科学技術部門統括室
主任研究員 松田智生
協力 Rapid Access International, Inc. 2010年12月
http://www.rapidaccess.com/
ブッシュ時代の減税を引き続き行うかを議論してきたアメリカ議会では、市民が議会運営の透明性に高い関心を持っている。こうした市民の関心を集める手段として、ウェブサイトは税制に関する法律やオバマ政策に対する様々な反応を確かめるのに便利であり、アメリカ市民は、革新的なオンラインデータベースのウェブサイトを使い、法律や税金の有効活用をモニタリングしている。
政府の景気刺激策として進められている全てのプロジェクトをモニターする「リカバリー・ガバメント」や「リカバリー.org」と呼ばれるウェブサイトについては以前紹介したが、それは現在、アメリカ議会によって要求されている”earmark”「イヤマーク」を調べるために利用されている。(ウェブスター辞典によると、“イヤマーク”とは、特別な事業計画や立法や組織への準備金の割り当てのことである)
政府の透明性を牽引している主な3団体には、タックスペイヤー・アゲンスト・イヤマーク、ワシントンウォッチ、タックスペイヤー・コモンセンス・イヤマークがあるが、彼らは、2011年度、39,000件以上、1,300億ドルにもおよぶ議会の準備金の包括的なデータベースを立ち上げた。
タックスペイヤー・アゲンスト・イヤマーク社www.endingspending.comは民主党や共和党に属さない無所属の人々の組織であり、政府が税金の使い道を誤ったり無駄にしたりすることに関して正しい判断ができるように納税者を啓蒙・教育する組織だ。
その目的は、低迷する経済状況から脱する支援をすることであり、また、財政支出を抑え予算の均衡を保ち、国の借金を減らし、ワシントンDCでの財政を回復させる役目を負っている。そして、イヤマークの余分な支出を洗い出し、政府資金を無駄に費やす上院議員や連邦議員の活動を調べる。政党間の連携を構築し、税金の使い道を誤らないようにすることが使命だ。組織としては非課税の非営利団体として独立している。
ワシントンウォッチコム www.washingtonwatch.comは、自社のサイト上で、統計や会計上の数字に隠された意味を納税者側が知るための実例を照会している。
ここではまず政府の支出や税収を予測し、無駄を省くことを示している。それと同時に「正味現在価値」から将来の費用や税収や法整備を算出することも行っている。その結果から出た数値は、一般的なアメリカ人にとって国家政策としての改革が必要であることを示すものだ。
ワシントンウォッチ社のウェブサイトには年間130万人がアクセスしている。
ワシントンウォッチ社が焦点をあてているのは、政府発表を理解するための簡単なデータを提供し、一般市民が財政支出について正しく理解することだ。ウェブサイトでは以下を示している。
タックスペイヤーコモンセンス社www.taxpayer.netは、無党派の納税者のために、納税者が納めた税金を、政府が責任を持って運用しているかを監視する組織だ。
個別に政策立案をし、透明性を高めることを使命とするタックスペイヤーコモンセンス社は、意味のないものや不正に利用された補助金、準備金、企業助成などを見つけ出して無駄を削減し、政府や議会の意思決定者に責任を問う活動をしている。
データベースを構築する初期投資には、運用方法、アクセス料、技術的な課題など多くが含まれていた。納税者に権限を与え、彼らに準備金の支出の詳細を調べさせるという考え対して議会の何人かは否定的だったが、最終的には、アゲンスト・イヤマーク社、 ワシントンウォッチ社、タックスペイヤーコモンセンス社の3団体が協力し、3万9千ものイヤマーク案件のデータベースを構築する費用を分担している。
アゲンスト・イヤマーク社の調査ディレクターであるステファン氏によると、そのデータベースは6ヶ月以内の期間で構築され、コストは10万ドルを越えなかったということだ。データベースはそれぞれのグループで共有されており、それらは、政府支出の透明性を維持するため様々な情報をウェブサイト上で提供している。
公務員に支給される資金が合法なものであるかどうかを調べるために、オンラインデータへのアクセス権が納税者に付与されており、またそれは政府支出を閲覧する強力な方法でもある。現在、イヤマークの支出として要求されているのは約1300億ドルだ。そしてそのデータベースは2011年には200万を超えるアクセスが予想される。
イヤマーク・データベースはアゲンストイヤマーク社、 ワシントンウォッチ社、タックスペイヤーコモンセンス社の共同事業であり、イヤマーク要求がすべてリストアップされたデータベースは、議会の各メンバーによって、2011年の予算要求のために作られた。
そのデータベースは、議会に対して新法案、いわゆるイヤマーク透明性法案の検討を促している。
新しいデータベースは、ごく一般的なアメリカ市民に政治の透明性を判断する機会を与え、政府に費やされている税金について追跡調査する権限を与え、無駄な支出を抑える手助けをするものである。
アメリカの納税者と市民が、自分が納めた税金の運用方法を自ら調べることができる権限を与えているのだ。
日本では事業仕分けが話題になったが、一過性のイベントの印象が否めず、また仕分け後の効果検証やフォローアップ調査にも課題が多い。
今回紹介した米国のイヤマークのモニタリングのように、
は、日本でも行うことができるはずだ。
企業にもチャンスは多数ある。膨大なデータの解析、予算使途の多面的評価、わかりやすいサイトコンテンツの構築などだ。
「そもそも自分の納めた税金は何に使われどのように役立っているのか?」
国民のこの根本的な疑問が、行政の透明性と新産業創造への起点となるのだ。
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