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高齢者の失禁の予防と対応~新興企業が成長分野での巨大市場を狙う

 

協力 Rapid Access International, Inc. 2014年11月

日本は現在、失禁関連製品に関する市場規模は世界一であり、第2位の米国の約3倍である。しかも人口は米国の約三分の一に過ぎない。2013年には、失禁関連製品の売り上げは5パーセント増加した。これは主に日本の高齢化が要因である。実際、予測でも2015年までに成人用おむつの売り上げが新生児用を追い抜くと見られている。また、同品目の2012年から2017年にかけての伸び率は25%との予測である。これら数値が示すように、日本では高齢者ケア用製品に堅調な需要があり、特に失禁関連製品については顕著である。この分野は比較的ニッチな市場と思われるかもしれないが、日本の高齢化と、そこから必要性が生じる独特の需要は一大ビジネスになる方向だ。この分野は新興成長市場でありながら見過ごされているとの見方もあるのだが、あるスタートアップ企業が、この分野で先端と言い得る独自の新技術を開発した。同社はロンドンに拠点を置きつつ米国のジョイントベンチャーとも横断的に結びつきを持っている。

さらに、失禁は、世界保健機関(WHO)の分類では疾病に位置付けられているが、世界人口の5~7パーセントがその罹患者である。数多くの指標において、高齢化の結果として罹患率は世界的に上昇していると示されている。5年後には61歳以上の人口は世界で10億人の大台に乗ると推計されている。

失禁関連製品の市場普及率は一般的に低く、特に男性に関して低率である。欧州での普及率は40%に満たず、新興市場においては顕著に低い。このような統計は米国でも同様の傾向である。失禁の発症率は男性と比較して女性のほうが2倍から3倍高い。また、世界の36歳以上の女性のうち25パーセントが人生のいずれかの時点で罹患すると推定されている。これら数値から、当該部門での技術を進歩させれば経済的な見返りも膨大となりうると示唆される。

製品概要

ChangeAlert社はスタートアップ企業であり、インキュベータのBethnal Green Venturesが主な出資者として、2014年10月にangel.coという投資家ネットワーキングサイトに掲載されたばかりの企業である。同社の主要製品はウェアラブル機器であり、現在は試行段階だ。再利用可能なゴムバンドが水分センサーに装着されており、湿り気を感知するとそのセンサーが警報信号を発信する。ケア担当者が身に付けたブレスレットがその信号を受信する仕組みだ。この製品のコンセプトは、注意喚起によりおむつを直ちに効率的に交換できるうえ、感染、褥瘡(床ずれ)、不快感等、失禁に関して入院・医療で発生する問題を軽減できる、というものだ。同社は設立間もない企業だが、既にメディアの注目を集めており、「世界をよくする」スタートアップ11社のうち1社にも選定された。

ChangeAlert社は、このゴムバンドのほかにも、患者のおむつ内の湿り具合をホストコンピュータに集めて表示するという、一般住宅及び高齢者ケアホーム向けのシステムを開発中だ。この製品は主にヘルスケア機関や高齢者ケアホームに販売される模様だ。

技術

このゴムバンドの製品やホストコンピュータ警報システムは未だ開発中であるため、現時点では不明な点も多い。しかし、つまりはセンサー関連技術であり、おむつ交換の頻繁不足がもとで起こりうる感染や褥瘡等といった深刻な健康問題の予防に役立つものである。この製品は、おむつが湿った際に信号を発し、ケア担当者がおむつ交換を迅速に行えるようにするものだ。これにより、患者の不快感を低減し、必要以上のおむつ確認を避けることができるようになる。

結論

日本の高齢者人口、失禁関連製品の需要を考えると、この製品が歓迎される可能性は高いだろう。この製品は病院の効率向上に寄与するだろう。これは介護施設入居者数に鑑みて非常に重要な点だ。さらには、入院や、失禁が一因となる合併症に関する医療費の削減にもつながるだろう。高齢者の失禁への技術応用という点で、この市場は全く未開拓である。また、世界中で寿命が延伸するにつれ、巨大市場への発展をもたらすような、世界的ビジネスモデルの礎と成り得るだろう。

三菱総研の視点

高齢者の失禁という繊細な問題については、本人の尊厳を大切にする姿勢が大切である。自らおむつの交換を要求するのは、高齢者にとってなかなか言い出しづらいものであり、センサー技術で湿度を感知してケア担当者に知らせる技術とサービスは有望である。 こうした高齢者の尊厳の尊重やユーザー視点の商品開発が進むことを期待したい。(松田智生 主席研究員)

株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

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