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東京都版CCRCで都市の解決策を示す時・高齢者の地方移住

 

東京都版CCRCで都市の解決策を示す時・高齢者の地方移住

三菱総合研究所 プラチナ社会研究センター 主席研究員 松田智生

地方移住ありきでなく、ユーザー視点

地方移住の議論が最近盛んになっている。高齢者が将来の安心のために介護負担余力のある地方へ移住することは、選択肢の一つとしてあり得る。しかし、地方移住ありきの解決策が全てだろうか。東京をはじめ首都圏で解決できることはまだ数多くある。

まず「地方移住ありき」は供給者の論理である。自分の住まい方、生き方を起点とした「ユーザー視点」の議論が必要だ。ユーザー視点というのは、都落ちを感じさせない「年賀状に書きたくなるよう」な生きがいを感じる住み替えである。

都市の眠れるストックを活用せよ

首都圏は再活用可能なストックの宝庫である。団地、廃校、商業施設、最近では大学の都心移転が進み、多摩ニュータウン周辺では多くのキャンパスの土地・施設が余っている。さらに首都圏での空き家は約200万戸もある。首都圏に眠る宝の山を忘れていないだろうか。まず都市部で打てる手を徹底的に考えることだ。

例えば団地を改修して低層階を高齢者住宅に、高層階を子育て世代向け住宅や学生寮にする。高齢者は子育て支援に参加し、学生は格安家賃の代わりにボランティアで高齢者の買い物支援をする。また近隣の市民は、在宅で施設に通い食堂や健康施設を利用する。移転した大学や都心の廃校でもこの取組みはできる。都市型モデルを徹底的に考えるべきである。

次に東京都杉並区と南伊豆町のような首都圏と地方の広域連携だ。大切なのは介護になってからでなく、元気なうちの二地域居住移住といった助走期間を、首都圏と地方との連携で進めることだ。

対処でなく予防の視点~東京都版CCRCへの期待

増加する介護者をどうするかというのは対処政策である。今求められるのは、団塊世代をいかに介護にさせないか、いかに健康を維持してもらうか、先手を打った予防政策だ。

「健康時から介護、みとり時まで安心して居住できる高齢者コミュニティー」をCCRCと呼ぶ。全米で約2千カ所、約70万人が居住しているが、成功のポイントは「介護にさせない」予防視点だ。

そのための健康支援、予防医療、運動、食事、生涯学習、健康ビッグデータ解析が緻密にプログラム化されている。

基点は介護ではなく健康である。ゆえに、介護難民に対処する施設建設より、介護にさせない拠点となるCCRCの建設は有効である。

東京都によるCCRCの検討も始まる。既存ストックの再活用、空き家の有効利用と連携させながら地域包括ケアを進める「街まるごとCCRC」に期待したい。

予防のための制度設計も重要となる。まずCCRC居住者の自立度や介護度の改善するインセンティブを導入すべきだ。本人の医療費や健康保険料の減額に加えて、CCRC事業者の法人税減税や奨励金が考えられる。

居住者の軽就労などコミュニティーに貢献した時間が、将来自分の介護時間に使えるポイント制などのアイデアも積極的に採用すべきだ。

三菱総合研究所では、日本版CCRC実現のための3分野25の政策提言を行った。

疑問・批判ではなく具体的な解決策を示せ

民間の「日本創生会議」による地方移住の提言に対して首都圏の自治体は、「違和感がある」「いかがなものか」と疑問を呈するだけでは何も解決しない。都市でできる解決策を具体的に示して、責任ある行動力を見せることである。また地方の市町村もアクティブシニアの移住が結果的に雇用を生み、若年層流出を防ぎ、働き世代が移住するメリットを認識すべきである。

さらにCCRCは目的でなく手段である。CCRCのハコモノを作ることがゴールではなく、CCRCをきっかけに、自分のセカンドライフ、住まい方、街のあり方を考えるきっかけとなる「CCRC手段説」を最後に付したい。

株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

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