プラチナ社会研究会 新産業は、人が輝く暮らしから

拡張現実がデジタル時代の情報アクセス方法を変える

 

協力 Rapid Access International, Inc. 2014年12月

21世紀、情報にアクセスするスピードは信じられないほど高速になった。デスクトップであれ、ポケットサイズのスマートフォンであれ、データや情報へのアクセスはほぼ一瞬だ。しかし、Google等の企業はさらに高速の情報取得を目指している。拡張現実(augmented reality: AR)は、現実世界の環境要素を、音声、映像、画像、GPSデータ等、コンピュータで生成した知覚データにより拡張して、直接的あるいは間接的に表示するものである。より一般的な表現でいうmediated realityに関係するもので、現実の光景にコンピュータで変更を加える、というものである。これにより、現実の知覚内容が拡張されるという機能の技術だ。拡張はリアルタイムで行われ、例えばスポーツの試合中に得点がテレビに表示されるというように、環境要素と連動する。先進的なAR技術を使って(例えば、コンピュータ・ビジョンや物体認識等を加えて)ユーザの周辺の現実世界に関する情報が、インタラクティブな状態になり、一定のユーザがデジタルで操作できるようになる。現在、AR分野における主要企業はGoogleである。同社は、AR関連製品の製造に関してTexas Instrumentsと連携している。しかし、SonyやAppleも、2015年内には独自に同様の製品を発表するとの報道がある。将来、ARがどのように商業化されるのか、企業の描くビジョンは無数にあり、それには次のようなものが含まれる。

ヘッドマウントディスプレイ

ヘッドマウントディスプレイ(頭部装着ディスプレイ:HMD)は、ハーネスやヘルメット等、ヘッドセットにディスプレイが装着されたものである。HMDは、現実の世界とバーチャルな対象物の画像をユーザの視界に映し出す。最近のHMDには自由度の高いモニタリングができるセンサーを搭載していることが多い。これにより、バーチャルな情報を現実の世界に合わせることができ、ユーザの頭の動きに応じて調整ができる。HMDを使うと、ユーザは没入型、モバイル型、協調型のARを体験できる。

眼鏡型

眼鏡型は、Google Glass が昨年発表されており、既にメディアでも何らかの進展が見られるAR機能である。この技術では、ARディスプレイを眼鏡のような機器に投影できる。このような機器には、現実世界の視界を捉え、それを拡張した画像をメガネのレンズに映し出して見るという眼鏡や、AR映像が眼鏡のレンズの表面に投影される機器等がある。

ヘッドアップディスプレイ(HUD)

ヘッドアップディスプレイ(HUD)は、視界の一部のみを拡張でき(Google Glassと同様)、ARを体験できることを意図した機器である。Google Glassの発表以降、その他多数のHUDが出現している。CrowdOpticは、スマートフォン向けのアプリであるが、GPS位置情報、方位情報、タイムスタンプ等を含む既存の写真メタデータにアルゴリズム及び三角測量技術を応用し、写真の被写体の相対的重要値に到達することができる。

CrowdOpticの技術をGoogle Glassユーザが利用し、任意の時点でどこを見ればよいかを知ることができる。

コンタクトレンズ

AR画像を表示できるコンタクトレンズの開発が進められている。このようなバイオニックコンタクトレンズには、集積回路技術、LED、無線通信用のアンテナ等、ディスプレイの要素が組み込まれたものとなるかもしれない。また、米国陸軍向けに開発が進められている別のコンタクトレンズもある。これはAR眼鏡と合わせて機能するもので、兵士が眼鏡に投影された、目の近くに映るAR画像に焦点を当てながら、同時に距離の離れた現実世界の対象物を見ることができるよう意図したものである。2013年のAugmented World Expo 会議において、この技術の可能性に注目した「Sight」と題する未来的なビデオが大好評を博し、シリコンバレーのスタートアップ企業が既にこの製品を実現させようとベンチャーキャピタルの利用を開始しているとの表明があった。


個々の製品がARの初期の商業市場価値を示す範例となる可能性が高いが、各事業分野がこの新技術を、商売、芸術、教育等を含めた日常業務にどのように取り入れるのか、様々なアイデアが溢れている。

拡張現実の市場規模は2018年までに6,599.8億ドルにまで達すると期待されている。この新産業で製品開発を進める主要企業は上記のほかに、Total Immersions (米)、Qualcomm Inc. (米)、Metaio GmbH (独)、Oculus VR, Inc. (米)、Vuzix Corporation (米)、EON Reality, Inc. (米)等がある。

情報とインタラクティブに関わったり取得したりする方法は、過去数十年で変化を続けてきた。拡張現実(AR)は、このような相互の関わり合いを、ほぼ人間と機械を融合するような形で、事実上継ぎ目なく瞬間的に行おうとしている。特に、道具、教育、芸術、商業等はこの技術に関して変化を遂げていくだろう。また、現時点ではこの新興産業の巨大な市場シェア獲得に向けて備えが十分といえる企業はほんの一握りしか存在しない。

三菱総研の視点

拡張現実: Augmented Realityは、昔SF映画でみたストーリーが現実化するものである。ヘルメットのような大型の装置から、コンタクトレンズ型まで幅広い形態が準備されている。もはや機械と人間との境い目がなくなり、両者が融合して産業、エンターテイメント、芸術、スポーツ、軍事、あらゆる分野で用途が広がる。事業化に向けてカギになるのは、異業種との連携である。用途開発、技術開発、マーケティングを支援・促進する異業種・産官学の連携を推進する組織の能力が問われている。(松田智生 主席研究員)

株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

アンケート

このページのトップへ

三菱総合研究所関連リンク: MRI大学関連事業

Text Resize

-A A +A

小宮山宏 講演録