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音楽家のための高齢者住宅~イタリアに学ぶ多世代コミュニティ

 

音楽家のための高齢者住宅~イタリアに学ぶ多世代コミュニティ

三菱総合研究所 プラチナ社会センター 主席研究員 松田 智生

ミラノにヴェルディが作った「音楽家のための憩いの家」という高齢者住宅がある

入居条件は音楽関係者であり、年金の8割を払えば貧富を問わず住むことができる

さらに音大生も住む多世代住宅であり、日本版CCRCの参考になるモデルである

入口の門に近づくとピアノの軽やかな音が聴こえてくる。ここは、イタリアミラノにある「カーサ・ヴェルディ」。椿姫やアイーダで知られる作曲家のヴェルディが「音楽家のための憩いの家」として建築を進め、彼の死後の1902年に開業した高齢者住宅である。敷地にはヴェルディの使ったピアノや洋服等ゆかりの品も展示され、妻のジュゼッピーナと共に眠る墓にも訪問客が絶えない。

カーサ・ヴェルディの入居条件は「音楽に関わりのある人」。私が訪問した際には、かつてテノール歌手だったという93歳の男性が、自己紹介の代わりに素晴らしい歌声を披露してくれた。彼は「ここは自分にとってパラダイス」と語る。またバレリーナだった女性は「ここで100歳まで生きたい」と笑顔を見せる。

富裕層だけの施設ではなく、年金の8割を払えば貧富に関係なく居住可能だ。著名な音楽家でも晩年は生活に困窮する人が多い実情を見てきたヴェルディが、音楽家の老後の安心のために私財を投じて建設し、晩年「あなたの作品の最高傑作は?」と問われた時に、彼は名だたるオペラでなく「このカーサ・ヴェルディだ」と答えたという。

現在、居住者は70名。うち健常者45名、介護者25名で、介護になっても安心であり、ピアノのあるフロアには車椅子の居住者も数多く見かける。興味深いのは、音大生が男性8名、女性8名計16名が住んでいることだ。彼らは高齢者から音楽のアドバイスを受けるだけでなく、ホールで一緒に演奏をすることもある。作曲家を目指す学生は、「私にとって音楽だけでなく人生の経験、全てのアドバイザーだ」と語る。

カーサ・ヴェルディの主な収入源は、居住者からの家賃に加えて、初期はヴェルディの50年間の著作権収入、そして現在はこの施設の理念に共鳴する音楽家たちからの多額の寄付だ。寄付者のパネルにはパバロッティ等名だたる音楽家の名前が並ぶ。

日本でも日本版CCRC(生涯活躍のまち)を実現させるためには、芸術や文化、スポーツ等、共通の価値観がコミュニティ形成に重要だ。それらを求心力に多世代の人々や資金を集めるビジネスモデルの好事例として、カーサ・ヴェルディから学べる点は多い。

カーサ・ヴェルディ1 カーサ・ヴェルディ2

出所:三菱総合研究所 松田智生撮影

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本コラムに関するお問い合わせ
三菱総合研究所 プラチナ社会研究会事務局
E-mail: platinum@mri.co.jp TEL: 03-6858-0145 担当:松田

株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

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