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生体吸収性ステント:保留中だが画期的なソリューション

 

「生体吸収性ステント:保留中だが画期的なソリューション」

協力 Rapid Access International, Inc. 2017年11月

冠動脈疾患治療の課題

米国では年間約60万人が冠動脈閉塞の治療のために胸部体内に金属製の冠動脈ステントを留置している1。米国では冠動脈疾患は罹患数が非常に多く、心疾患は死因の第一位となっている2

金属製ステントの問題の一つは、ステントは目的を果たした後は不要となるのが一般的だが、その後も患者の体内に恒久的に残ってしまうことだ。ステントが体内に留置されることで、その後の治療、造影検査、手術の妨げになることもある。また、血液の流れに悪影響を与え、血栓等、他の合併症に至る可能性もある。

FDAが初の生体吸収性ステントを承認

2016年、Abbott Vascular社の製造した、初の生体吸収性ステントが米国で承認された3。製品名称はAbsorb GT1 Bioresorbable Vascular Scaffold System (BVS)とされた。このステントは、自然分解性ポリマーを材料としており、狭窄した動脈を2~3年間にわたって拡げることができる。2年間経過するとステントは分解し、体内に吸収されて事実上消滅する。考え方は分解性の縫合糸と同様だ。2016年後半には、Cleveland Clinicが生体吸収性ステントを紹介したYouTube動画において、専門家の予測として、市場は6年以内に20億ドル規模となる可能性があると示されていた4

製品の課題

米国食品医薬品局(FDA)による承認から1年経過後、Absorb BVSは、ステントの理論上の利点に疑問を呈する試験結果に深刻な影響を受けた。中には、Absorb BVSから発生するリスクや合併症の根拠を示すものもあった5。その結果、FDAはこういった試験から生じる懸念に関して独自の調査を開始した6

Absorb BVSがFDAの承認を受けて1年あまりが経過した2017年9月には、Abbott Vascular は、当該製品の需要低迷を理由に商用販売を停止すると発表した7

一方、同社は「次世代生体吸収性機器の取組は続ける」とも述べた。Abbott Vascular社の広報担当者Jonathan Hamilton氏は、「第一世代製品は、活用経験を重ねることで反復されていくことも多い。Absorb BVSは革新的・草分け的機器であり、第二世代にはこれまでの各種経験を反映させていくつもりだ」としている8

生体吸収性ポリマーと患者ケアの進展

生体吸収性ステントは、現状の形式のままを維持することはなくとも、患者にとってもAbbott Vascularのような企業にとっても今後も期待は大きい。Abbott Vascular社が次世代の本製品に関しても先端であり続けるかは未知である。しかし、生体吸収性ポリマーの医療機器への活用は、今後の機会の主要分野となる可能性が高いだろう。

生体吸収性ステントは、生体吸収性組織スキャフォールドの一例だ。生体吸収性ポリマーの患者治療への応用には、縫合糸、ねじ、ピン、ドラッグデリバリーシステム等がある。

Absorv®というブランド名で生体吸収性製品を製造するZeus, Inc. は、整形外科用途や組織工学等、多数の用途を紹介している9

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株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

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