プラチナ社会研究会 新産業は、人が輝く暮らしから

グリーン・パッケージ業界が米国市場で記録的成長

 

プラチナ社会研究センター
主任研究員 松田智生

協力 Rapid Access International, Inc. 2011年11月
http://www.rapidaccess.com/

米国では、プラスチックが環境に与える影響への懸念が高まっている。この問題の最前線にあるのが、生物分解非対応のプラスチック(ポリスチレン等)製の容器である。このような容器は分解されるのに数百年はかかる。世界中の埋め立て地や海洋には分解されないプラスチックがあふれるほど存在している。これが魚類やその他野生生物を通して食物連鎖に組み込まれようとしており、やがては人間が消費することとなるのだ。この問題は拡大を続けており、環境や人間の健康にとって深刻な脅威だ。

 米国の小売店の中には、消費者が購入した商品を家に持ち帰る際に使うプラスチック製のレジ袋に課金するところも出てきている。米国の消費者の多くは、レジ袋の使用量を削減できるよう、布製のショッピングバッグを食料雑貨店に持参している。一方、これよりも期待の高いトレンドが米国で勢いを増している。生物分解性の持続可能な有機素材を用いた「グリーン」パッケージだ。米国ではこの新しい成長するトレンドの利を得ようと、新たな企業が相次いで設立されている。

背景

市場調査会社のフリードニア・グループ(Freedonia)によると、世界でのグリーン・パッケージの需要は年間5.7パーセント伸び、2015年には2,120億米ドルに達する見込みという。

 グリーン・パッケージ市場で圧倒的に多い品目はリサイクル容器である。リサイクル容器は、金属製の缶やガラス容器といった製品が成熟に達しているため、同市場の中では成長が最も遅い部類である。再利用可能な容器、分解性の容器は今後数年で大幅な成長を遂げるだろう。特に分解性の容器は年間二桁成長を見せている。分解性容器の需要は拡大し、急速に成長している。それでも、全体で見ると、2015年までのグリーン・パッケージ市場全体の約1%に過ぎない。

 アジア太平洋地域は、食品・飲料産業が盛んなことから、グリーン・パッケージの最大の市場だ。市場規模は推計790億米ドルに達する。アジアの中でも、インド、中国、インドネシアの成長は最速であろう。その他の国では、ロシア、トルコ、ブラジル、メキシコ等も力強い成長を遂げるだろう。

米国は世界のグリーン・パッケージ市場の23パーセントを占め、占有率は世界最大である。その他の先進市場としては、ドイツや日本がある。

テクノロジー・ソリューション

グリーン・パッケージ市場で最も成功しているのは、食料品店で使用する生鮮食品用容器のようだ。カリフォルニア州リッチモンド市を拠点とするBe Green Packaging 社(収益1,100万米ドル)は、湿地や沼地で育つ葦の一種を材料とする食品容器を製造している。この技術は、現在肉類や魚介類などの生鮮食品の包装に使用されているポリスチレン製容器全てを代替すべく開発された。従来の容器は環境への害が懸念されるが、この新しい容器は30日から90日で確実に土に帰ることができる。このような新型の容器を米国内で販売しているのがExcellent Packaging & Supplyという企業である。

Rapid Access International (RAI)では、この技術のメリットを明らかにすべくBe Green Packaging社に取材した。同社の容器は一般家庭や公営の堆肥製造器(コンポスト)で30から90日以内に分解されるようにできている。材料には葦のような植物を使うが、竹やサトウキビの絞りかすも混ぜている。このような植物は、現在、稲藁や麦藁と同様、バイオ燃料や、パルプ・紙製品、建材等を製造する持続可能な資源として利用されている。Be Green Packaging社によると、同社では一般的に食品の原料とされる植物や資源は使用しておらず、食料生産者とは競合していないという。そのため、多くの場合、グリーン・パッケージはトウモロコシや大豆のような食料生産とは対立しない。葦やサトウキビの絞りかすといった植物は全て再生可能であるため、長期的に豊富な供給量が存在する。

新しい分解性パッケージで鍵となる特徴は、長期間の冷凍、電子レンジ、オーブンに十分耐えうる強度が要求されるという点だ。さらに、食品容器は、魚や肉などの水分量を多く含む商品を包装しても漏れがなく壊れずに扱えるものでなくてはならない。

包装容器の販売会社Excellent Packaging & Supply社によると、食料雑貨店の多くはポリスチレン容器の取扱を望んではいないのだが、現時点ではほかにあまり選択肢がないという。このような事業者は新しい、将来性の高いグリーン・パッケージを積極的に試していきたいと考えている。水気の多い食品の包装に要求される強度や温度基準を達成し、耐久性が高く丈夫な容器であるのか評価したいのだ。環境に害を与えない、分解性材料で作られた新製品がいま市場に投入されようとしている。

新製品でもう一つ興味深いものに、Ingeo TM(インジオ)という素材(ネイチャーワークス社(Nature Works)(収益1,420万米ドル)の製品)を使い、表面に薄くバイオポリマー加工をしたクラムシェル型容器(二つ折りの包装容器)がある。この容器の主な用途はカフェテリアやレストランでの持ち帰り用だ。土台にはサトウキビの絞りかすを使い、表面にバイオポリマーのコーティングを施している。つまり、暖かい食べ物も冷たい食べ物も漏らさずに運べる上、長期的には生物分解されるのだ。

グリーン・パッケージの普及促進

このような取組の中で最も成功している例では、持続可能なパッケージと、より広い意味での環境ブランドの地位とを連結させている。例えば、クロロックス社(Clorox)のGreen Worksというブランドがその例だ。環境メッセージを明確に伝えることが非常に重要であり、一般的にはリサイクルに関連づけた主張が消費者の理解・支持を受ける。一方、「ポストコンシューマー素材」(ビンや缶のリサイクル)と紹介しても消費者の興味は喚起し難い。

コンピュータ・メーカーから靴の小売店まで、あらゆる産業の企業が、持続可能な包装を目指し努力を重ねている。これには環境保護だけでなく、コスト削減という目的もある。デル社(Dell)の例では、今後数年で、8百万ドル超のコスト、約2千万ポンド(約907万キロ)の包装材が削減可能と試算している。

もう一つ、メディアでも注目を浴びる製品としては、NVIRO Flexible Packaging というまさにグリーンそのものの新製品がある。この製品は、トウモロコシや植物性でんぷんといった再生可能な資源から抽出された素材を利用しており、コンポストに対応している。

課題

グリーン・パッケージ産業における主な課題は、顧客に包装容器を使ってもらうことではない。確実に丈夫で耐久性を有し、漏れが発生しない分解性容器を提供していくことが重要なのだ。グリーン・パッケージを利用したい人は多いのだが、市場に出回る製品はまだ限定的だ。低廉なポリスチレン製の食品容器を製造する企業と比較して、グリーン・パッケージの製造コストも市場参入の障害となっている。

総じて、グリーン・パッケージ産業は世界的に着実に成長しており、市場では新規参入や新技術の余地もある。消費者はグリーン・パッケージを強く支持しており、グリーン・パッケージ市場は成長の一途をたどるだろう。

株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

アンケート

このページのトップへ

三菱総合研究所関連リンク: MRI大学関連事業

Text Resize

-A A +A

小宮山宏 講演録