プラチナ社会研究会 新産業は、人が輝く暮らしから

世代間同居が孤立社会を変える!~プラチナ・ファミリーへの期待~

 
住宅 2013年4月16日

科学技術部門統括室
主任研究員 松田智生

 独居老人や孤立社会という言葉が最近頻繁に出てくるが、フランスで興味深い試みが始まっている。
 日本と同様にフランスでも独居老人は多く、都市部でその傾向は強い。都会の高齢者の孤独を解決する支援策としての「世代間同居」の取り組みだ。

 パリ郊外の住宅地に一人で住む93歳の女性の家に、大学院で学ぶ留学生が同居している。二人はほぼ毎日一緒に食事をして、一日の出来事を語り合う。
 彼は「異国の大都会に来て2年間とても孤独だった。しかし今回同居して素晴らしいフランスが発見できた」と語り、同居する老女は「孫のような青年」が現れ一緒に暮らすことに大変喜んでいる。

この高齢者の住宅に学生が同居する世代間同居には3つのタイプがある。

  1. 家賃は免除:毎晩在宅して夕食を一緒にとる
  2. 家賃は少なめ:夜間は時に不在でも可
  3. 家賃は払う:夜間在宅は免除

 若者と高齢者の間には幾つかの非営利組織が仲介機能を果たし、若者と高齢者の双方の希望をよく検討したうえで引き合わせるので、トラブルは少なく利用者には好評だ。※1

◆日本へのヒント

 日本でも住宅街を歩けば、2階の雨戸を閉めたままの戸建住宅が多いことに気づく。
今活気のある住宅街も10年後、20年後の姿は分からない。独居や夫婦だけで暮らす高齢者の孤立化は今後一層深刻な問題になるだろう。
 また地方から出てきて学生も、ワンルームマンションでの一人暮らしは無味乾燥になりがちで、犯罪など日々のセキュリティの面からも不安が少なくない。
 そして学生の親からすれば、毎月の仕送りは大きな経済的負担であり、東京の一人暮らし大学生の仕送り額は、毎月約8万円になるという。年間100万円近い金額だ。※2
 さらに街づくりの面からも、雨戸を閉めたままの家、高齢者ばかりの街、無機質なワンルームマンションの乱立は、街の魅力や資産価値が減ることになる。

◆五者一両得

世代間同居の取り組み以下のような五者一両得をもたらす。

  1. 高齢者
    同居して一緒に食事をすることで、一人暮らしの孤独から脱却し、同居する学生の食事の献立を考えたり、「世話を焼く」ことで脳が活性化され老化防止につながる。
    また日本では、同じ大学のOBやOGあるいは同郷人であれば、安心さが増し、世代を超えた大学・同郷のつながりが強まる。
  2. 学生
    ワンルームマンションの孤独な生活から、同居によるつながりが実感できる。一人暮らしの費用も軽減される。同じ大学や同じ出身地の高齢者の過去の経験を貴重な財産として受け継ぐこともできる。
    学生が高齢者に携帯電話やパソコンを教えたり、日常生活の手助けをすることもできる。同居するのが他人であることは、親族にありがちなしがらみがなく、逆に良い意味での緊張感がお互いを思いやることにつながる。

  3. 同郷や同じ大学の「信頼できる人」に子供を預けることにより安心感が増す。
    年間の仕送り費用が軽減される。
  4. 自治体
    独居老人の寝たきり化、医療費の増加、高齢者の見守りなど行政コストが軽減できる。街の価値の視点では、窓を閉め切った戸建住宅の増加やワンルームマンションの乱立を防ぐ。世代間同居の住宅が増えれば、世代交流のある魅力ある街となる。
  5. 企業
    高齢者と学生を結びつけるマッチングビジネスや保証ビジネスにチャンスがある。
    学生が住むにあたっての家の修繕、改築の機会も増え、実生活を通じて学生が高齢者の生活支援を学ぶような教育研修事業もある。リフォーム、ヘルスケア、教育など様々なサポートビジネスが広がる。

◆人と人のつながり

 元来「和」の国であるはずの日本が、現在独居老人・引きこもり・無縁社会という深刻な社会問題に直面している一方で、個人主義の代表的な国であるはずのフランスにおいて、他人との世代間同居が始まっているのは興味深い動きだ。
 今後の高齢化社会を支えるのは、最先端の技術や情報システムだけでなく、結局は社会を構成する「人」そのものだ。
 世代間同居という新たな試みによって、人と人がつながり輝きを失わないプラチナ・ファミリーが生まれて無縁社会を打破し、希望ある社会を築くことが期待される。

※ 1 読売新聞 2010年7月20日 仏高齢者事情 若者と一つ屋根の下
※ 2 株式会社共立メンテナンス 一人暮らし生活実態調査 2010年02月25日

図:世代間同居の好循環

株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

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