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アメリカ電気自動車動向~充電インフラ整備が成功の鍵!

 
交通・移動 2011年8月23日

科学技術部門統括室
主任研究員 松田智生

協力 Rapid Access International, Inc. 2010年8月
http://www.rapidaccess.com/

背景

アメリカで本格的な電気自動車の販売を迎えて、多くの企業による充電ポイントの設置が急ピッチで進んでいる。これをリードしているのは、環境問題に力を入れているサンフランシスコのような西海岸の都市だけでなく、ニューヨークをはじめとする東海岸の大都市も同じだ。
電気自動車普及の大変革期の先陣に加わった都市は、カリフォルニアのアナハイム、そして年内後半に発売される日産リーフのような新型EV車にも対応できるよう整備されたテキサス州オースティンがある。
充電池型とガソリンエンジン型の両方を展開させるシボレーボルトは、おそらく早くて11月頃にはショールームにお目見えするだろう。予想されるコストは4万1000ドルだ。

日産リーフは数ヶ月遅れての発売となる。リーフは充電式で、3万3000ドルの価格で販売予定だ。両者には高い期待が寄せられ、アメリカ国民はEV車の新しい時代の到来を楽しみにしている。しかし、充電ポイントや修理に出す際の仕組みをどうするか、というところまでを視野に入れなければならない。

米国の充電技術メーカートップはCoulomb Technologies http://www.coulombtech.com/ であり、ロサンゼルス、サクラメント、サンノゼ、サンフランシスコの湾岸エリアからアメリカ全土にわたる整備・設置費用は37百万ドルになる計画だと発表した。カリフォルニア州は充電ステーションに手厚い資金を投入し、カリフォルニアエネルギー委員会は州内の大都市に充電ステーションを設置するために、Coulomb Technologiesに3.4百万ドルを提供した。Coulomb Technologiesは今後、9つの地方都市へも、およそ5000の充電ステーションを設置する予定である。

ビジネスチャンス

本年度のEV車販売への市場の期待とともに、充電ステーションの整備--それには、EV車をどこで修理したらよいのか--どこでメンテナンスを受けたらよいのか--という点、大きな需要が見込まれる。
Coulomb Technologiesは確実にその流れのトップを走っており、彼らは米国内のネットワーク整備だけではなく、ヨーロッパや世界各国にも手を広げている。現在、このネットワークは主要なグローバル都市に集中しており、Coulomb Technologiesから提供される主要製品は、最大蓄電量の500ボルトで、120ボルト~240ボルトの範囲まで電気の供給が可能である。
同社はウェブの窓口を、EV車へサービスを提供する事業者や、ドライバー、利用者に向けて開設している。
現在、充電ステーションの特約店になる機会が設けられ、それは同時に米国において、投資先としての新しい分野にもなっている。2011年10月までに、公的・個人を含め、4,600ものネットワーク化された充電ステーションができる予定だ。
地域あたりの充電ステーションの数は、ロサンゼルス、サンフランシスコとシアトルを含む西海岸同様、東部の各都市においても、高い期待と需要に基づいて割り当てられる。

充電ステーションに関する国を挙げてのプロジェクトデータはすべてデジタル化され、今後の戦略プラン策定のために、パーデュ大学とエネルギー省のアイダホ国立研究所で分析されている。

EV車の技術を向上させるその他の企業の中には、ECOtality とイートン社がある。電動運転交通協会によれば、両社は今後12ヶ月に渡って、何万もの充電ステーションを網羅するネットワークの様々な分野を開発していくことで協力関係を築いている。

充電ステーションの主な特徴

EV充電ステーションはネットワーク経由で提供されるタイプと同じように、重要な電力利用のデータを中央分析ポイントへ伝えることができる。我々は、使用電力や充電設備機器についての情報を処理するために、ソフトウエアを使って確かめることができないでいたが、現在はEV市場で洗練された日本の電気回路技術を利用することができるので、これが当面、市場で関心事になるだろう。
このネットワーク機能と強みは以下の通りだ。

