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テニス用ライン判定システム「In/Out」

 

テニス用ライン判定システム「In/Out」

協力 Rapid Access International, Inc. 2017年5月

はじめに

テニスの試合では近年、カメラを使ったライン判定システムが普及してきている。人間の目視での判定と比べて精度が高いためだ。現在ではテニスクラブや、グランドスラムのようなプロ競技での導入例がある。しかし、価格が高額であることから一般の娯楽としてのテニス競技では導入が進まず、現状では低価格帯の製品は市場に見当たらない。この隙間を満たすため、Gregoire Gentil氏は、余暇でのテニス愛好家向けのライン判定システム「In/Out」を発明した。試合中、ボールがインなのかアウトなのかを巡って判定がもつれた際に解決を図ろうというものだ。1

機器の概要

「In/Out」は、カメラ2台を搭載した持ち運び可能の機器で、テニスのネット支柱であれば型を問わず装着できる。設置には1分もかからない。主な用途はラインの判定で、ボールがインであれば緑のライトが点灯しブザー音が1回鳴る。アウトでは赤いライトが点灯し、音が複数回鳴る。好みに合わせて、ライトのみ、音のみ、ライトと音の両方が発する、というように設定変更ができる。「In/Out」を支柱に設置すると、テニスコートのラインを認識するよう自動調整がされる。2Gentil氏によると「テニスコートでのライン検知は、路上で乗用車のテスラが車線を検知するようなものだ」という。3この機器は、ラインが見える状態でありさえすれば、屋内、屋外、ハードコート、クレーコートを問わず、どのようなコートでも機能する。搭載された高解像度カメラ2台がテニスボールを追跡し、その精度は99%、誤差範囲は20ミリメートルである。さらに、内部に加速度計が搭載されており、サーブのレットも判定できる。4

ライン判定のほかにも、1080pの高解像度で録画し、ボールの速度、スピン、動き等のデータを記録できる機能がある。動画と統計を使って、プレーヤーがテニスのスキル向上の参考にもできる。また、動画には拡張現実(AR)を使った表示もできる。動画やデータを見るには、「In/Out」本体の画面を見る、あるいはiOSかAndroid搭載の機器に接続する方法がある。「In/Out」で取得したデータはSDカードに保存される。電池の持続時間は、ライン判定のみでは2時間、録画・統計を取得すると1時間半である。さらに、置き忘れ対策として、持ち主のスマートフォンから一定の距離を離れると電話が鳴る機能がある。その際、特定の電話1台のみに反応するよう設定することもできる。

一方で、欠点も残っている。まず、誤差範囲が20ミリメートルであり、平均すると精度は2~3センチメートルのずれが生じる。高額な競合製品と比較すると大幅に低い精度だ。もう一つの欠点は、ダブルスの場合、チームメートがこの機器の視界に重なると精度が低下してしまう点だ。「In/Out」は、複数台使用すれば自動的に相互に通信できるため、この問題を解決するには、反対側の支柱にもう1台設置が必要となる。このような課題は残っているが、人間の目による判定と比べればはるかに優れている、とGentil氏は言う。5

競合製品

「In/Out」以外の、カメラを利用したライン判定システムはかなりの高額で、テニスコートに据え置きで設置する必要があるが、精度は高い。「In/Out」は未発売であるが、競合機器と比べると格安で、大量生産できる見込みも高い。

ソニーが開発した「ホーク・アイ(Hawk-Eye)」は、プロ選手、トップ・トーナメントが採用しており、コート1面あたりのコストは6万ドルだ。ホーク・アイで使用されているカメラは超精密で、誤差範囲は3ミリメートルである。6

そのほかの製品としては、SmartCourt、Mojjoがあり、価格はコート1面あたり1万ドル前後である。ホーク・アイと比べれば確かに価格は一段下がるが、それでも趣味でテニスを楽しむために購入するには高額すぎる。SmartCourtの場合、価格はコート1面あたり12,500ドルで、さらにメンテナンス及びクラウドストレージ費用として月額500ドルかかる。このようなシステムは、米国、欧州のテニスクラブや大学等での設置が多い。7

終わりに

「In/Out」は、一般消費者の製品ニーズのある市場への進出の可能性が高い。この機器は一般のテニス愛好者向けに役立つ情報を提供するだけでなく、技術を他のスポーツにも応用できる可能性がある。Gentil氏の計画では例えば、バレーボール用のライン判定機器も製造したいとの考えがある。今後のより大きな目標としては、幅広い競技に利用できる「スマート・スポーツ・カメラ」を作り出すことが掲げられている。8

「In/Out」の魅力は、プロ用のシステムと同じ機能を、精度は劣るとはいえ、比較的低価格で利用できることだ。市場において同等の製品が存在しないことから「In/Out」の売り上げの見通しは明るい。テニス用品小売店の製品試験担当者の話では、「持ち運び可能で、低価格な機器としては、「In/Out」は断然傑出した製品となるかもしれない。このような製品はこれまで見たことがない」という。9In/Outは2017年夏、199ドルで発売の予定だ。

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株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

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