プラチナ社会研究会 新産業は、人が輝く暮らしから

戸別集配サービス

 

背景

高齢化の進展とともに、高齢者世帯、中でも特に高齢者1人暮らし世帯の増加が深刻化することが予想される。たとえば後期高齢者世帯(世帯主が75歳以上の世帯)は、2030年には全世帯の2割を超える1,110万世帯に達するとの推計がある。

また、少子高齢化・人口減少社会においては、主に地方都市を中心に、衣食住が近接した効率的な都市構造であるコンパクトシティ化の必要性が指摘されている。コンパクトシティの実現にあたっては、集合住宅の果たす役割が大きいが、いかにスムーズに住み替えを実現するかがポイントであり、高齢者を中心とする住民にとって魅力ある集合住宅の提案は、その一方策と成り得る。

そこで本稿では、高齢者を中心とする住民にとって魅力ある集合住宅の一形態として、情報技術およびロボット技術を活用した戸別集配サービスを提案する。なお本稿では基本的に、特別な介護等を必要としない高齢者を対象に、そのQOLを向上させることを主目的としている。また、主なターゲットとしては高齢者を想定するものの、今後の増加が予想される1人暮らし世帯、共働き世帯にとっても利便性の高いサービスとして提案している。

課題

以下では、住民(主に高齢者)および宅配業者双方の観点から、本サービスによって解決される課題を述べる。

高齢者にとっては、ゴミ出し、郵便物の受取、クリーニング、買い物といった日々のちょっとした外出が、身体的な負担となっている。近年では各種宅配サービスが充実されつつあり、書籍、日用品、食料品など様々なものを家に居ながら購入することが可能であるが、玄関での受け渡しの負担、また、受け渡し時の防犯面の不安がある。また、1人暮らし世帯や共働き世帯にとっては、宅配サービスの受け渡しが日中を前提としている点が不便である。

一方、宅配サービス各社にとっては、宅配の物流コストをいかに下げるかが競争のポイントの1つとなっている。集合住宅を1軒1軒まわること(特に大きな荷物の場合、エレベータを利用して駐車場との間を何度も往復する必要が生じる)や、不在に伴う再配達は、大きなコスト要因となっていると考えられる。また、対面での受け渡しを基本とすると、比較的道路が空いている夜間の宅配は難しく、ある程度の混雑は許容して日中に宅配を行わざるを得ない。

戸別集配サービスの概要

戸別集配サービスは、「共通倉庫への宅配」と「各部屋への自律移動型ロボットによる搬送」を組み合わせたサービスである。集合住宅に住む高齢者にとっての物理的なin/outをすべて肩代わりすることを目的としている。

具体的には、集合住宅の入り口に全住民に共通の「荷物用倉庫」と「ごみ置き場」を設置する。各業者はこれらのみにアクセスし、個別世帯は訪問しない。そのため、1軒1軒を訪問する手間が省けると共に、道路が比較的空いている夜間の集配も可能であり、コスト低減につながる。倉庫に設置される荷物にはICタグ等を付与し、どの世帯宛の荷物か特定できるようになっている。

共通倉庫と個別世帯との間は、自律移動型ロボットが搬送を担う。ロボットは、基本的に予め設置された赤外線マーカーを頼りに移動し、障害物や人を検知した場合には回避・待機行動をとる、半自律移動型を想定している。ロボットは各戸の入り口に設置された専用の荷物棚に荷物を届けるとともに、必要に応じて住民から荷物やごみを受け取る。ロボットがこれらを担うことによる、防犯面の向上も期待できる。

戸別集配サービス
図1 戸別集配サービス

また、ロボットには付加的な機能として、清掃や防犯の機能を備えさせることもできる。ロボットシステムのうち特にコストがかかる移動インフラを、搬送、清掃、防犯複数の機能で共有できるため、別々のロボットを導入するよりもコストが低減できる。

集合住宅は構造上、一般住宅に比べてインフラ整備がしやすく、また共通のインフラとして活用できるため一戸あたりのコストも下げることが可能である。

技術的にも、マーカ利用の半自律移動制御による搬送系は、既に工場等で活用されている技術であり、ほぼ実用可能なレベルに達している。

なお、本サービスはちょっとした物理的なin/outを肩代わりすることで高齢者のQOLを向上させることを目的としているが、高齢者の他者とのコミュニケーション機会の減少や、外出機会の減少に伴う身体機能の低下が懸念される。前者については別稿の”みんなとつながる「窓」”との連携によるコミュニケーション促進、後者については同じく別稿の”健康管理サービス”との連携による健康促進が有効である。

関連産業

ロボットメーカ、センサ、各種宅配サービス、ごみ収集、不動産、清掃業者、防犯サービスなど

株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

アンケート

このページのトップへ

三菱総合研究所関連リンク: MRI大学関連事業

Text Resize

-A A +A

小宮山宏 講演録