科学・安全政策研究本部
科学技術研究グループリーダー
亀井信一
研究者を最優先に考えた従来にない制度であることは大いに評価できる。革新的技術を生み出すのも、新発見を行うのも、結局は研究者という人間が行うことだからである。革新的な知の創出や技術開発を人中心に考えるということは、当たり前のようで、これまではなかった。これに思い切って2700億円投資することは大いに意義のあることである。中途半端では意味がない。この制度は、現在のわが国に漂う閉塞感を打ち破る契機になる可能性もある。
しかしながら、最大の課題は、いかにして対象とする30課題を選び出すかということであろう。とかく目利きに乏しいといわれるわが国では、潜在しているおおばけしそうな芽を何とか見出そうと努力するよりも、政治力に長けたボスにその決定を委ねる場合が多い。特に今回は2700億円という巨額の投資案件である。下手をすると、魑魅魍魎の世界になりかねない。
強く望まれるのは、決定の経緯の透明性を担保することと選んだ責任を明確にすることである。誰が、どう選ぶのかは、このプログラムの成否を決定付けることになる。仮に選ばれた課題が成功した暁には、選んだ人間にも2700億円から何がしかの報奨を与えてもよいであろう。要は、それほど重い任務であると認識することである。このプロジェクトに、復活日本を期待したい。
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