プラチナ社会研究会 新産業は、人が輝く暮らしから

米国の医療情報ネットワーク動向

 
医療・介護 2010年12月15日

科学技術部門統括室
主任研究員 松田智生

協力 Rapid Access International, Inc. 2010年11月
http://www.rapidaccess.com/

全米医療情報ネットワーク(NHIN)とは

米国では、2014年までに国内の医療カルテを相互性のある電子カルテにするという目標をブッシュ政権時の2004年に掲げ、保健福祉省(Department of Health and Human Services:HHS)の主導のもと、医療ITに関する様々な取り組みが推進されている。

2009年施行された米国復興・再投資法では、Nationwide Health Information Network (NHIN)と呼ばれる全米医療情報ネットワークの発展のための基本的な投資手法が定められている。
このプログラムはインターネットを駆使したIT技術とその他の送信技術の振興を目的として、Health Information Technology for Economic and Clinical Health (HITHCH)という法案をもとに進められている。
議会は助成金として270億ドルを提供しており、これは目下の緊急課題として取り上げられているヘルスケア関連の新しい国内ネットワークを構築する予定だ。

全米医療情報ネットワーク(NHIN)では、組織の隔たりや地理的な境界を越え、データの交換を推進していく計画であり、全米保険協会などの連邦政府機関、データ提供機関やソフトウエア会社など、ブルークロスやブルーシールドなどの健康保険、医者や看護師などの医療従事者、製薬会社、その他患者の治療情報を一覧にしてアクセスすることで情報提供をする企業などがその計画に含まれる。
国主導のネットワークを設立する目的で、全米の保健情報技術のコーディネーターは、双方向でのコミュニケーションを確立させようと取り組んできた。

全米医療情報ネットワーク(NHIN)の主な特徴

「直接」と「交換」という2つの言葉がNHINの特徴を表している。
「直接」は、与えられた個人ファイルから情報を引き出すために、医者やヘルスケア提供者やその他の患者や薬局などの団体を通じて、「直接」のやり取りが許可されている。
それらは2つの団体で間での「ポイント・ツー・ポイント」交換である。たとえば、医者、とくに内科医に臨床試験の結果を送ることが可能だ。

一方、「交換」というのは、複数の問い合わせに対応し、ネットワークデータとして健康にかかわる膨大なデータ環境の中で使用される。交換ネットワーク経由でやり取りされたデータはセキュリティが強固で、一度に多くのユーザーの利用が可能であり、かなり使い易いものになる。
全米各地域の健康情報機関を含め交換ネットワークの主な利用者は、統合された伝達システム、健康保険、連邦政府、そしてその他の大きな機関であり、そのデータ交換ネットワークは以下を提供する。

  • 安全かつ暗号化されたコミュニケーションデータのためのインターネットベースのネットワーク
  • 身元の確かなユーザーだけが利用できる信頼性と保証
  • プライバシーおよびセキュリティの保護、利用者保護のための法的な協定
  • 活動や役割、責任を定めるガバナンス活動

なお全米医療情報ネットワーク(NHIN)の利点は以下の通りだ。

  • 広い保険機構グループの中から健康に関する情報を見つけ抽出する機能
  • 受け手への正確・適正なデータ送信
  • ユーザー認証の情報を提供する機能、ユーザー認証やシステム利用者に向けた許可証の付与機能
  • 患者識別番号なしでも患者のデータを照合可能な機能

2007年~2008年までに行われたNHINの基本プロジェクトでは、新しいデータソースに住民情報のコンテンツを付け加えた。

  • 電子的に健康情報を記録する緊急応答機能
  • 検査結果(血液検査、尿検査など)
  • 薬物治療の管理
  • 患者による病院情報へのアクセス
  • DNA鑑定やがん検診などの検査システム

ビジネスチャンス

全米医療情報ネットワーク(NHIN)は、紙ベースで行っていた保険情報の管理を効率的に軽減させるのと同時に、多くの雇用とヘルスケアへの新しい技術を生み出す。
NHINは広範囲にわたって存在している情報を集め、医師や看護師、病院や薬局、その他ヘルスケア市場に貢献している人たちに提供している。
それは、記憶装置関連のデータやその他IT産業と同様に、保険データファイルのデジタル管理など、新しいチャンスを拡げることになる。
結果として、米国ヘルスケア情報の多くは、患者のプライバシーを保護するシステムを通じて、このオンラインデジタル媒体を有益なものにすることになる。

オンラインで健康管理記録を管理するのには大きな利益がある:

  • インターネット環境下で患者情報を素早く検索し、特定する機能
  • ヘルスケア管理団体の運営コストの抑制
  • 緊急の場合の患者記録と患者情報へのアクセスの速さ
  • 紙のコスト、郵送コスト、および遠隔通信コストの減少

今後の課題

  • インターネットを通じて提供されるデジタル化された自身のヘルスケア情報を見た多くの米国の市民が渋い顔をする。それは、多くの市民がプライバシーや安全性について懸念を持っているからだ。医療サービスの提供者はコンピュータの暗号化やウィルス対策やその他の保護ソフトを用いて情報に安全性を持たせてはいるが、プライバシーの信頼を一層高めることが常に求められる。
  • 全米医療情報ネットワーク(NHIN)の導入は連邦機関レベルではなく、まずは州や地方レベルである。ということは、これらが各地域の法や条例の壁を乗り越える必要がある。
  • システム上やネット上にない可能性のある医療機関の情報や、まだデジタル化されていない情報などにはアクセス不可である。
  • レガシーデータと呼ばれる古いデータやハードコピーとして残っている過去の治療記録などの扱い方も課題である。

全米医療情報ネットワーク(NHIN)の初期導入事例

米国退役軍人省
この省では健康関連情報の新しいシステム化をテストしている。
テロや国際紛争に関わり負傷を追ってきた退役軍人が戦場から戻り、治療に関連して必要な医療情報にアクセスできるのは有益だ。医療情報には、薬の処方箋履歴や近所のクリニックでの治療履歴などが含まれる。

インディアナ州
同州は、公的な健康情報構築のためにNHINの「交換」機能を用いた最初の州である。
その初期のテストでは、インフルエンザや肺炎などのデータが取り扱われた。

メッド・バージニア(MedVirginia)
この組織はIT技術を駆使し、医療サービスの質の高さ、安全性、有効性に着目したヘルスケア提供者によって2000年に設立された。
この組織は、バージニア州の非営利系病院と内科系医師が運営している。メッド・バージニアは、病院や臨床内科医師、研究機関、薬局などからデータを集めるために技術的な解決法を用いて、これらのデータをウェブのトップ画面で一覧にして簡単に読み込めるようにしている。
この機関は、医療ITを駆使するリーダー役であり、解決策の多くを生み出す支援をするためにIBMとも提携している。

出典

California HealthCare Foundation
The Advisory Board Company
Modern Healthcare

株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

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