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ロボット技術が米国の製造業を変える!

 

協力 Rapid Access International, Inc. 2013年2月
http://www.rapidaccess.com/

技術の進歩、ロボットの汎用化研究が進む中、米国の製造業界では個人事業者の製作によるプロトタイプが台頭を始めている。こういったロボット技術は、現時点ではまだ黎明期にある。しかし、Rethink Robotics社が新しくBaxterという産業用ロボットを製造したことにも見られるように、この種の製造業は今後数年で成長を遂げる可能性がある。エンジニアや社会学者の見方では、Baxterロボットは2013年時点では物珍しい製品という印象が強いものの、今後数年でこの技術の急速な発展は確実と見ている。Rethink Robotics社には、民間投資で6千2百万ドルが投入されているが、低廉かつ生産的なロボットの大規模な生産ラインを発表する予定だ。

オーストラリア出身でマサチューセッツ工科大学(MIT)を卒業したRodney Brooks氏が作り出したBaxterは、従業員が簡単に取り扱える製造用ロボットを目指して製作された。Brook氏の成果の中でも最も興味深く重要な点は、このロボットのプログラム方法だ。Brooks氏によると、Baxterは「プログラム」されるというよりも「やり方を見て覚える」のだという。この能力があれば、工場関係者は、Baxterに簡単な仕事を一挙に教えられる。Baxterは監督されなくとも、教わった仕事をこなすよう自分でプログラムを組んでくれる。生産性低下につながり貴重な時間や費用の無駄になりうる事項をこと細かく管理する必要もない。このような考え方をロボットの「コンプライアンス」と呼んでいるが、これは機械(この場合はBaxter)が従業員の一員であるかのように、示された通りの仕事をこなすことができる、ロボット工学の主要機能である。

実際、2013年2月20日には、プラスチック成型品事業者でありペンシルベニア州に拠点を置くRodon LLCは、組立ラインにBaxterを導入した。Rodon社で製造部門の上級副社長(Senior VP for Manufacturing)を務めるLowell Allen氏は、Baxterについてこのように語っている。「Baxterのよいところは、協働ロボットである、つまり、人間と一緒に作業ができる、という点だ。巨大な防護フェンスも必要ない。同じ工場内の一般的なロボットでは、ほかの人間の作業員の頭があろうと一定の地点まで動いてしまうが、Baxterは動作線上に人間の手や頭があると、それを感知し避けてくれる。」

このような製品を本格的に発売するのはRethink Robot社が初めてだが、ほかにも元気のある2社がこの新興産業での地位を確立しようとしのぎを削っている。シリコン・バレー発のRedwood Robotics社と、デンマークの企業Universal Robotics社は、2013年末までにBaxterの競合製品を完成させようと急ピッチで取組を進めている。Redwood Robotics社は、Aaron Edsinger博士が産み出した企業で、昨年プロトタイプの製作を開始しており、間もなくBaxterの競合製品を市場に投入したいと期待している。

この新たな技術の潮流で全般に渡って重要といえる要素は、競争だ。今後数年でより優れた競合製品が出現すれば、このような製造ロボットの価格が徐々に定まってくるだろう。現在、Baxterの販売価格は約2万2千ドルであり、結構な投資である。しかし、既に米国内の工場の多くで既に導入されているような、遙かに大型で動作もぎこちない他の機械とは明らかに違う。他のロボットで非常に単純な作業(例えば、ペレットを潰す作業、重機を短距離のみ動かす作業等)のみに限られるものであっても平均約15万ドルもする。市場では既にBaxterのような製品をめぐる競合がみられるが、競合により価格が更に低下すれば、特に米国内での需要拡大が期待される。

Baxterやその競合製品の開発における次の段階は、例えば、個別の部品を組み合わせて電化製品を製造するといったような、より複雑な作業をこなせる機械の開発だ。昨年アリゾナ州ツーソンで開催されたロボティクス会議で、米国の研究者がBaxterに関する議論が行われたが、MITの研究者Andrew McAfee氏は、「ムーアの法則の通りにあと少し進めば、中国の人件費よりも安価にオートメーションが可能となる。」と述べた。このことから、Baxterに関して言えば、数年後には更に機敏で実用的なロボットが現れる可能性があると示唆されるようだ。このような作業をこなせるロボットができれば、海外の人件費よりも安く済み、製造業の米国への回帰を促しうるとの考えだ。このような考えを否定する人も多い。技術が明らかに労働力を阻害し、人間を、命を持たない給与の不要な機械で代替してしまうとの考えのためだ。Rethink Robotics社の見方はそれとは異なる。ロボットが製造できない部品の75パーセント以上が米国国内で製造されれば、米国経済の起爆剤となる産業になるとの考えだ。

Baxterが有用なものか、成功を遂げるかは、現時点では断定できない。今後2年で、Baxterが実用的なものか、あるいは利用しなければコスト面で断然不利になるといえるほど向上するのか、世界に示されていくことだろう。これが単なるブームで終わるのか、有効な選択肢となるのかは、時のみぞ知ると言えるだろう。しかし、今のところは、米国経済の新たな可能性に踏み入ったばかりの、非常に面白い産業である。

株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

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