プラチナ社会研究会 新産業は、人が輝く暮らしから

米国におけるリアルタイム広告の台頭

 

協力 Rapid Access International, Inc. 2013年12月
http://www.rapidaccess.com/

位置認識システムとソーシャルメデイア、携帯機能それぞれの共通部分を正確に把握できれば、店舗やショーウインドウ越しに商品を眺めて購入を決めかねている消費者を探し出し、タイムリーな広告や特典やクーポンなどを用いて購入を促すことが出来る。これにより購買サイクルを短縮することになり、生産者側には機敏な判断力と行動力が生まれる。さらに企業は顧客の声に耳を傾け、微細なものに至るまでその消費傾向を知る強力なツールとなる。これをマーケティングで実用可能なものにしたのが、「リアルタイム入札」(Real-Time Bidding:RTBs)と呼ばれる広告枠購入の新しいシステムだ。

リアルタイム入札とは、オンライン広告粋を1回の表示毎に付き一回、商品提供者が瞬時に入札する新しい方法である。商品目録をベースに行う大量買入れの代わりに、リアルタイム入札は、株式取引で使用されるような技術やアルゴリズムを用い、広告粋の売買を瞬時に行う。実証的分析によれば、リアルタイム入札は表示ごとの範囲内で使われ、所在地や行動のデータに基づいた、特定の追跡用ソフトで、ユーザーのネット上の傾向・趣向を調べて、照準を絞った広告の使用を促す。これによりオンライン広告の効果を大幅に引き上げる。マーケターはスマホのアプリなどを通して、どこに消費者が存在し、服飾店や大売り出しや市場などで、何を購入しようとしているかを確実に知ることが出来る。

多くの経営専門家が、この新たなシステムがこれからの消費者マーケットにどう影響を及ぼすかについて頭をフル回転させ思案している。「いずれ全ての広告粋購入の方法がこの型となるため、この先より多くのマーケターがいち早く入札するようになるだろう。」旧クラフトフーズで大手食品製造業社のモンデレズ・インターナショナルの国際メデイア部門と消費者エンゲージメント部門の副最高責任者であるボーニン・ボーは語る。ボーはCMO.comのインタビューで、リアルタイム入札の広告業界における将来的な役割について 更に踏み込んで語り、企業側は顧客が居場所を認知される事について気にするかどうかなど、プライバシーの問題について特に繊細に扱うべきだと語った。彼女はまた「こうした新しいトレンドがどのような結果を招くかは明確でないにしても 、マーケターに大きなインパクトを与え彼らが密接に関わっていくことには間違いない」と述べた。

グーグルはリアルタイム入札についての白書を発表し、「莫大な量のオンラインの商品目録があり、初めてディスプレーキャンペーン試みる小さな会社からフォーチュン500に掲載されるような大企業までリアルタイム入札可能性があることを明らかにした。専門誌によると、リアルタイムオンライン広告を使用するブランドや企業の数は2012年の四半期から、2013年の半期にかけて、69%の割合にまで増えている。

リアルタイム入札が具体的にどのように機能するか、アメリカン航空の場合、同社のウェブサイトに消費者がアクセスしユーザー認証がなされると、例えば「30歳のNY在住の白人男性が、今年国内線のチケットを4枚購入した。」と航空会社に伝わる。これを受けて、即座にアメリカン航空は広告サービスのプロバイダを通して入札する。これにより、そのユーザーがその瞬間に見ているウェブページにある広告枠を独占し、彼のライフスタイルに沿うような国内線のチケットプランを紹介することができる。これがリアルタイム入札を用い、企業媒体とマーケターがより優れた方法で消費者にアプローチする仕組みである。

もう一例として、東京の銀座またはNYのマンハッタンの5thアベニューで買い物中の若い女性が、あるショーウインドウの高価なバッグを見ているとする。彼女の携帯電話が、彼女の居場所をGPSを通して指し示すと、若い女性向けにカスタマイズされた広告や特典が彼女の携帯電話に向け配信され、そのバッグが値下げした事を伝える。これは瞬時に行われ、リアルタイムの広告が、その場所において消費者のために宣伝を行う。米国の多くの大手の小売り業者がこの興味深く新しい技術と広告を活用しようと思案している。

リアルタイム入札の要となるのは、消費者と提供者両方にとっての価値である。The Trade Desk の最高責任者であり、創始者であるジェフ・グリーンは、「リアルタイム入札が意味するのは、全てのオンライン広告への表示が個別に、全て瞬時に評価され売買が行われることだ。これは将来全てのオンライン広告で使用され取引も出来て、購入者同士でプログラムに沿って入札をし、売買もできる。これにより、経費効率化が進み、瞬時に適切な人の前にタイミング良く広告が配信される」と語る。グリーンの予測によると、消費者の的を絞ることは、これからより一層複雑なものとなり、広告により各消費者に照準を定めるための効果的な環境は、場所・時間・クリスマスやバカンスなどの時期にも左右される。グリーンはさらにリアルタイム入札がこれから生産者にとって商業的に一層有用になるに従い、消費者のターゲットを定めた広告方法はますます洗練されていくと説明する。

リアルタイム入札は現時点では、「一見説得力があるがまだ定義は不明確な」いわゆる“バズワード”として捉えられているものの、産業界ではこれこそが2014年度に経済界の話題の中心になるものだという声も高まっている。多くの出版社がリアルタイム入札を用い、容易に自社の貴重な内容を大量の広告主が利用可能にすると予測されている。広告側は、 従来、直接の契約においてのみ入手可能だった消費者の行動の内容にアクセスすることができるが、同時に企業側は、自社の価値のあるカタログにアクセスできる広告側を自ら選ぶ事が出来る。

ソーシャルメデイアや消費行動が進展してゆくともに、営業者と生産者の消費者へのアプローチの仕方も変化してゆくだろう。リアルタイム入札とは企業と消費者との間を縮める新しく非常にダイナミックに急速に発展している方法なのである。

三菱総研の視点

広告の費用対効果を追い求めることは企業にとって永遠の課題であり、また消費者にとっては、差異化された自分だけの商品を求めたい、自分だけの特典や一円でも安く購入したいという欲求も尽きることはない。

リアルタイム入札(Real-Time Bidding:RTBs)という新たな広告モデルは、
 ①企業の効果的な広告 ②広告側の新たなビジネス開拓 ③消費者のメリット拡大
という「三方一両得」につながるものであり非常に興味深い。

ただし、ユーザー視点で考えると、スマートフォンでの自分の位置情報やサイトの検索履歴、商品の購入履歴などのプライバシー情報が常に誰かに見られている不安要素であることも否めない。

リアルタイム入札は、企業に多くのメリットをもたらすが、あくまでも消費者のメリットを重視するべきであり、プラチナ社会の理念である「新産業は人が輝く暮らしから」を忘れないようにしたい。(松田智生 主席研究員)

株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

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