン(Frost & Sullivan)といった市場調査会社では、この言葉の定義付けにもよるが、数百億ドル規模の市場であると見積もっている。ほとんどの場合、高齢化する先進国の中高年世代の需要がこの市場の成長を支えている。

ニュートラ・スーティカル製品が健康維持と加齢対策の方法を提供してくれると思われるからだ。

臨床効果が証明された事例~オメガ3系脂肪酸

ケベック州ラバルに本社を置くネプチューンテクノロジー&バイオリソース(Neptune Technologies & Bioresources Inc.)のマーケティングコーディネーターSabrina Di Blasio氏へのヒアリングでは、この数年間にネプチューン社が発見し、ビジネスで利益を得た重要な市場トレンドは、臨床的に効果が証明された製品の方に顧客が移行しているということである。

オメガ3系脂肪酸は、最近注目されている脂肪酸の一つだが、1960年代にその健康効果が発見されてから、多くの研究によって有効性が認められてきた。ネプチューン社が私達に提供してくれたフロスト&サリバンによる2009年の予測では、その効果の臨床的な効果の証明により、10億ドルのオメガ3系脂肪酸の世界市場がつくられている。またフロスト&サリバンは同市場が2015年までに20億ドルの規模になると予測している。

ネプチューン社では特にこの2年間、独自のオメガ3製品の売り上げを大幅に伸ばしている。オメガ3製品は2003年から販売されているものだが、ネプチューン製品が優れているのは主にオメガ3脂肪酸の体内吸収が良いことを示す薬効の証拠を認識する人が増加している。

ネプチューン社は、植物や魚油によるオメガ3系脂肪酸とは異なる南極オキアミ(南極海に生息する甲殻類)から抽出したオメガ3を開発した。ネプチューン社研究開発部門のディレクターであるDr. Wael Massrieh博士は、昨年11月に刊行された記事Innovation in Food Technologyにおいて、一般的な魚油による悪玉コレステロール低下率が4.6%であるのに対し、ネプチューンクリルオイル (NKO: Neptune Krill Oil)のLDL低下率は33.9%という高い値であることを示す証拠に言及し説明している。さらに彼は、善玉コレステロール(HDL)の上昇率が一般の魚油では4.2%であったのに対しNKOは43.3%であった証拠も示している。

この結果、同社のオメガ3がリン脂質と結合していることがオメガ3の吸収率を高くしているという事実を明確にした。Di Blasio氏は「単に(オメガ3の)吸収率が良いというだけでなく、とても効果的に身体に溶け込むのです。また、抗酸化力の高い天然のエステル化アスタキサンチンも大きな要因となっている」とも述べている。

ネプチューン社では、こうした証拠や認識の高まりから、現在2%のオメガ3の市場シェアは2015年までに25%と大きく成長するであろうと予測している。

より広範なトレンドへ

ネプチューンテクノロジー&バイオリソース社の予測が現実になるかどうかはわからない。しかし、オメガ3製品だけでなくニュートラシューティカル市場全体の可能性は興味深い。

このトレンドを早期に発見し、ビジネスとしながら、確実に今後の革新から利益を享受する者もいるだろう。

新しい機能性食品、ニュートラ・スーティカル製品、植物バイオテクノロジー製品の研究開発を専門に行う企業にとっては、新たなバイオテクノロジー拠点のミズーリ・プラント・サイエンス・センター(MSPC: Missouri Plant Science Center)が、産官学連携の学ぶべき事例になるだろう。

NutraIngredients-USA.comの最近の記事によると「このミズーリ・プラント・サイエンス・センターのプロジェクトは、大豆ベースの原料を栄養業界に供給する大手サプライヤーであるSoy Labs、ミズーリ大学、ミズーリ州および米国連邦政府機関との産官学のパートナーシップによるもの」だ。


(※1)ニュートラシューティカルズの定義:Wikipedia http://en.wikipedia.org/wiki/Nutraceuticals#cite_note-hc1-9.

(※2)Stones, Mike. New Plant Science Center to Boost Functional Foods. www.NutraIngredients-USA.com.
May 18, 2010. http://www.nutraingredients-usa.com/Industry/New-plant-science-center-to-boost-functional-foods.

重要な用語/トレンド:

  • ニュートラシューティカルズ/Nutraceuticals
  • 機能性食品/Functional Food
  • オメガ3系脂肪酸、オメガ3/Omega-3
  • クリルオイル(オキアミ油)/Krill Oil / ネプチューンクリルオイルNeptune Krill Oil (NKO)
  • The Missouri Plant Science Center (MPSC)

その他資料/出典:

ネプチューンテクノロジー&バイオリソース社ウェブサイト
(http://neptunebiotech.com/およびhttp://neptunekrilloil.com/)


■三菱総研の視点

ニュートラ・スーティカル(栄養医薬品)の市場は今後のドル箱市場と言われている。
日本でも「特定保健用食品」が市場を拡大しており、高齢化が進むなかで健康維持やアンチエイジングへの関心と共に一層市場が広がるのは間違いない。

視点1 新たな産業創造

ニュートラ・スーティカル市場の誕生により、効果検証のためにゲノム技術を取り入れたニュートリゲノミクス(栄養ゲノム科学)という手法が確立されている。市場が先端技術を求め、先端技術が市場を支えるのだ。こうした先端技術を活かした新産業創造は日本の成長戦略に重要だ。
またこの市場には、食品・医薬品・検査・診断・安全評価関連といった様々な業種の企業、あるいは大学との連携・技術移転、行政の支援が重要であり、産官学連携とオープンイノベーションが不可欠な要素となる。

視点2 消費者目線

沸き起こる需要と併せて、消費者への的確な情報提供と正確な効果説明の観点が欠かせない。
米国では1996年に「栄養補助食品と健康に関する教育法」が施行されており、この法律は、科学的研究結果に基づき国民の健康に有益な栄養補助製品を明確にし、消費者が製品を適切に選べることと、国民の健康の維持増進と病気の予防を目的としている。
提供者側の論理だけでなく、消費者目線の市場拡大が求められる。

視点3 予防医療

ニュートラ・スーティカル市場の加速が、予防医療につながり、結果的に元気シニアを増加させ、病院通いを減らし、結果的に医療費の低減につながることになる。
新産業創造と医療費削減は両立できるのだ。

株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

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