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リモート・ヘルスケア・モニタリング(遠隔健康モニタリング):高齢者の在宅療養への関心に対する取組み

 
医療・介護 2011年8月23日

協力 Rapid Access International, Inc. 2009年9月

http://www.rapidaccess.com/

 

医療と自立の必要性

米国のN2Careの創立者でCEOのKen Dupin氏は、博士号取得のための研究で世界中を訪れた際に、米国以外の多くの国々では高齢者介護のために、介護施設を特に当てにしているわけではないことを知った。米国以外の国では高齢者介護への取組みについては、家族単位での頻繁な話し合いを通じて将来の準備がなされていることを知った。

そうした国々では、老人介護の負担は家庭の子供たちにふりかかる。例えば、年長の兄弟や姉妹には、時が来れば両親の世話をすることが期待される。彼らは家族の一員としてその時を迎えるための計画をし、その責任を担うことを自覚するのだ。

米国では、大家族ではあまりこうした問題を抱えないが、子供の少ない家族を中心に、高齢者の介護施設に対する需要が比較的高くなっている。こうした高齢者の介護施設への需要は、高齢者が自立して生きていくために、家族ではなく高齢者が自ら介護施設を探すことで、需要がさらに高まっている。

高齢者の介護施設に対する需要は、世界の富裕国が高齢化と少子化の問題に直面していることによっても、さらに増加する。他の国々との慣習の違いだけが、家庭における介護の人的資源の不足をもたらすわけではない。富裕国や先進国では、両親の面倒を見ることができる子供の数が少ない、あるいはそういった子供がいないという要因があるのだ。

医療面での家族に頼らない高齢者の自立は、ますます必要不可欠なものになってきている。

そして、より望ましい解決策への需要が急激に拡大するなか、こうした高齢者介護や在宅療養への需要を満たす新しい企業、サービス、技術が台頭してきているのだ。

遠隔モニタリング:MEDcottage による解決

N2Care, Llcの事業本部長であるSusan Conn氏へのインタビューで、在宅介護のニーズに応えるために同社が特別に開発したMEDcottageという新商品について話を聞いた。

MEDcottageは、自宅の裏庭に設置できる小さなプレハブの「コテージ」である。

このユニットは「モジュラー・スマート・コテージ」と呼ばれ、血圧、体温、肺活量、酸素、血糖値の監視といったハイテクなヘルスケア機能が満載されている。

コテージで収集される全ての情報は、順次オンラインでFamily Communications Centerに送信され、家族や介護者はリアルタイムで対象となる高齢者の健康状態を監視することができるようになっている。

つまり、居住者およびその関係者や介護を担う家族が、既存の介護施設にお任せするのではなく、主体的に責任を持つことになる。

高齢者介護施設のように、集中的な監視をされる場合と比べて、MEDcottageでは、介護費用を削減することが可能である。少なくとも、定期的な医療ケアに関し、施設に頼るのではなく、本人が自立したければ自立していれば良いし、あるいは老後のための貯蓄を使いたければ使えば良い、そういった選択肢をこの方法は与えてくれる。

高齢者介護施設のジレンマ

高齢者介護施設に対する需要は、慣習、財力、人口動態により高くなるが、これらの要因には様々なジレンマがある。

  • Ken Dupin氏の研究によると、介護について高齢者が最も恐れていることは、友人や愛する人たちから隔離されることだ。
  • 高齢者の別の不安要因、人生を通じて蓄えてきた財産が、自分の好まないことへの支払いにまわってしまうことである。
  • 高齢者介護施設への需要を高めそうな人口動向は、ヘルスケア業界の起業家たちの積極的な動きにつながっている。彼らは、介護施設の購入者の将来の不安にも対処できる方法を日々模索しているのだ。

実態的人口統計:革新の主要な推進力

Conn氏とN2Careチームは自分達の製品を「高齢化国家の誕生」に対応する多くの製品のひとつと考えている。米国には定年を迎えるベビーブーマー世代は7800万人も存在し、彼らの生活の質を向上させる多くの製品が次々と開発されている。この動きは今後も続くだろう。

高齢者の需要に応えるため、ある会社の計画

MEDcottageは、今秋、そのプロトタイプ第1号が完成し、2010年春の本格スタートが期待される。N2Care, Llcは、最初の商品を本拠地であるバージニア州で展開し、その後全米に展開していく予定である。

現在、この製品に実質的な競争はないと思われている。ただし、遠隔モニタリングという方法が将来成功するかどうかはまだ分からない。しかし、遠隔モニタリングという技術が何らかの形で、将来高齢者の不安をなくすのに大いに役立つことは明らかである。

現在はMEDcottageに注目が集まっているが、自宅に敷地の余裕ない人や、小さなモジュール型の部屋に住みたくない人に対して、健康の遠隔モニタリングへの期待に応えるために、他に何らかの対策をとっているかConn氏に質問してみた。

Conn氏は、市場に投入予定の最初の商品はMEDCottageであるが、他にも取り組んでいると述べて、将来の高齢者が自宅に遠隔モニタリング機能を装備できる様々なタイプの製品を提供したいと考えている。

遠隔健康モニタリングのために、家を特別に改修することで、現在および将来の介護施設の購入者が抱える不安を払拭することができると思われる。

同社および潜在的な競合他社は、高齢者の介護や在宅療養に様々な不安があることは間違いないと考え、このビジネスの動きを日夜注視している。

定年を迎えるベビーブーマーの人口統計からみれば、高齢化社会を迎える将来の不安はますます拡大しており、それに関連する技術、製品、サービス、企業も拡大しているのだ。

【三菱総研の視点】

米国での7,800万人のベビーブーマー世代の退職の流れが、彼らが質の高い老後生活を送るための様々なビジネス、新産業創造につながっているのは、注目すべき動きである。

最新の技術を活用した遠隔モニタリングによる在宅看護や在宅療法は、家族の負担を減らし、高齢者本人の自立を促し、結果的に医療費の削減につながるものだ。

日本でもセンサーや画像診断やロボット等の技術、在宅療法に関わる製品や技術、それを支えるサービス業の融合により、自立した健康なシニア層、すなわちプラチナ世代の拡大が期待できる。

重要な用語/キートレンド:

  • 遠隔モニタリング(リモートモニタリング)
  • 実態的人口統計からみた少子高齢化
  • 高齢者の自立
  • ベビーブーマー世代

関連資料:

株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

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