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接着型の遠隔患者モニタリングとモノのインターネット

 

協力 Rapid Access International, Inc. 2015年4月

モノのインターネット(Internet of Things: IoT)が先行的に導入されている分野の一つにウェアラブル技術がある。技術機器は検索人間が能動的にエンジンやモバイル・アプリケーション等を使って指令を出していると考えがちである。しかし、ウェアラブル技術により、人間の体から直接受動的にデータを収集し伝達するソリューションが増加しつつある。

McKinsey & Companyは、このようなトレンドを既に2010年に述べていた。

「センサーやデータ・リンクにより、患者の行動や症状をリアルタイムに、比較的低コストでモニタリングできる可能性が生まれている。これにより、医師はより適切に疾病の診断ができ、各個人に合わせた治療方法を処方することが可能となる。患者にセンサーを装着すれば、兆候の多くを遠隔的かつ継続的にモニタリングでき、医師には病状の早期警戒を発することができる。予期せぬ入院や高額な緊急医療に至る可能性を低減できるのだ。うっ血性心不全の管理を向上させるだけでも入院を減らし、米国での年間治療費を10億ドル削減できる可能性がある。」1

このようなソリューションが米国だけでもこれほどのコスト削減効果を見込めるのであれば、より幅広いヘルスケア・ニーズ全体や、世界規模ではこの医療ソリューションがどれほど魅力あるものであるのか想像に難くないだろう。

これは未来に限った話ではない。このような機器は現在、ヘルスケア産業で有効なソリューションであるととらえられている。市場情報調査会社ABI Researchによると、2017年までに保健関連に利用されるウェアラブル・センサーは8千万件に上るという2。また、Juniper Researchの推計では、2020年までにウェアラブル技術市場は全体で8百億ドルに成長するとの見込みである。3

事例:ウェアラブル・モニタリング・パッチ

患者の遠隔モニタリングは、様々な機器を利用して実現する。例えば、スマートウォッチ、リストバンド・センサー、スマートフォン周辺機器、ブレイン・コンピュータ・インターフェイス(BCI)等がある。ウェアラブル・センサーの中でも期待が高い分野として、一定日数装着してから廃棄できる使い捨てウェアラブル・パッチが挙げられる。

このモニタリング・パッチは、「充実したセンサー技術を使用し、無線で情報を発信できる。また、リアルタイムで双方向に通信できる可能性もある。」4 使い捨てパッチは、血糖値や血中カリウム濃度等の指数計測に使われており、今後はさらに肝臓機能や電解質平衡等の計測も目指している。

初期世代のパッチは、データ収集や通信というよりも薬物等の送達を主としていた。例えばニコチンパッチや避妊パッチなどである。しかし、新世代のIoTパッチ技術は、通信に対応しているという特徴が全く異なるというだけでなく、パッチそのものの性質にも違いがある。

その例としては、薄く柔軟な電子パッチ「伸縮性電子タトゥー」を開発したMC10 社 (http://www.mc10inc.com/)がある。またiRhythm社は、「ZIO」というパッチ及びその周辺サービスを開発した。

関連技術:接着テープ

一連の新しい機器を実現させるためには、接着テープ自体の設計に諸課題が残っている。Scapa Healthcare社の北米ヘルスケア研究開発部門のassociate directorであるJohn Bobo氏は、「ウェアラブル医療機器用に適した接着テープの開発はそう簡単にはいかない。肌装着用接着テープ、基質、機器装着用接着テープ等、あらゆる部品が総合的に機能するようにしなくてはならない。このような用途の接着テープには性質の異なる2種類の接着面が関係している。」という。5

接着型の患者の遠隔モニタリングに関して、機会は多数存在し、今後も発生していくであろうが、接着剤の開発も重要な役割を果たすことも念頭に置いておく必要がある。ある程度は機器本体の性質によって必要条件が決まることとなるが、機器が接着される表面の性質も重要な役割を果たすのである。当然、ユーザ全体の肌の特徴や体の曲線は重要な変数となる。このような目的達成を掲げている企業の一つとしてはAdhesives Research Inc. (http://www.adhesivesresearch.com/)がある。

iRhythm社の心臓モニタリングサービスZIO XT

iRhythm 社は、独自のZIOデバイスを活用し、長期的・継続的な心臓モニタリングとして「ZIO XT サービス」を提供している。同社は、このサービスが「従来の方法と比較して、診断率が高く、患者管理を診断経路の早い段階で変更することができる」との主張を裏付ける論文(査読付き)をウェブサイト上に複数掲載している。6

本件は遠隔患者モニタリングの先進的な例であるが、患者はパッチを最長2週間装着後、iRhythm Clinical Centersに郵便で返送する必要がある。iRhythm社の心電計技師(Certified Cardiographic Technicians: CCTs)がデータを分析し、その結果報告が医師に提供される。

MC10社が提供するような別のモニタリング機器は、「医師が遠隔的に患者の治療や注意をできるようになり、家族はお互い確認ができるようになる」7。一方、ZIO XT サービスは接着パッチを使って患者のモニタリングを行うサービスの先行的な規範となっているようである。しかし、このような技術やサービスが根付いていくにつれ、リアルタイムのコネクテッド・サービスが、試験導入を超え、ヘルスケア・サービスの主流へとより広く普及していく可能性は高い。

期待される効果やコスト削減を考えると、こういったサービスの普及拡大は時間の問題と思えてくる。

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株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

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