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3Dプリンティングと医学の変容

 

協力 Rapid Access International, Inc. 2015年6月

初の3Dプリンタが製造されたのは1980年代であるが、3Dプリンティングが幅広く応用されるようになったのは最近になってからだ。現在もこの産業はまだ黎明期にある。そのため、まずは3Dプリンティングの基本的な定義から確認してみるのがよいだろう。

3Dプリンティングとは?

3dprinting.comでは3D(3次元)プリンティング(あるいは付加製造(additive manufacturing: AM)ともいう)を次のように定義している。

「3Dプリンティング、あるいは付加製造とは、デジタル情報をもとに三次元の固体造形物を作成する方法をいう。3Dプリンティングでは付加をすることで物体を作成する。付加製造で物体を作成するには、材料の層を物体全体が形成されるまで連続的に積層していく。これら個々の層は、完成した物体を薄くスライスした水平断面ととらえることができる。」1

3Dプリンティングの医療利用:ロボット義手、バイオプリンタ製人工心臓

3Dプリンティングは、産業としては初期段階にある。医療用途の初期展開の一つには人工補装具がある。3Dプリンタは、機械式義手等、誂えの人工補装具を製造できる。このようなロボット義手の事例についてはWebMD.com に掲載された動画付き記事「Will 3-D Printing Revolutionize Medicine?」(3Dプリンティングが医療に革命か)等で参照できる。2

ロボット義肢は、通常は非常に高価であるが、Robohand USA社は特注のロボット義手「Robohand」を2千米ドルで製作できる。前述の動画での紹介によると、一般的な医療用人工補装具の価格はRobohandと比較して最大で数百倍になることもあるという。

人間の組織・臓器の3Dプリンティング技術による製造はメディアでも注目されているが、それにはもっともな理由がある。患者自身の細胞に由来する組織・臓器をバイオプリンティング技術で形成すれば、現在の臓器移植に関する課題(例えば組織適合性を有するドナーの特定)の多くを解決しうるのだ。

このような、複雑な臓器のバイオプリンティングは、期待される3Dプリンティング技術の中でも最も先進的であるが、既に多くの研究で概念実証が示されている。例えば、既に3Dプリンタを使ってひざの半月板、心臓弁、椎間板、その他の軟骨・骨、人工耳が作られた例がある。予測では、今後20年を待たずに完全に機能する人工心臓が3Dプリンティング技術で作られることとなるともいわれている。

3Dプリンティング技術の医療向け利用の利点:カスタマイズと経済性

3Dプリンタを医療用途に利用する最大の利点は、注文に応じて医療用品・機器を製造できる能力にある。3また、Robohandの例が示すように、高度な注文に対応が必要な用途への3Dプリンティングの活用によるコスト削減は非常に魅力的だ。

大量生産には従来通り伝統的な製造方法が最も経済的であるが、小規模生産においては3Dプリンティングの価格競争力はますます高まっている。4

現在の主要動向:オンディマンドに対応した医薬品設計及び3Dプリンタによる製造

現代医療に影響を与える3Dプリンティング技術の中でも短期展開で最も有望なものはプリントにより製造する医薬品とドラッグ・デリバリー・システムである。

セントラル・ランカシャー大学の科学者が、プリント技術を使った医薬品製造の新システムについて特許を取得しようとしており、この技術により大幅なコスト削減が可能と推測されている。同大学のMohamed Albed Alhnan博士は、「例えば肝臓疾患の患者に投与する医薬品等は、1ミリグラムに満たない単位でも大きく影響する場合がある。また、現時点ではこのようなニーズに個別に対応するには非常に高額な費用がかかる。」という。5

伝統的な圧縮成型の医薬品は通常、単純な薬剤放出特性に限定される。3Dプリンティング技術を用いれば、固形薬に含まれる複数の有効成分の間に繊細な障壁層を形成させ、薬剤放出を制御できるような医薬品が、より精密に個別的に製造できる。また、複数の薬剤を含有し、障壁層や多孔層の複雑な組合せを持つ医薬品を製造することもできる。

今後、各患者専用に最適な形で薬剤が放出されるように設計された独特の組み合わせの処方薬が用いられ、個別の患者に誂えた非常に精巧な投薬方法が導入されることとなる見込みは高い。

このような技術は、医薬品企業や病院では5年以内、一般には10年以内に導入されると予測されている。6

Mohamed Albed Alhnan博士は、「将来的には、毎日の投薬量を定期的に変える必要のある患者がこのような機器を自宅に設置できるようになるよう望んでいる」という。7

セントラル・ランカシャー大学の研究者が開発した、医薬品原料を「インク」として錠剤を製造する3Dプリンタのデモ動画は「http://youtu.be/FGpbiJxkkak」にて閲覧できる。

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株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

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