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ソーシャル・メディアが行政の「見える化」を変える! ~メリーランド州とニューヨーク州にみる地方自治体のフェイスブックの活用~

 
情報技術 2011年8月9日

プラチナ社会研究センター
主任研究員 松田智生

協力 Rapid Access International, Inc. 2011年7月
http://www.rapidaccess.com/

背景

メリーランド州では、州内の犯罪件数、道路整備、医療関連、その他の最新情報を市民に提供するために、フェイスブックを利用し成功を収めている。

フェイスブックのようなソーシャルメディアは、公益メディアの形式を取り、市民が直接的に行政側とのつながりを持つための新しい方法として使われており、広く公開され、重要な案件について意見述べる機会を与えられている。それに加え、犯罪が発生したり道路交通に著しい混乱が生じたりしている場所の情報なども提供している。行政側は市民と直接ビデオ通話ができ、メリーランド市民もまたフェイスブックにログインすることにより「仮想環境」で市庁舎の行政会議に参加することもできるのだ。

メリーランド州のフェイスブック
http://www.facebook.com/pages/Maryland-StateStat/127389210632219

行政の「見える化」ツールのCompStatで有名なニューヨーク市、ワシントンD.C.、そしてCitiStatで有名なボルティモアのような都市は、データを収集し行政管理を支えるためのソフトウエアを使った分析を行っている。このデータや分析結果は、先進的なコンピューター解析モデルを使いリアルタイムで州政府やソーシャル・メディア上での地方議会に反映され、その精度を測るためにそれぞれの州で許可されている。

ソーシャル・メディア上の行政会議では、相互協力環境を作り、州や市政府から主な決定者を呼び、その場で問題を解決する。現在、そのような制度を取り入れている州の住民は、フェイスブックのようなソーシャルメディアの利用を通して州政府にアクセスし、内容を閲覧することができるようになっている。

ソーシャル・メディアを活用した会議や制度は、州当局、特に知事にとって最も関心の高い事項である。メリーランド州では、オマリー知事が直接行政会議に姿を現し、結果として局長クラスの担当者達もその会議に参加する。StateStatは他の州からも成功モデルとして取り入れられていて、データと決定方法の両方とも良い見本となっている。データ量は膨大だが、本当に必要とされる情報は行政担当側には常に不足しがちである。

StateStatによる行政の「見える化」は、行政担当者と必要なデータを可能なかぎり集め、市民にいち早く報告することに成功している。

StateStatは、あらゆる目標よりも優先されるモデルとなっている。
知事が直接参加し一貫性のある確実なデータとともに市民へ情報発信することで、StateStatの行政会議は非常に人間らしく生産的なイメージを構築するのに役立っている。

州や地方行政の課題

市民と行政府をつなげる役目を果たすフェイスブックのようなソーシャルネットワークの新しい流れとともに、政策を運営していく上での透明度や効率が高まっている。典型的な例としては

  • ネットに接続することで、行政会議に仮想参加することができる。
  • 市民がオンラインで局長クラスの人たちに直接意見を述べることができる。
  • オンライン地図や視覚ツールを使い、市や州の犯罪や違法行為が発生している地区の情報を知ることができる。
  • 電子メールやフェイスブックの発信機能を通じて、公的に発信される情報を市民が直接聞くことができる。
  • 政府支出が実際どのように景気を刺激し、雇用創出などの面でどのように使われているのかを評価できる。
  • 河川や港湾の浄化、電力使用、緑化政策などの環境保護について、どのような問題が発生しているのかを知ることができる。

ワシントンD.Cやメリーランド州において、景気刺激支出(道路や橋の建設や修繕、緑化政策、自然エネルギーインフラなどで使われる政府支出)は、それぞれの市民にとっては大きな関心事である。メリーランドでは州の予算の範囲内で使われた景気刺激策としての費用効果を確認できるようにしている。
またさらに、メリーランド州内で資金の流れをチェックするための専門のウェブサイトもある。資金流れをみるために、StateStatのサイトからリンク機能を使って調べることもできるようになっている。

