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【連載】『女性視点で考える次世代テレワーク(分科会報告)』

 

第4回 テレワークによる働き方(ワークスタイル)が地域・地方に与える影響・可能性

女性視点で考える次世代テレワーク分科会 事務局
       株式会社三菱総合研究所 社会公共マネジメント研究本部 研究員 酒井 淳子

女性視点で考える次世代テレワーク分科会(以下、「本分科会」)では、第1回の講師として、株式会社ワイズスタッフ/株式会社テレワークマネジメント 代表取締役の田澤由利様にお越しいただいた。田澤さんは我が国におけるテレワーク実践の第一人者である。結婚、出産を機に退職され、子育てをしながら個人事業主として働いた後、北海道北見に転居されてから起業された。田澤さんの軌跡と現在のご活躍に、私たちはテレワークによる地方や地域の活性化への示唆をたくさんいただいた。

就業希望者の不利条件を解決

労働力調査によると、就業を希望しているのに仕事に就いていない人にその理由を尋ねたところ、「適当な仕事がありそうにない」(35.7%)が最も多くあげられ、その具体的内容として「近くに仕事がありそうにない」と答える者が約2割(18.3%)を占め、全国に26万人いると推計されている(図1参照)。テレワークは場所による制約を受けないことが1つのメリットであり、実際、ワイズスタッフでも北見で暮らす田澤さんと東京オフィスや奈良オフィスがテレビ会議で情報を共有しながら仕事を進めている。

図1 非求職理由別就職希望者数(平成24年平均)
非求職理由別就職希望者数

 (注1)国勢調査の約100万調査区から約2,900調査区を選定し、その調査区内から選定された約1万世帯及び
 その世帯員(15歳以上の者)を対象に調査した結果をもとに、我が国に居住する全人口ベースで推計。
 (注2)図中の数値は、上段が実数(単位:万人)、下段が比率を示す。
 資料:総務省「労働力調査」

テレワークの活用が地域活性化に寄与

本分科会において、テレワークのメリットや可能性について議論したところ、参加者から、個人のワークスタイルやライフスタイルが変わり、家庭での家族との過ごし方が変わるという指摘だけでなく、地域との関わり方が変わるという意見も多くあげられた。

例えば、地元の商店街で買い物をしたり、マンションの住人と顔を合わせる機会が増えれば、自然と地域や地域コミュニティに対する関心も増すだろう。地域活動やボランティア活動に従事する時間が増えれば、社会問題となっている孤独死も防げるかもしれない。

また、子どものいる家庭では、テレワークにより時間や場所の制約が緩和されると、子どもが所属するスポーツ少年団で役員として活躍するなど、地域の子育てに関連した活動に積極的に関わっていける。子どもにとっては、帰宅した時に「ただいま」と叫ぶと「おかえり」が返ってくる環境はうれしいに違いない。

テレワークの普及が地方の持続可能性を高める

本分科会での議論の中で、テレワークは地方の活性化にも効果があるのではという意見が出された。例えば、地方で増え続ける空き家を有効活用するなどして人が集まれるようにすれば、都市から地方へ移り住んだ若者たちはノマドワーク(自宅やオフィスではなくカフェや図書館などで、ノートパソコンやタブレット型端末などを使って、場所を問わずに仕事を行う新しいスタイル。「ノマド」とは遊牧民のこと)ができ、そこで新しいビジネスが生まれる可能性が高まるのではないか。あるいはパートナーの退職等を機に地方に移り住み、テレワークで仕事を続けながら、地元の人々が集まる場をもち、まちの将来やこれからのまちづくりについて議論すれば、地域活性化のためのアイデアが生まれるのではないか。テレワークを活用すれば、人生の選択肢(場合によっては第二の人生の選択肢)が大きく広がることも期待される。

さらに、地方で暮らす親の介護が必要になった場合にも、テレワークが介護と仕事の両立に寄与するという意見があげられた。本分科会参加者の身のまわりでも、親の介護を理由に退職する例が出ているようだ。

在宅勤務制度を導入している会社では、育児、介護を理由とする場合にテレワークの利用が認められているケースが多い。しかし介護については、利用期間が制限されている(例えば最長5年間など)ため、終わりが見えない中でどのタイミングで制度を使うべきか判断できず、利用するに至らなかったという意見が寄せられた。親の介護だけでなく祖父母の介護にも利用できれば、家族の負担(介護疲れ)が軽減されるのではという意見もあった。介護で現在の職場を物理的に離れざるを得ない場合でも、テレワークを活用すれば仕事を続けられる可能性はあるのではないか。

今後は大都市圏でも、高齢者の数が爆発的に増える。東京周辺の介護施設は現在でも不足状況にある。テレワークが進めば、離れて暮らす家族が手伝いに来られる。また、地域で顔の見える関係が築かれる中で、住民同士の支え合いが生まれる可能性も高まる。増え続ける介護需要を公助でまかなうのか、あるいは別居する家族を含めた自助や地域での共助があり得るのか。テレワークの普及が地域の持続可能性を高めることが期待される。

株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

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