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【連載】『女性視点で考える次世代テレワーク(分科会報告)』

 

第2回 テレワークの現状と国の動き
  ―今後の鍵はワーク・ライフ・バランス―

女性視点で考える次世代テレワーク分科会 事務局               
株式会社三菱総合研究所 プラチナ社会研究センター  研究員 川上 千佳

今回のコラムでは、テレワーク概念の変遷と動向について、私たち女性視点で考える次世代テレワーク分科会(以下、「本分科会」)の活動を踏まえて考察する。

テレワークとは、英語で接頭語tele(離れた場所で)とwork(働く)を組み合わせた造語で、「ICT(情報通信技術)を活用して、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」と定義される。一般に、仕事場所が自宅かどうかと雇用の有無により4つに分類される。①企業等に雇われる従業員が、職場のオフィスだけでなく自宅でも働く在宅勤務、②請負契約によって、自宅で仕事をする在宅ワーク(在宅就業)、③仕事場所が自宅以外の雇用型で、駅や喫茶店など街中でパソコンや携帯を使うのを見かける営業マン(モバイル勤務)、顧客先等で仕事をする者、郊外のサテライトオフィスで働く者等、④SOHOなど、企業等に雇われず、小規模オフィス等で企業としての法人格をもって働くタイプ。本分科会では、参加者が企業等で働くホワイトカラーの女性であったことから、①のタイプが議論の前提となることが多かった。

国土交通省「平成24年度テレワーク人口実態調査」(以下、「国交省調査」)によれば、2012年現在、広義テレワーカー(注1)が就業人口に占める割合は45.7%と推計され、働く者の半分近くがテレワーカーとなる(図1参照)。同様に狭義テレワーカー(注2)率は21.3%で、働く者の5人に1人、おおよその目安として1つの部署に1人はテレワーカーがいることになる。在宅型テレワーカー(注3)率は14.2%となっている。この国交省調査の定義には、私物の携帯やスマホ、タブレット等で仕事のメールをチェックすることもテレワークに含まれており、本分科会に参加した働く女性が理想とするテレワーク像―会社から支給されたシンクライアントのパソコンをベースに、堅固なセキュリティ体制の下に自宅等からファイル・データにアクセスして作業を行い、メールや電話で連絡をとり、時にはテレビ会議を行う。すべて就業時間としてカウントされ、給与や人事評価にも反映されるワークスタイル―とは大きく異なる。私たちが考えるテレワークは、現在でも実現が難しい働き方である。このため、本分科会では「どうしたら私たちが理想とするテレワークは普及するか」という問題意識から議論を繰り返し、具体的な障害として仕事の内容や上司の理解、機器導入のためのコスト的制約など様々な意見を出し合った。

また、テレワークに関する国の政策としては1990年の分散型オフィス推進委員会の設置(通産省)まで遡り、近年では総務省・厚労省・経産省・国交省の連携の下に施策が推進されている(表1参照)。内容的には、総務省(以前は郵政省)によるICTの発達・普及を基盤に、1990年代の分散型オフィスの普及から、2000年前後のテレワークセンター整備やSOHO支援を経て、最近は在宅型の推進とともにセミナーの開催やガイドラインの作成などの普及事業の実施へと推移してきた。この間に二度テレワーカーの目標値が設定されたが、2015年までに在宅型テレワーカー700万人、狭義テレワーカー率20%という目標は2012年時点で達成された状況にある(図1参照)。国交省調査におけるテレワークの定義や捉え方については議論の余地があるものの、現在の日本社会では、テレワークの定義である「場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」は、技術的な環境は整い、ある程度の規模で実現しつつあるといえる。

このような状況を踏まえ、東京大学 教授(当時)大西 隆氏は、今後「テレワークは、新たなステージへ―量から質へ」と移行し、その鍵は「ワーク・ライフ・バランス」にあるという(平成24年度テレワーク推進フォーラムセミナー[2013年3月13日開催]講演)。テレワークは、長年、主に都市計画や環境・エネルギー、通信技術の観点から研究されてきた。このためワーク・ライフ・バランスとの関連で検討するというのは、テレワーク研究全般にとっては大きな発想の転換であるが、私たち女性視点で考える次世代テレワーク分科会の趣旨に沿う。本分科会では、「女性」の視点で、「普通の人のリアルな感覚」を大事にする、という姿勢でテレワークというテーマに取り組み、そのことは結果的に育児・介護をはじめとする生活と仕事の調和というワーク・ライフ・バランスからテレワークを考え、語ることにつながった。この姿勢を維持しつつ、テレワークにこだわりながらも働き方やライフスタイルにテーマを広げ、本分科会では今年度も働く女性の熱い議論を展開する予定である。

    (注1)広義テレワーカー:雇用者は、普段収入を伴う仕事を行っている人の中で、仕事でICTを利用している人かつ、自分の所属する部署のある場所以外で、ICTを利用できる環境において仕事を行っている人。自営業者は、普段収入を伴う仕事を行っている人の中で、仕事でICTを利用している人。
    (注2)狭義テレワーカー:普段収入を伴う仕事を行っている人の中で、仕事でICTを利用している人かつ、自分の所属する部署のある場所以外で、ICTを利用できる環境において仕事を行う時間が1週間当たり8時間以上である人。
    (注3)在宅型テレワーカー:狭義テレワーカーのうち、自宅(自宅兼事務所を除く)でICTを利用できる環境において仕事を少しでも行っている(週1分以上)人。

図1 テレワーク人口の推移
テレワーク人口の推移
(注)広義テレワーカーについては、数は算出されていない。
資料:国土交通省「平成24年度テレワーク人口実態調査」


表1 主なテレワーク関連施策
テレワーク関連施策

株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

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