メリーランドにあるStateStatオフィスのスタッフのインタビューの中で、StateStatがオマリー知事にとって大変重要な役割を果たしており、彼がアメリカ国内のすべての市民に対して透明性の高い政治運営を成し遂げた知事として他の州でも紹介され始めているということがわかった。
そこでスタッフは言う。“私たちはこのソーシャル・メディアの情報を積極的に利用したいと思っています。予算の使い道について正しい選択ができますし、予算策定をしていく段階でデータが使えるからです。私達はどのくらいすばやく公共事業が進んでいるのかをみたり、再生法を適用させたほうがよい零細企業の割合をチェックしたりすることができます。その意味では私達は気が抜けません。”
以上のことから、StateStatもまた、公共事業や景気回復のための資金は誰が受け取るのか。どのような効果があったのかという統計の見える化が必要なのだ。

その他の主要なものには、“weatherization”と呼ばれ、市や州の各家庭に電力を十分供給する方法についての情報提供がある。これは、州政府によってフェイスブック上で報告されるものである。メリーランド州は、州内のエネルギー消費と利用コストの総量を下げるため、省電力ながらも十分なエネルギー供給ができる家庭用機器の設置を奨励している。
個人の利用コストが下がれば、州全体のエネルギーコストも減るだろう。
メリーランド州もまた、“weatherization”の取り組みを通じて多くの人々に状況を追ってもらうことと同時に、家庭においても州をまたいだビジネスでも使える機器を設置する仕事を得られる可能性も出てくるというわけだ。

技術面

地理的な位置に基づくデータと、StateStatおよびCompStatのリアルタイムレポートの地図情報のマッピング解析に関しては、メリーランド州とニューヨーク州がESRI (地理情報システムを専門とする会社)と共同作業をしている。ESRIとの協定で、StateStatとCompStatの支援で作られたどんなツールも、他の州と共有してもよいということになっているようだ。ESRIが、メリーランド州とニューヨーク州で使われるものとまさに同じ地図とプログラムを開発するために、他の20以上もの州がESRIと共同で作業をしていることが分かった。
マサチューセッツ州とテキサス州もまた、メリーランド州と似たようなシステムで新しいプログラムを稼動させている。

StateStatのプログラムを構築する費用は、ソフトやデザインがニューヨークとメリーランドの成功の前に作られたものであったため、それほど高額ではない。ESRIもまた、地方や州政府と共に費用を一部負担している。情報を一般に広く提供する手段としてフェイスブックを利用するのも安く上がる一因だ。費用としての主なものは、システムをセットアップするのに使用されるハードウエアである(スクリーン、プロジェクター、コンピュータネットワーク、サーバー、ルータなど)。
メリーランド州では、StateStatの会議を専門に行う部屋が議会議事堂の中にあり、カメラやプロジェクターがすべての部屋に完備され、フェイスブックやその他メディアによって会議の様子が生中継される。

あと数年のうちには、アメリカの多くの州でメリーランド州と同様に運営評価システムが整い、フェイスブックのように、すべての国民がアクセスできる新しいツールが生まれるだろう。
フェイスブックに代表されるソーシャル・メディアは、透明度が高く有能である行政の新しい姿を作り出してくれるだろう。

三菱総研の視点

フェイスブックに代表されるソーシャル・メディアは、個人と個人だけでなく、企業のB to Cマーケティング、そして行政と個人のG to Cのマーケティングも変えつつある。

行政との関連メリットは以下に整理できる。

1.簡易性: ネット上であれば誰でも参加できる。

2.直接性: 一市民が直接市長や局長に意見できる。

3.可視性: 地図情報を活かした行政統計情報の見える化。

4.透明性: 投入予算の費用対効果の明確化。

5.即時性: 通常何週間かけて公開していたパブリックコメントの迅速化。

日本では、地方行政の市民に対する説明責任や透明性の確保はまだ途中段階にあり、今回紹介したソーシャル・メディアの活用は大いに参考になるはずだ。
行政側もこの流れを受動的に捉えるのでなく、能動的に市民の声を活用しようという取り組みが必要だ。
そして、ここに参加する市民は、言い放しやクレーマーではなく、民主主義社会の市民たる建設的な議論が求められる。

株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

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