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【連載】『女性視点で考える次世代テレワーク(分科会報告)』

 

第3回 女性の多様なライフコースやライフスタイルとテレワーク

女性視点で考える次世代テレワーク分科会 事務局
株式会社三菱総合研究所 人間・生活研究本部   
兼務 プラチナ社会研究センター 研究員 杉山 恵

今回のコラムでは、女性のライフコースやライフスタイルとテレワークについて、私たち女性視点で考える次世代テレワーク分科会(以下、「本分科会」)では、どのような学びや議論を行ったかを紹介する。

日本の女性就業については、M字カーブの問題が取り上げられることが多い。女性の就業率(就業者の15歳以上人口に占める割合)は、「25~29歳」(72.8%)と「45~49歳」(73.0%)を左右のピークとし、「35~39歳」(63.9%)を底とするM字型のカーブを描く(図1参照)。この背景には、出産・育児期にある女性の多くが、働く意欲はあっても就業に結びついていないという実態がある。就業率と潜在的労働力率(就業者に完全失業者と就職希望者を加えた総数の15歳以上人口に占める割合)を比較すると、その差は男性に比べて女性で大きく、特に「30~34歳」「35~39歳」の女性については約15%の差がある。日本では超高齢化が進み、合計特殊出生率が低迷する中で、働くことができる人の労働力が求められるが、十分に活用されていない女性労働力が存在するのである。

図1 年齢階級別就業率および潜在的労働力率
テレワーク人口の推移

   (注)就業率= 就業者 / 15歳以上人口
      潜在的労働力率=(就業者+完全失業者+就職希望者)/ 15歳以上人口
   資料:総務省統計局「労働力調査」平成23年、「労働力調査(詳細集計)」平成23年

女性は、男性と比較して、就職、結婚、出産、転職などのライフイベントの選択等により、多様なライフコースが存在する。「継続就業している(フルタイム、時短勤務等)」「結婚や出産を機会に離職している」「一度離職したが再就職している」等のコースに大きく分けられる。厚生労働省「平成23年度育児休業制度等に関する実態把握のための調査研究事業報告書」によると、子どもを持ちながら働き続ける上で女性(20~40代の子ども[末子が小学校就学前]を持つ会社員[正社員]の女性)にとって必要なことは、「子育てしながらでも働き続けられる制度や職場環境」(86.5%)に次いで、「勤務時間が柔軟であること」(50.1%)「残業があまり多くないこと」(46.6%)が多くなっている。女性が子どもを持った場合、働きたいという希望はあっても、子育てのために時間や場所の制約があり、ライフステージ等に応じた柔軟な働き方が求められるのである。

このように、育児や介護等のライフステージに応じて柔軟な働き方が求められることに対して、テレワークを活用した働き方が一つの解決策になると考えられる。本分科会ではテレワークを活用した女性の働き方として、企業等に勤務する被雇用者が行う雇用型テレワーク「在宅勤務」と、非雇用型の「在宅ワーク」(例:テープ起こし、データ入力、ホームページの作成等)について、前者はNTT データ リージョナルビジネス事業本部 北村 有紀氏に、後者はテレワークマネジメント/ワイズスタッフ代表取締役 田澤 由利氏、前厚生労働省 雇用均等・児童家庭局 短時間・在宅労働課 課長補佐 藤原 裕子氏にご講演をお願いし、現状や課題、今後の可能性等について学び、ディスカッションを行った。

本分科会にご参加いただいた女性は、企業、NPO、自治体等に勤める方が多く、未婚・既婚、子どもの有・無、管理職・非管理職等については多様で、それぞれの属性や状況等を踏まえた活発な議論が行われた。これまで述べてきた分類でみると、「雇用型」で「継続就業」または「再就職」に属するメンバーがほとんどであったこともあり、非雇用型の「在宅ワーク」による継続就業については、その重要性を再認識した。テレワークで在宅業務をすることが、事情により企業に勤め続けられない人にとって再就職のためのつなぎとなり得る、そうしたテレワークの可能性をあらためて認識したのである。

一般に、子育て中の女性が活用したい制度の一つとして、在宅勤務があげられることが多い。これに対して本分科会で行った議論では、現在子育て中でない女性から、例えば自己研鑽や習い事等と仕事を両立するにあたって、テレワークを活用した柔軟な働き方が望ましいという意見があげられた。テレワークは、働き方の自由度を増すだけでなく、多様な女性のライフコースやライフスタイルの自由度を増す手段でもあることが本分科会の気づきであった。同時に、テレワークをうまく活用していくための制度、環境、社会的理解については解決すべき問題が多く残っていることも、本分科会での議論から明らかになった(詳細は今後この連載コラムにおいてご報告したい)。私たち女性視点で考える次世代テレワーク分科会では、テレワークの可能性を社会的に共有することで、女性だけでなくすべての生活者や企業がテレワークを活用し、よりよいライフスタイルを実現しようという流れをつくることが重要と考えている。

株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

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