プラチナ社会研究会 新産業は、人が輝く暮らしから

米国の有望産業

 

プラチナ社会研究センター
主任研究員 松田智生

協力 Rapid Access International, Inc. 2012年12月
http://www.rapidaccess.com/

2007年以降の世界的な景気後退、米国の「財政の崖」転落の恐れからの影響が長引く中も、大幅に成長し、今後数年でチャンスの期待が高い産業がある。2012年の実績を振り返り、翌年の見通しを示す年度末報告書が発表される中、米国の事業者にとって、活況傾向に向かう分野があることが明らかになっている。

例えば次のようなものがある。

1.スマートフォンモバイルニーズ

携帯電話は、絶えず変化・成長を続ける消費者市場の関心を引けるよう、常に効率向上が進められている。スマートフォン業界(Android、Apple、Google等)では激しい競争があることから、これら企業はいかに製品の高速化、インタラクティブ化を進めるか、常に試行している。Pew Research Centreが2012年9月に実施した調査によると、18歳から24歳のユーザーが1日に送信する携帯メールは平均109.5通で、1ヶ月では3,200通近くになるという。このようなスピードとデータの双方に対する需要がこの産業でのトレンドやイノベーションを牽引しており、今後数年、米国のスマートフォン関連企業にとっての主要市場となると予測されている。

2.製造業の国内回帰

コストの低い海外生産への移行による国内雇用の喪失は、政治的な議論の対象になることが多々あるが、2012年には米国国内で製造業の成長が見られた。この成長は、より迅速なサービス、より新しく創意に富む製品への消費者の需要が原動力となっている。中国での人件費上昇も、米国企業が米国国内生産に目を向ける要因となっている。さらに、Perception Researchの2012年7月の調査によると、米国の消費者の4人に3人超は「Made in USA」と表示された製品を購入する傾向にあるという。つまり、米国を拠点とするビジネスモデルの拡大が、雇用創出と生産全般の大幅な拡大につながりうるということとなる。

3.映画・テレビゲーム向けの3Dプリンティング

米国の娯楽産業で急上昇中のトレンドは、3Dで楽しむ映画やテレビゲームだ。この技術は数十年前から存在しているが、視聴者の需要が生産速度を超えるまでに成長したのはここ3、4年のことだ。10月には、この分野をリードするShapeways社が、3Dプリンティングを目的としてニューヨーク州ロング・アイランドに「Factory of the Future」をオープンさせた。米国国内に設置された大規模な「Factory of the Future」は、年間300万から500万個の生産能力を持つこととなる。米国国内で新しいエンターテイメント関連の需要が拡大する兆候となり、投資がされることとなるであろう。

4.太陽光・グリーン・エネルギーの開発

米国ではここ10年で環境意識の高い消費者が劇増した。その結果、「グリーン」な製造の増加、当該産業全体での収入拡大につながった。具体的には、ソーラーパネル製造産業の成長が最もめざましく、2002年から2012年にかけて収入は32.3%増加した(2012年は見込み)(出典:ISIN Special Report)。現在の景気後退で米国経済は停滞する一方、グリーン産業は政府による潤沢な補助金を受け、分野全体がほぼむらなく成長している。グリーン・持続可能なビル建設産業も、グリーン・エネルギーも成長産業の一つであり、連邦政府によるグリーン・エネルギー・ソリューションへの関与拡大の恩恵を受けてきている。この産業は年平均で28.9%の成長を遂げており、2012年も成長率は18.3%に達する見込みである(出典:ISIN Special Report)。グリーン・持続可能なビル関連の建設会社にとって、地域や州のグリーン・デザインや効率化を推進する新たな建設基準も追い風となっている。

5.ボイス・オーバー・インターネット・プロバイダーズ (VOIP)

過去10年、インターネットは計り知れないほど進化を遂げてきた。SKYPEなど、かつては最新とされたデバイスも今では一般的になり、音声関連のインターネットの革新的なサービスへの需要が高まっている。ここ数年で確実に急増しているのは私用目的の利用だが、米国内の高校や大学では、学生の福利のためこのサービスの実施・向上を図っている。Blackboard社のCollaborate Liveのようなプログラムは米国の高等教育や企業で拡大を続けており、セミナー中継(「ウェビナー」と呼ばれる)や国内外の様々な顧客との接続等に活用されている。このようなサービスは技術的には初期から進化しつつある段階であり、さらに改善されれば確実に収益を生む段階に昇華されていくこととなるだろう。

6.タブレット・コンピュータ

スティーブ・ジョブズ氏が2010年にiPadを発表して以来、世の中にはタブレット型コンピュータ製品があふれ、標準的なパソコンに代わるメインのコンピュータとして使われるようになってきた。DELLやヒューレット・パッカード(HP)といった企業は、かつてはパソコンメーカーの巨人とされてきた。しかし、最近の株価ではDELLが3割、HPが5割下落という惨憺たる結果となっている。このような状況から、従来型のパソコンメーカーはタブレット型の携帯端末の製造を重視し始め、ほぼ直販として販売している。GoogleのNexus、AmazonのKindle Fire、MicrosoftのSurfaceはどれもここ2年で大々的に広告宣伝を打っており、タブレット端末産業は鈍化の兆しも皆無の状況である。

経済評論家は暗い経済ニュースばかりを取り上げがちだが、米国は様々な国内産業で顕著な成長を遂げている。この動向は慎重に分析されているが、2013年以降更なる飛躍が始まり、米国経済の主力となることだろう。

株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

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