プラチナ社会研究会 新産業は、人が輝く暮らしから

米国での雇用創出に関する現状:雇用が創出される分野・産業はどこか

 

プラチナ社会研究センター
主任研究員 松田智生

協力 Rapid Access International, Inc. 2012年10月
http://www.rapidaccess.com/

米国次期大統領の選出まであと数日を残すところとなった。現時点では接戦であり、現職のオバマ氏の再選か、あるいは対抗馬のロムニー氏が新大統領となるのか、予断を許さない。しかし、今回の選挙戦で両者が共通して焦点を当てたのは、新規雇用創出による米国経済の早期回復である。このような戦略の大部分は、小企業や起業家を対象とした減税であり、それによりハイテク、エネルギー、ヘルスケアといった新たな産業での新規雇用創出を目指している。
Money誌によると、米国では新規雇用の伸びが見られる産業がいくつか存在する。こういった産業の中にはそれほど新しい、革新的、とはいえないが、伝統的な分野で着実に利益を上げているものもある。例えば、スーパーマーケットでの販売用とした、特殊な食品製造、新しい唐辛子ソースの製造などがある。

最近、IBIS World によるレポート、Money 誌 やHuffington Postといった著名メディアが示した予測など、調査がいくつか実施されている。さらに、米労働省労働統計局 (BLS) は経済において雇用の期待が最も高い分野を示した報告書を作成している。現在、米国で最も急速に成長する産業には次のようなものがある。

1.ジェネリック医薬品の製造

米国での高齢化進展、ベビーブーム世代の高齢化に伴い、より価格の手ごろなヘルスケア、医療のニーズが高まっている。ジェネリック医薬品の需要は高齢世代で大幅に拡大している。米国での当該産業の成長率は現在、年平均で9.6%であり、今後2017年までは年最低6.13%の成長率を持続する見込みである。最近の労働統計局の報告によると、Teva Pharmaceutical Industries やMylan Inc.といった企業はジェネリック医薬品製造企業の好例であるという。

2.ソーラーパネル製造

オバマ政権は、エネルギー関連刺激策に多額の予算を投じ経済活性化を図ってきた。こういった資金の一部は、雇用創出を目指してソーラーパネル製造業の地域誘致に向けられた。米国では、省エネルギーを目的として新築住宅や既存住宅に設置するソーラーパネルに強い需要がある。ソーラーパネル製造からの収益は過去10年、年率32.3%で成長しており、2017年まで約8.2%の成長が続くと期待されている。ガラス加工(ガラスパネルの選定、切断、設置など)を含め、ソーラーパネル産業全般で雇用が創出されている。労働統計局によると、ガラス加工関連の求人は2010年から2020年にかけて42%の成長が見込まれている。

3.営利大学

営利目的の大学は、米国でいくらか論議の的となっている。このような大学の資金の大部分は、学生への教育ローンで賄われているが、学生が卒業後就職できなければ貸付金の回収ができなくなる。しかし、このような小規模な営利大学では、ソフトウェアエンジニアリングやヘルスケアアドミニストレーションといった特定の技能の教育がされており、大規模な大学よりも効率的な運営がされているという評価もある。IBIS Worldによれば、営利大学は2002年から2012年にかけ、平均13.6%増益し、今後数年は収益が年率5%成長すると予測されている。

4.ピラティス、ヨガ等の体操教室

ヨガやピラティス教室は、負担の少ない運動として年齢の高い層で流行が広がっている。当産業の収益は過去10年で平均12.1%成長した。2017年までの収益成長率は年平均4.8%が見込まれている。労働統計局の予測では、インストラクターの新規求人は2020年までで60,400件とされている。

5.セルフタンニング製品

米国では、太陽への過度な露出からのガン発症を懸念する人が多い。これにより、日焼けしたように肌の色を濃くさせるジェルやローションという新しい産業が生まれている。セルフタンニングローションやジェルはここ10年好調で、収益は年間成長率22.7%という報告がある。今後5年間でのセルフタンニング製品の収益は平均10.7%の成長を遂げるであろう。

6. 3Dプリンターの製造

3D印刷は、電子データをもとに三次元の物体を制作できるもので、今後、産業全般で様々な製品の製造簡素化につながる可能性がある。例えば、3Dプリンターを使って建築家が設計図から模型を作製する、ファッションデザイナーがジュエリーを制作する、ということが可能だ。過去10年で当該産業では収益成長率は年平均8.8%を遂げた。また、今後5年間では年間14%の成長が見込まれる。

7.ソーシャルネットワークゲームの開発

ソーシャルネットワークゲームは米国で大変な人気である。ソフトウェアエンジニアはFacebook等のソーシャルメディアサイト向けアプリケーションの新規開発を進めている。ソーシャルネットワークゲームは、メンバーが無料でオンラインゲームを楽しむことができる。また、景気後退期にはゲームセンターや専用ゲーム機でゲームをする経済的余裕がない人が大半だ。このようなソーシャルネットワークゲームは画面上への広告表示や、ゲーム内で使用できるバーチャル製品の販売という収益モデルをとっている。IBIS Worldによると、当該産業の収益は2002年から2012年までで年平均128%増加し、向こう5年で年22%成長するとの予測である。この分野で最近開発されたゲームには、「Mob Wars」や「Farmville」などがある。

8.特殊な食品製造

米国では様々な消費慣習を持つ移民人口が拡大しており、それに伴いレストランの種類やスーパーマーケットで売られる品目等に変化がみられるようになった。例えば、唐辛子入りソースは2002年から現在までに年平均9.3%収益が増加しており、今後5年間で年率4.1%での拡大が続くと予測されている。各地域の特色をいかした唐辛子ソースや特殊用途食品も発売されており、国内の大手スーパーマーケット(Whole FoodsやTrader Joesなど)で流通している。

9.グリーン・持続可能な建築物の建造

IBIS Worldによると、エネルギー効率の高い建築物の需要が急速に伸び、「Energy Star」等といった政府によるプログラムが奨励策となり、企業が責任のあるかたちで建物の設計、建築、管理を進めるようになっている。グリーン/持続可能な建築は2002年から現在にかけて年率28.9%で成長しており、2012年から2017年にかけては年平均22.8%で成長すると思われる。

10.メガネ、コンタクトレンズのネット販売

昨今は機械類から日用雑貨に至るまであらゆるものをオンラインで購入できるようになった。インターネットに安定的に接続でき、クレジットカードが手元にありさえすれば利用可能だ。IBIS Worldの予測では、メガネやコンタクトレンズのインターネット経由での購入は活況が期待されている。特に、顧客が自分の画像をアップロードし、メガネが似合うかを確認できるという新技術のためだ。メガネやコンタクトレンズのオンライン販売業の収益は過去10年間で年平均28.2%伸びた。2017年まででは、収益は年8.8%の成長率が期待されている。

株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

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