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高齢者向けロボット 技術の利用で世代間を繋ぐ

 

高齢者向けロボット 技術の利用で世代間を繋ぐ

協力 Rapid Access International, Inc. 2017年1月

米国では人口の高齢化が進展している。Eldercare Workforce Alliance(高齢者ケア等関連の31団体が参加する団体)の推計では、2030年までに米国国民の2割が定年年齢を超えることになるという。1高齢者人口の増加は寿命伸長と直接相関関係がある。医療の進歩に加え、国民の生活様式がより健康的になってきているためだ。寿命の長い人が増えるのは決して悪いことではない。しかし、高齢者の世話をする、ヘルスケア系専門人材は現状でも既に不足に陥っている。このような動向に対処しようと、退職者向け施設(retirement facilities)・介助施設(assisted living facilities)の多くは、技術を活用してヘルスケア系労働力への負荷を軽減させようとしている。

技術に不慣れな高齢者

高齢者の多くは技術の利用に自信がなく、技術が常に進化しているため学ぼうにも壁が大きいと感じている。パーソナル・コンピュータ、タブレット端末、携帯電話等の電子機器は、今日の社会では日常的に利用されているが、現在の退職者世代はこれらがまだ存在しない時代に育ってきた。Maxine Duncan氏は86歳で、カリフォルニア州の「Heritage Downtown」という退職者向け住宅で暮らす女性だが、社会とのつながりを保っていくために技術を使いたいと言っている。「技術には遅れたくない。高齢者の多くは、周りの人や考え方から取り残されてしまっている。」とDuncan氏は言う。2

OhmniLabs

サンフランシスコのベンチャー企業「OhmniLabs」は、デジタル世代で多くの高齢者が直面する孤立や疎外といった問題に対処するロボットを開発した。同社は2015年にThuc Vu氏、Jared Go氏、Tingxi Tan氏が設立した。自身の工学の知識を生かして介護者不足から生じる問題の改善に役立てるのではないかと気づいたことが創業のきっかけだ。OhmniLabsが開発した介護ロボットは、技術に明るい人でなくとも簡単に操作できるのが先進的で、高齢者がどこにいようと家族や友人とつながることができる。

ロボット

OhmniLabsの現行モデルはシンプルなデザインであり、先進的なロボットには気後れしてしまうような世代であっても受け入れやすいようにしてある。ロボットの頭部にはスクリーンが搭載されており、Wi-Fi経由で遠隔操作ができる。Wi-Fiでの接続を利用して、家族や友人はどこにいてもロボットにアクセスでき、退職者向け住宅に暮らす相手とテレビ電話での会話ができる。退職者向け住宅や介助施設等では居住者が寂しい思いをすることもよくあるが、このロボットで大切な家族や友人の存在を感じることができる。

安全・セキュリティ

OhmniLabsのロボットは、通信機器としての役割にとどまらず、高齢者の安全・セキュリティを高める機能も持っている。

このロボットを使えば、薬を処方どおりに飲んでいるかを確認したり、健康状態全般を確認したりできる。高齢者が転倒した、あるいは動けなくなった場合、家族は現地に行かずとも遠隔的にロボットにログインし、ビデオカメラを通して状況を把握することができる。3

スクリーンには顔認識ソフトが搭載されており、なじみのない顔が検知された場合にはヘルプ通知が出るよう設定できる。例えば、不審者が侵入した場合、その顔を再生できるよう記録するのはもちろん、警察に介入を求める通報もできる。4

現状

2017年1月20日時点で、このロボットのプロトタイプ30台が退職者向け住宅や介助施設で試験的に利用されている。5共同設立者のJared Go氏は、翌年にはこのような施設に数百台導入させたいと考えている。6このロボットは現在試験中の段階であるが、OhmniLabsでは常にケアロボットの向上を試みている。Vu博士の考えでは、今後5年以内に、洗濯や皿洗い等の家事全般をこなせるロボットが開発されるという7。米国での介助施設の年間コストは平均4万2千ドルであるが8、OhmniLabsはその5分の1のコストで同等のケアを提供できるロボットの開発を目指している。

終わりに

医用技術(med-tech)という考え方は新しいものではないが、そのニーズは毎年拡大している。高齢者を世界と繋ぎ、生活の質を向上させようと、多数の企業が先進技術を開発している。

OhmniLabsはこのような企業の一社であり、多くの世代を技術と結びつけるよう躍進している。同社のケアロボットは、距離や世代が離れていても家族同士がいつでもコミュニケーションがとれるようにすることを目指している。

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株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

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