プラチナ社会研究会 新産業は、人が輝く暮らしから

『逆参勤交代制度のすすめ~少しの強制力とインセンティブが新たな人の流れを創る』

 

逆参勤交代制度のすすめ
 ~少しの強制力とインセンティブが新たな人の流れを創る

三菱総合研究所 プラチナ社会研究センター 主席研究員 松田 智生

逆参勤交代制度がもたらすメリット

地方創生の政策のなかで、本社や中央官庁の地方移転が検討されていますが、単なるスローガンだけでなく、具体的に動かすためには、ある程度強制力のある政策が必要ではないでしょうか?それが「逆参勤交代制度」です。参勤交代は江戸幕府が地方大名の力を抑制するために、数年に一度の江戸への参勤を命じたものです。全国の大名にとっては大きな負担となりましたが、これがもたらしたメリットは多々あります。街道が整備され、宿場町が栄え、江戸では大名の妻子や藩の役人が暮らす藩邸が整備されました。江戸の参勤交代は地方から江戸でしたが、平成の逆参勤交代制度は東京から地方への流れです。例えば経団連の大企業や東京の企業は、社員の1割を年に1ヶ月地方に勤務させることにするのです、もしそうすれば法人税を軽減する、地方の新オフィスや住宅の建設費を補助するといったインセンティブを与えてはどうでしょうか。

今の時代に宿場町はもう不要ですが、地方には社員が働くオフィスや住宅の建設が始まります。新規に建設しなくても、既存施設のリノベーションや、企業単独でオフィスをつくるのではなく、共同のオフィスでも良いでしょう。住まいはお洒落にリノベーションした集合住宅や古民家も素敵です。江戸時代は街道のインフラ整備が進みましたが、現在は大容量のブロードバンド通信の整備が一気に進み、テレビ会議やネットを活かした仕事が楽にできるようになるので生産性がそれほど落ちることはないでしょう。それどころか、東京の満員電車での通勤から解放されて、人間らしい生活が取り戻せて、生産性も創造性も向上するかもしれません。地方自治体の視点で言えば、人口が一時的でも増え、オフィスや住宅建設や既存施設のリノベーションの需要が増え、逆参勤交代者の移動や消費で経済が潤い、結果として雇用や税収が増えることになります。

少しの強制力と後押しするインセンティブ

日本人の国民性として「やろう」と自発的には動きませんが、「やれ」と義務であれば動き出し、そして「みんなやり始めたから」となれば、追随する人が増え本格的に動き出す傾向があります。少しの強制力はきっかけとして必要なのです。

また現役時代からこうした逆参勤交代制度で、10年間で全国の10都市の生活を経験していたら、セカンドライフやセカンドキャリアを考える貴重な助走期間になります。それは自分の終の棲家としての日本版CCRCを探す良い機会にもなるのです。いきなり住替えや移住や終の棲家探しといってもすぐに決まるわけがありません。就職活動で多くの企業訪問を繰り返すことや、結婚前にお付き合いすることと同じで、決断のための助走期間が必要です。

強制力と併せてインセンティブも必要です。逆参勤交代制度を後押しする政策として、例えば「逆参勤交代割引」「移住割引」のように移動に関して電車や飛行機の割引を設けるのです。これを使って社員は割引価格で地方と東京を移動可能になり、あるいは「三世代割引」を作れば、子供や孫も年に何回か移動した先を訪れてくれます。介護割引が既に存在するのだから、住み替えや移住に関連したインセンティブがあっても良いはずです。

「逆参勤交代制度」は、少しの強制力で新たな人の流れを創ります。それは個人も企業も地域にもメリットがある三方一両得なのです。


【江戸の参勤交代と平成の逆参勤交代の比較】

江戸の参勤交代 平成の逆参勤交代
地方から江戸へ 東京から地方に
江戸に藩邸が整備 地方にオフィス、住宅が整備
全国に街道が整備 全国にITインフラ整備、交通の割引創設
参勤交代せねばおとり潰しの恐怖 法人税減税のインセンティブ


【個人、企業、地域の三方一両得】

sanpou


本コラムに関するお問い合わせ
三菱総合研究所 プラチナ社会研究会事務局
E-mail: platinum@mri.co.jp 担当:松田

株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

アンケート

このページのトップへ

三菱総合研究所関連リンク: MRI大学関連事業

Text Resize

-A A +A

小宮山宏 講演録