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フリーエージェント社会

 

「フリーエージェント社会」

協力 Rapid Access International, Inc. 2017年8月

はじめに

労働市場は競争激化が続いており、経済が拡大するにつれ利益を上げにくくなってきている。企業は、優秀な人材が組織に雇用を求めるよりも、組織が優秀な人材に依存する状況になっていることを実感するようになってきている。多くの人が、顧客を自由に選べてスケジュールを柔軟に設定できるという企業家的利益を享受しようと、ダニエル・ピンク氏のいう「フリーエージェント社会」に加わってきている。「フリーエージェント」(フリーランサー、独立事業主等とも言われる)であるということは自分自身が雇用主であり唯一の従業員であると自らを位置づけることである。

機会

「フリーエージェント」が管理する対象は、企業とは大きく異なる。一般的な従業員の状態で存在する社会的譲歩とは、忠誠(仕事)の代わりに安定(一定の給与)を得るというものだ。忠誠は誰でもそれほど努力はせずに尽くすことができるが、才能は必ずしも誰にでもあるものではない。

「フリーエージェント社会」に存在する新たな譲歩とは、才能と引き換えにチャンス(例えば金銭、人脈、新しい技能)を得るというものだ。そのような状況下では、個人が職業仲介業者の全ての面を担うこととなるため個人に多大な責任を課すことになる一方、自分自身の顧客を探すだけでよいことになる。

「フリーエージェント社会」の労働力は、仕事のプロセスよりも、仕事の目的により重きを置く、というように考え方を転換している。これにより「フリーエージェント」には、長期的に最低限の仕事をするというよりも、質の高い仕事を時間通りに完成させるという動機が生まれる。

「フリーエージェント」であるということは、単一のプロジェクトに関して複数の局面を制御する必要があるという点で事業経営と類似した点がある。そのため、成功を遂げるためには経営スキルを有することが非常に重要となる。また、「フリーエージェント」でも事業経営でも、生計を維持するに十分な顧客を確保するには、需要のあるサービスや技能を提供していくことが重要になる。さらに、人員に委託されるように公に知られるためには、宣伝が必要であるため、コンテンツマーケティングも重要な要素だ。

メリット

「フリーエージェント」として働く中で、大企業から仕事を請け負うこともできる。企業は具体的な専門知識を求めて「フリーエージェント」に顧客を任せることができるためだ。「フリーエージェント」を導入すれば、多くの企業にとっては従業員を追加的に雇用するよりも低いコストで技能の高い人員に外部委託をできる点で利益となるといわれている。特定の分野で技能のある人の多くは、その技能が多様な顧客に共有できるのであれば、1者のみに拘束されたいと思わない。「フリーエージェント」になるには、面接も履歴書の提出も必要なく、数多く多様な顧客と仕事ができ、経歴が構築されていくという点も利点である。「フリーエージェント」により、才能が最も生かされる部分にその才能を使うことができることで経済はより効率化される。

「フリーエージェント」として仕事をすれば個人が自分自身の条件や選択を完全に管理できる。予定の管理・追加を自身で行えることで、キャリア管理や、コミュニティへの管理をしながら、質の高い仕事をするためにより多くの時間を割くことができるようになる。周辺のコミュニティに関与するということは、周りの環境との関与を深め、結びつきを増やしていくという点で、「フリーエージェント」体制では重要である。適切な技術を使うこともコミュニティとの結びつき形成に役立つ。技術は常に進歩しており、そのおかげで「フリーエージェント」になることがより容易になる。また、これまで必要とされてきた仲介サービスが必要なくなる(例えば、Turbo Tax、Uber)。

「フリーエージェント」が働くのは単純にお金稼ぎのためでなく、より広い相手に役立つために、より大きな目的に適うためである。目的をもって働くことで自由になる時間が増え、自分の希望次第でいつでもどのような形式でも行えるようになる。比較をしてみると、産業経済では仕事と家族が分離されているが、「フリーエージェント社会」では、双方を混合することができる。さらに、フルタイムの「フリーエージェント」となれば、同様の企業の従業員として働くよりも、所得は平均して15%多く稼ぐことができる。また、独立した専門性の高い「フリーエージェント」は、同類の被雇用者と比べて年間75,000ドル以上多く稼げる傾向が2倍ある。

デメリット

「フリーエージェント」として働くことが必ずしも有利となるわけではない。個人事業主として成功するには、数多くの技能を持っていなくてはならず、顧客を集め成功を続けていくためには、成功実績の蓄積が必要である。競争が激しい、あるいは顧客基盤の開拓が既に進んでいるような場合には、一定の仕事量を獲得・維持していくには挑戦を伴う。競合や顧客の需要について常に最新の情報を保つのは難しく、常に新しい労働慣行に適応する必要がある中で、システムやプロセスのフォーラムがない状態は難しい。つまり、雇用は安定せず、一定の給与に依存することができない、ということになる。「雇用が安定しないのであれば、自分のしたいようにしたほうがいい。」という考え方だ。

「フリーエージェント社会」の未来

経済の中に存在する仕事は数に限りがある、といわれることもある。この主張は誤りである。世界が進歩すると継続的にこれまで全く聞いたこともなかったような新たな研究・仕事が生まれるからだ。技術が生まれることで失われる仕事もあるが、それが失業の原因となるわけではなく、多くの場合仕事をやりやすくしてくれる。世界が進化し、技術が向上すると、新たな雇用が生まれる。サービス部門では技能労働者の需要は常に存在する。「フリーエージェント」は米国の労働力の44%を占めている。1

このように割合が高いということは「フリーエージェント」として働いている人が増加しており、これが通常の労働形式となってきているということを示している。労働力のほぼ半数が自営業となれば、政府や議員は、被雇用者と自営業者とを同等に取り扱うよう税制や社会保障制度を変更しなくてはならない。

終わりに

「フリーエージェント社会」では、独立した労働者は皆、各々の努力と技能に応じて同等の機会を持っている。「フリーエージェント」として働く限り、失敗も成功も自分以外に頼るものはない。「フリーエージェント」というワークスタイルは一つの人生のあり方になると予測されている。独立的ライフスタイルで生活・学習を行うという方式だ。高等学校での教育から見てみると、在宅教育は普及が進み独学を促進させると予測されている。このため、大学の価値は縮小し、強い労働倫理を持つものだけが経済の中で卓越することができることとなる。「既に『フリーエージェント』である人、あるいはそうなろうと思っている人は、自分自身の働き方の意味を問う文化なのだと認識すべきだ。自分の遂げる成功に責任があるのは自分自身だけなのだ。」

Additional Sources:

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株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

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