プラチナ社会研究会 新産業は、人が輝く暮らしから

【連載】プラチナ社会における大学イノベーション

 

第1回 定年後の再挑戦は大学から始まる

プラチナ社会研究センター
主任研究員 森 卓也

【ポイント】

  • 18歳人口減少に悩む国内大学は、高齢社会の到来をチャンスと捉え、教育・研究・社会連携それぞれで新たな挑戦を始めている。
  • シニア(高齢者)学生を狙ったシニア大学が増えつつあるが、「定年後の再挑戦(セカンドキャリア開拓)」という学習目的に応えるには「学んだ後」の支援が重要である。
  • 「出口」を見据えたシニア大学の台頭は、シニアを雇用したいと考える企業・自治体は勿論、定年延長後の雇用問題に悩む企業人事部にもメリットがある。

1. はじめに

現在日本が直面する高齢化・環境・雇用等の問題、課題を解決した社会を課題解決社会、すなわち「プラチナ社会」とわれわれは呼んでいる。プラチナ社会のモデルについて、これまで欧米の先駆的事例を紹介してきたが、今回はプラチナ社会実現のキープレイヤーのひとつである「大学」に着目し、社会課題解決に挑む先進大学を4回にわたって紹介したい。

国内大学は少子化(学費収入の減少)と財政悪化(大学助成の減少)の2大逆風にさらされている。しかし、高齢社会の到来をチャンスと捉え教育・研究・社会貢献それぞれで積極的な改革を行っている大学がある。第1回は、教育面での挑戦、具体的にはシニア学生市場に挑むシニア大学を紹介する。

2. 都会のシニアを地方に呼べ ~シニア学生による地域活性化コンサル

桜開花の直前の4月、東北地方の某N市に5名のシニア男女の姿があった。「この施設の稼働率は?」「観光客のリピート率は?」「夏と冬の人口変化は?」5名のシニアから厳しい質問が地元関係者に次々と繰り出される。彼ら5名は同市長から任命された「マーケティングアドバイザー」だが、実は立教セカンドステージ大学のシニア学生だ。

交通の要衝として知られ、人口約3万人が住むN市。観光資源に恵まれるものの、知名度は東北地方の中でも高くない同市では、首都圏からの来訪者増、特に積極的な消費活動で注目されるアクティブシニアの観光・定住を進めたいと考えていた。この課題に対して名乗りを挙げたのが、立教大学が設立したシニア大学「立教セカンドステージ大学」である。同大学に通う学生5名(全員が60歳前後)でコンサルティングチームを結成、学生自身が「首都圏に住むアクティブシニア」であるという消費者視点と、大学で学んだ地域活性化・マーケティング手法を武器に、「首都圏アクティブシニアにとって何が魅力となるか」徹底的に深堀りし、その成果を提言レポートとして同市に提出した。

3. シニア大学の付加価値~学んだ後の「出口」

新たな学生市場としてシニア(高齢者)学生に着目する国内大学は増えているが、豊富な人生経験を持ち、教育研修も数多く受けてきたシニアの学習ニーズに応えるのは容易ではない。50才以上のシニアを対象に設立された立教セカンドステージ大学では、受講生同士の親交を深めるゼミナールや知的好奇心を刺激するフィールドスタディなど、シニア学生のニーズに対応したきめ細かい仕掛けづくりを行っている。その中でも、同大学が重視しているのが「学んだ後(出口)」の支援である。

シニア学生の多くは定年退職後の「再チャレンジ」を目指している。しかし、大学で学んでも、あとは独力で活躍、とは簡単には行かない。魅力的な仕事はハローワークで見つけられず、独力で起業するのも簡単ではない。そこで立教セカンドステージ大学が準備した仕組みがサポートセンターである。同大学の修了生の「学んだ後」を支援する仕組みとして、のべ200人以上のシニアが一緒になって様々な活動を展開している。前述したN市の「マーケティングアドバイザー」も同大学の「シニア学生の活躍の場を拡大したい」という思いで行われたもので、言わば「シニア学生のインターンシップ」である。

4. シニアを求める自治体・企業とのマッチング

豊富な経験・知識を持つシニアを求める中小企業・地方自治体は多く、これまでも職を求めるシニアと企業・自治体とをマッチングさせる試みは少なからず行われている。しかし、定年直前の管理職意識が抜けず、部下に資料づくりを任せて自分自身は動かないというシニアが多く、看板倒れに終わっていることも多い。シニア大学での学び直しを通じ、意識改革と新たなスキルを習得したアクティブシニアが数多く輩出されれば、シニアを求める企業・自治体とのマッチングが進展し、シニアのセカンドキャリア開拓が一気に進む可能性がある。

また、このようなシニア大学が増加することは、定年延長後の高齢者雇用問題に悩む大企業人事部にもメリットがある。法改正で定年が延長されても従来の職場で活躍できないシニアは行き場を失っているが、従来の再就職支援は「たそがれ研修」と揶揄される老後の不安を煽るだけの後ろ向きな研修どまり。今後は定年前のシニア大学通学が従業員のセカンドキャリア支援施策として普及していく可能性もある。

立教セカンドステージ大学の定年後とのセカンドキャリア構築への挑戦は、高齢社会における大学像として多くの示唆を与えている。2012年「大学が多すぎる。」という大臣の発言が大きく注目されたが、2015年には「大学が少なすぎる」という発言が注目されるかもしれない。

地方活性化コンサル

写真:立教セカンドステージ学生による地方活性化コンサル


    ⅰ プラチナ社会研究会ウェブサイト(http://platinum.mri.co.jp/recommendations/opinion-backnumber)を参照されたい。
    ⅱ 文部科学省認可の大学ではないが、本課程修了者は文部科学省が定めた学校教育法105条の規定に基づく「履修証明書」が交付される。
    ⅲ 立教セカンドステージ大学を受講している段階からでも参加可能。

株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

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