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リモート・イヤーの挑戦:世界を旅しながら仕事

 

「リモート・イヤーの挑戦:世界を旅しながら仕事」

協力 Rapid Access International, Inc. 2017年7月

はじめに

余暇として旅行に出かけ世界中で新しいことを経験するために資金を稼ごうとする人は大勢いる。現役学生や卒業生がギャップイヤー留学プログラムを利用すれば、就職や大学進学の前に世界を探訪する機会となる。一方で、既に就職済みの人にとっては、キャリアを中断して同様の経験をするような機会はないかもしれない。そこで起業家のGreg Caplan氏は、就業したまま安定的な収入を得ながら世界を旅する、ということを実現させるべく、Remote Yearという企業を創業した。

ビジョン

Remote Year創業者・CEOであるGreg Caplan氏は2014年に「リモート革命」という考えを形成し始めた。これは、雇用され仕事をして収入を得ながら、世界を旅して新しい経験をするという内容を盛り込んだものだ。Remote Yearは、冒険好きで外向的であり知性のある個人を50から80名集めて多様性のあるグループを形成し、1年間の旅行に出かけるという事業を行っている。この参加者を「リモート」と称し、一緒に毎月様々な目的地へと旅に出る。新しい環境や文化交流を経て個人としても社会人としても成長していく。Caplan氏は、人生で重要な価値を持つのは「自分が所有するモノではなく、ほかの人と共有する経験なのだ」という。1

詳細

Remote Yearの構想がより公に、現実的になってくると、参加に関心を抱く人は大勢いる様子となった。初年度2015年には25,000件近くの参加申し込みがあったのだ。参加者には、世界中の様々な地域の出身者がいる。発足後、40カ国から千人を越える人がRemote Yearに参加している。参加者の年齢層は22歳から49歳にわたる2。異なる背景を持つ多様な人々のグループを形成させることで、独特の学習環境が生まれ、人としての成長、キャリアでの成長が促進される。

プログラムの料金は27,000ドルである。料金には、宿泊費、訪問地間全ての交通費、常時接続可能なWi-Fiのある共有ワークスペースを含む3。また、ツアー、講演、団体での食事等の様々なイベントも料金に含む。含まないものは、居住地から最初と最終の訪問地への航空券、個人での食事、その他お土産や日帰り旅行等の個別の支出である。Caplan氏の見積もりではこのような追加費用は18,000ドル程度であり、プログラムの総費用は45,000ドルほどになる4

残念ながら、このプログラムへの参加資格は誰にでもあるわけではない。Remote Yearプログラムに参加するには、職を持っていることが条件となる。ある程度の収入を得られ、世界中のどこにいても遠隔的に仕事ができる必要があるのだ。これまでの参加者は、マーケティングやウェブ開発の従事者がほとんどだが、ほかにも弁護士、デザイナー、会計士等、あらゆる職の参加者もいる。

申し込み方法

この体験の参加者(Caplan氏の呼び方では「リモート」)になるには、まずRemote Yearのウェブサイトから招待を受ける申し込みが必要だ5。次に申込書を提出し審査を受ける。続いてテレビ面接を受け、「リモート」となれるかの最終決定がなされる。プログラムへの受け入れが決まると、雇用主と旅行の詳細について協議を始めなくてはならない。

遠隔的に働ける職を見つけることが最難関事項の一つだ。Remote Yearではプログラム参加希望者への職の斡旋は行っていない。しかし、通常の業務から遠隔的業務への転換について支援は可能だ。雇用主が情報を得て順応できるよう、遠隔的業務の設定実現を支援するためのガイダンスやリソースは提供できる。

出資者

Remote Yearの起業には、ベンチャーキャピタルであるHighland Capital PartnersのDan Nova氏及びCraig Driscoll氏による1,200万ドルの出資を受けた。このベンチャーキャピタルはさらに、独特な働き方のビジョンを共有できるように、Xometry(部品等のオンライン受注製造)やOneSpace(フリーランス人材のネットワーク)等の様々な企業にも投資を行った。Remote Yearは、「リモート」が働いたり生活したりするスペースの予約について支援を受けられるよう、WeWork Labs(ワークスペース、会議室等の提供事業)の共同創業者Jesse Middleton氏や、Airbnb(民泊仲介事業)の共同創業者兼C sTOのNate Blecharczyk氏とも連携した6

Remote Yearはこのような資金提供を受けたことで、「リモート」が各国のコミュニティで体験する内容に集中できるようになった。

終わりに

このような体験は高額な投資と見られるかもしれないが、現実的に多くの人は米国の大都市で生活するのに年間45,000ドル以上を支出している。個人で旅行を計画したほうが費用は抑えられるかもしれないが、時間や管理を考えると値打ちはある。Remote Yearでは、質の高い生活・労働環境に加え、各個人が世界を心底理解できるような本物の文化的体験を提供できるよう取り組んでいる。

Additional Sources:

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株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

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