  • 基本のRFIDカードを使用しているドライバーならアクセス可能
  • 充電ステーションの所有者は電気代と運用コストを差し引いても、利益が確保できる
  • 充電が完了したかどうかをドライバーに知らせるSMSやメール機能の送信
  • 「電気泥棒」を排除し、安全性を高めるためのアクセス制限
  • 利用者が自由に料金を選べるようなスマートグリッドの統合

今後の取組み

EV開発市場は始まったばかりで、この挑戦は、電気自動車のインフラ整備がまだ完成段階にないことを示している。ということは、電気自動車の新たなユーザーは、設置された充電スポットを利用する際の様々な選択がまだできないということだ。
ニューヨークやサンフランシスコのような巨大な都市では、インフラ整備は難しい問題であるが、オースティンのような規模の都市でさえも更なる取組みが必要だということは、このインフラ整備の難しさを示している。
充電するには比較的時間がかかる。再充電には3段階あり、まずレベル1は再充電するのに8~12時間かかる110~120ボルトのユニットだ。とはいっても、レベル2は4~6時間で充電できる220~240ボルトではあるのだが。レベル3は440ボルトを使用し、給油所と他のアプリケーションが利用可能だ。電気自動車の所有者は、おそらく家庭用の電気で充電し、料金を支払うことになる。ECOtalityは充電ユニットを1,200ドル前後の料金で提供している。
実際の電気使用料は、その地域の電力会社の価格設定により様々である。

EV車の成功導入事例

  • サンノゼグリーン計画
  • 2007年10月に、サンノゼの市長のチャック・リード氏は、グリーン計画を導入した。
    それは環境保護と経済発展のための10項目から成っている。この15年間の長期計画は、環境浄化技術に携わる25,000人もの雇用を創出すること、5,000万平方フィートの緑化を推進する建物を建てる、もしくは改装すること、10万もの太陽光パネルの設置、一人当たりの電気使用量を半減させること、ムダがゼロな都市を目指すこと、都市から出る水は100パーセントリサイクルし再利用すること、そしてエネルギーは100パーセント再生可能なものにすることなどが盛り込まれている。グリーン計画の主要な構成要素のうちのひとつは「グリーンモビリティ」計画の開発だ。結果として、サンノゼは輸送手段にEV車を利用することを奨励し、充電ステーションの設置を既に進めている段階だ。

  • オースティンの事例
  • 「ホールフーズ」に代表されるように、環境に重点をおくテキサス州オースティンのトップ企業のいくつかは、すでに郊外の支店の顧客向けにCoulomb社の充電ステーションをすでに設置しはじめている。
    ウォルマートやベストバイ、その他ア大手パレル企業などもEV市場を巻き込んでの需要を掘り起こそうと充電ステーションを設置する予定だ。
    新たな投資環境と製品やサービスを創出することから、米国のEV市場の見通しは明るい。3,700万ドルもの、国を挙げての充電ポイントの整備は、米エネルギー省の管轄である交通電化部門を通じて、米国再生・再投資法に基づき投入される1,500万ドルの補助金が後押しする。充電ステーションの整備は米国連邦政府の環境技術予算と結び付けられており、これによって地球温暖化を食い止められるとすれば、持続的な雇用創出が可能となるのだ。


■三菱総研の視点

電気自動車の販売黎明期を迎えるなか、その普及には充電ステーションのインフラ整備が欠かせない。
電気自動車をビジネスとしてみる際に、充電技術や関連IT技術の個々の技術に目を奪われがちだが、こうした技術の単品志向や個別最適化の視点だけでは、新たな産業創造にはつながらない。
電気自動車の導入・普及に関連して、地域全体での交通システム、環境計画、新しい街づくりの方向性等の都市計画の視点と、電気自動車関連産業での雇用創出、技術の標準化や規格化といった大掛かりな社会システム型産業としての「全体最適化」の視点が重要だ。

株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

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