プラチナ社会研究会 新産業は、人が輝く暮らしから

新しいITソリューションが未来都市を支える

 

協力 Rapid Access International, Inc. 2014年8月

過去100年で、世界の人口は前例にないほどの増加を遂げた。国連の推計によると、世界の総人口は2024年には80億人を超えるとの予測だ。これにより近代、都市化が進み、現在では世界人口の半数以上が都市環境に居住している。都市化の結果、都市は限られた空間の中での人口増加への対応という課題に直面しようとしている。過密化、汚染悪化、不十分なインフラ、といった課題から、「スマート・シティ通信」ネットワークの需要が急激に高まることになった。この需要に応えるため、米国の企業シスコシステムズ(Cisco社)は、多数のスマートシティソリューション(名称:Smart+Connectedソリューション)を発表している。同社はこれを世界中の都市に導入する計画だ。このようなソリューションの目的は、情報技術(IT)とインターネットを使って、より効果的、効率的、かつインタラクティブなインフラや公共サービスを提供することである。Cisco社のスマートシティソリューションには次のようなものがある。
 ・Smart+Connected City Wi-Fi
 ・Smart+Connected City Traffic
 ・Smart+Connected City Parking
 ・Smart+Connected City Safety and Security

Smart City Wi-fi:
Cisco社のSmart+Connected City Wi-Fiの主な目的は、同社の他のソリューション全般の基盤となることである。都市全体で利用できるWi-Fiにより、市民は移動中でもパブリックスペースにいてもインターネットにアクセスでき、インターネット閲覧、地図閲覧、地域の事業情報の取得等ができるようになる。シスコのSmart+Connected City Wi-Fi は、3層の論理構造で構成されている。第1層(ストリート・レイヤー)は、市が管理する複数の屋外Wi-Fiネットワークであり、様々な無線アクセスポイントで接続されている。第2層(シティ・レイヤー)は、ハードウェアとデータセンターを接続し、第3層(データ・レイヤー)は都市のWi-Fiサービス及びアプリケーションを実現するリソースを提供する。さらに、シスコは独自のモビリティサービスエンジン (MSE)を使って、組織がネットワークの可視性を高め、セキュリティを強化できるようにしている。

Smart City Traffic:
ニューヨーク市やロサンジェルス市など、米国の大都市では、自動車事故は1日700件を超え、数時間にわたる交通渋滞の原因となることがしばしばだ。米国における交通渋滞の四分の一以上が、自動車事故のような交通の遮断、車両故障、道路工事といった、不定期に発生する事象に起因している。交通渋滞を緩和するためには、事象が発生次第、交通当局や救援サービスが早期に検知することが重要となる。事象の検知を迅速に行うためにCisco社が開発したのがSmart+Connected City Traffic ソリューションである。このソリューションは、インターネットプロトコル(IP)カメラ及びセンサー、ならびに同社のSmart+Connected City Wi-Fiを組み合わせて、交通当局や救援サービスが現在の交通状況を常に認識できるようにしている。交通状況を常に監視することにより、当局は事象がいつ、どこで、どのように発生したのかを認識でき、より早い対応をとることができる。従って、交通の流れが向上する。長期的には、このソリューションは交通パターンに関する知見を提供できるようになり、当局が将来の高速道路計画においてより優れた意思決定ができることとなる。

Smart City Parking:
米国では、駐車場は都市の重要な収入源となっている。しかし、現在の駐車場需要や動向に関するデータが常に不足しているため、このような収入源が活かされていないことが多い。その結果、事業者側は収入の機会を失い、ドライバーは駐車場を探して市内をさまよい燃料や時間を無駄にしてしまっている。駐車場サービスの管理向上を支援するため、Cisco社はスマートパーキングソリューションを提供するStreetline社と連携し、Smart+Connected City Parking ソリューションを構築することとなった。Streetline社は、一部の駐車場の舗装面下にセンサーを設置し、車両の入庫・出庫が検知できるようにした。このデータは無線通信でStreetline社のクラウド・データセンターに送信される。データセンターはデータを処理し、スマートフォンのアプリケーションで消費者に配信する。Cisco社の都市全域Wi-Fiにより、消費者は駐車場を探しながらこの情報にアクセスできる。Cisco社とStreetline社はさらに、どのような駐車場でもビデオカメラを使って入庫・出庫状況を検知できるソリューションを開発した(舗装面下へのセンサー設置を要さない)。このビデオカメラは、Cisco社のスマートシティWi-Fiを使ってデータを駐車場管理者や消費者へと送信する。このようなセンサーとビデオカメラを組み合わせることで、都市全体の駐車場の使用・空き状況がより明確に把握できるようになる。さらに、駐車場管理者は法令違反を犯している車両の画像をリアルタイムで見られるため、管理者は規則遵守の向上、収入の増加を見込めることとなる。

Smart City Safety and Security:
最近の景気後退を受け、米国の都市の多くで予算削減を余儀なくされている。予算削減の影響をまず受けやすい領域の一つに、法執行機関(警察)がある。連邦法務省のコミュニティ・ポリシング事務局(Office of Community Oriented Policing Services: COPS) によれば、米国の主要都市・主要郡における1年間の警察官解雇者数は1万2千人を超えるという。米国の都市において法執行にかかる費用を削減しながらも安全を向上させるべく、Cisco社はAGT International社と連携し、Smart+Connected City Safety and Securityソリューションを開発している。このソリューションは、交通状況を検知するIPカメラやセンサーを用いて、公共区域の監視や、犯罪の追跡を行う。犯罪行為の録画・録音を行うだけでなく、先進的カメラに顔認識機能や車のナンバープレート認識機能ソフトウェアが搭載されている。これらカメラやセンサーから取得したデータは、自動的に蓄積され、処理される。データが蓄積されると、AGT International 社の解析・予測ソフトウェアが自動的に、当該犯罪と関連すると思われるデータ全てを含む事件管理ファイルを作成する。次に、この情報を使って、警察における犯罪パターン特定、誤警報削減、対応時間の迅速化を支援する。安全・セキュリティの向上により、地域経済を活発化させる企業や労働者にとって都市の魅力が増すこととなる。

Cisco 社は2014年8月時点で、ダラス、カンザスシティ、ハンブルク、アムステルダム等、多数の都市でSmart Cityソリューションを導入する計画を立てている。Cisco社は、こういった都市のリーダーとともに、各都市の基盤や需要に合った、独自の枠組み「Smart City Framework」を構築することとなっている。この枠組みには、既に対応を進めているソリューションに加え、都市計画担当者やCisco社が有益と考える用途も含まれている。将来、全都市Wi-Fi基盤を整備したスマート・パーキング、スマート・トラフィック、スマート・セキュリティ等のSmart+Connected City ソリューションは、このような都市に生活する人、働く人、訪れる人の生活を向上させるような技術を活用して都市が達成できることの第一歩に過ぎないだろう。

三菱総研の視点

米国の主要都市で予算削減の影響から1年間 の警察官の解雇者数は1万2千人を超えるというデータは衝撃的である。財政破綻したデトロイト市でも警察、消防などの職員が多く解雇されたと聞く。予算削減と人員削減という危機をいかに機会に変えかが重要である。

本稿で紹介したITソリューションを活用したセキュリティの向上に関わるビジネスは、新たな雇用を生み、税収を生み出し、地域経済を活発化させる。ピンチにこそチャンスがあるのだ。(松田智生 主席研究員)

株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

アンケート

このページのトップへ

三菱総合研究所関連リンク: MRI大学関連事業

Text Resize

-A A +A

小宮山宏 講演録