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都市交通インフラの新たなフロンティア

 

「都市交通インフラの新たなフロンティア」

協力 Rapid Access International, Inc. 2017年10月

都市設計と自動車

米国や世界の多くで自動車の普及、依存が進んできたことは、都市計画に対し数十年に亘り深い影響を与えてきた。都市設計が、歩行者よりも自動車のニーズにどれほど動かされてきたのか、と立ち止まって考える人もいるかもしれない。道路や駐車場に空間を割り当てれば、その空間を、都市の成長や健全性に寄与するようなより生産性の高い社会・経済的目的に活用することにある程度制限が課せられることとなる。言うまでもなく、こういった計画の決定による環境影響もある。

歩行者優先

スペインのバルセロナ市では、このような歩行者より自動車優先の状況に対し(EUの空気の質に関する目標達成のため)、市内を「Superblock」(カタロニア語では「superilles」)という9つの四角形のブロックに分割し、このブロック内の交通の流れを時速10キロ以内に制限するという方策をとった。それにより、炭化窒素排出量、微粒子汚染、騒音公害が劇的に低減された一方、全般的な経済活動は拡大、という結果に至った。1

米国の都市においてバルセロナの「superilles」のように交通の流れを遮蔽する、あるいは本格的に制限するという点に関しては、主に国内の大都市が対象とされてきた。

とはいえ、米国の都市で同様の対応ができないということではない。燃費の向上を求める市場の需要や、環境保護省(EPA)やカリフォルニア州が設定してきた製造要件に関して、都市交通を形成する要素として米国の二酸化炭素排出量が影響を与えてきたのは確かだ。

この市場需要という点は軽んじるべきものではない。都市計画方針が社会的目標や市場需要に一致するのであれば優れた解決策が見つかるものだ。

駐車場を我が家に

Bill Dunster氏が代表を務めるZEDfactory社が提供する「ZedPod」は、エネルギー高効率の住宅を既存の駐車場の上に高架で建造したものである。ZEDfactory社のウェブサイトで紹介されている動画によると、ZedPodは低廉な住宅不足の解決策となる、との説明がある2。構造は実際魅力が高く、機能的だ。太陽光発電を導入しており、余剰発電量を住宅の下部に設置した設備を使って電気自動車や電動自転車に充電ができ、二酸化炭層排出量を低く抑制できる。住宅の下部は個人用あるいは共用の駐車スペースに利用できる。

事例として、1棟で構成するZedPod と、ZedPodコミュニティの模型が示されている。考え方としては、駐車場全体に複数のZedPodをつなぐ、あるいは近接して設置し、高架で中庭やその他のコミュニティスペースを整備して、共同住宅のような様式を作り出す、というものだ。

ZEDfactory と今後の機会

ZEDfactoryは、イギリスのロンドン南部に位置するWallingtonに拠点を置く。同社は最近、カナダのトロントで開催された「グリーン・ビルディング・フェスティバル」でZedPodを出展したことから3、北米での市場機会に関心を持っていることが示唆されうる。

ZEDfactoryは世界中に広がるプロジェクトのリストをウェブサイトに掲載しており、北米を除いてはほぼあらゆる地域に進出している。しかし、北米では駐車場の不足はないように見える。発表が2010年という若干古い情報ではあるが、米国だけでも8億台の駐車スペースが存在しているといわれている。4

さらに、米国のミレニアム世代の若者の中には、都市部での生活に関心を持つ者は多いが、一方で都市では住宅が手ごろな価格で入手しづらくなってきているという課題もある。新しい市場需要を満たすよう、交通インフラが都市計画を変容させようとしている、という機会を認識すべき時が来たのかもしれない。特に、環境に関しより強く責任を持つという目標達成に資するような機会をとらえるべきであろう。

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株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

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