科学・安全政策研究本部 科学技術研究グループリーダー 亀井信一
政権がいかに替わろうとも、変わらないもの、変えようのないものがある。ひとつは、我が国の立ち位置である。資源に乏しい我が国では、生産活動はもちろんのこと日常生活を維持するためにも、エネルギー資源や食料を輸入しなければならない。当然の帰結として、それに見合っただけのものを輸出し、必要なものを買えるだけの外貨を獲得しなければならない。我が国が、生きていくために、海外に「売っている」ものの95%は工業製品である。即ち、モノづくりが我々の生存を保障している。このポテンシャルや競争力を維持するために必要な科学技術政策の姿勢は絶対に持ち続けなければならない。
往々にして、時の政権は、「時流に乗った」科学技術課題に対して手厚く処遇する傾向にあった。ITブーム、ナノテクブーム、バイオブーム、イノベーションブームなどであり、最近では環境ブームがそれといえようか。しかしながら、これらの研究開発投資が、わが国の競争力やプレステージの向上に寄与したかといえば、大いに疑問である。確かに、その時々のテーマの底上げには寄与したかもしれないが、長期的に見て日本の国力の増強に寄与したとは言えない。
今こそ、腰をすえて、モノづくりの基盤を再構築すべきである。これを失ったら、わが国が背負って立つ柱を失うことになる。もうすぐ最先端研究開発支援プログラム(通称2,700億円プロジェクト)がスタートする。この中の半数をモノづくり関連の分野に割いたとしても割きすぎということはない。継続して徹底的にこれを実施すべきである。仮に政権が変わろうが変わるまいが、この姿勢は変えてはならない。
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