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2016年度第2回プラチナ社会研究会総会 開催報告

 

2016年度第2回プラチナ社会研究会総会 開催報告

8月3日(木)、「プラチナ社会研究会」の2016年度第2回総会が開催されました。

2016年度第2回総会-1


今回は、「サーキュラー・エコノミーの実現に向けて」と題して、近年、欧州を中心に注目を集めるサーキュラー・エコノミー(以下、CE)が、現在欧州でどのように進められているのか、それに対して、日本ではどのような対応を行おうとしているのかということについて紹介しました。

これまでの経済は、資源を使って生み出した製品は、消費され、廃棄されるというリニア・エコノミー(線形経済)でした。しかしCEは、限られた資源をより有効活用し、なおかつ環境への影響を最小限にとどめるために、消費した製品や資源を再生・再利用させる循環を作っていくというものです。注目すべきは、単に「環境に優しい」だけではなく、経済政策の観点を盛り込んでいること。資源の節約や、新産業誕生による雇用創出、CO2の削減効果など、多くの経済効果が期待され、これまでの経済モデルに変革をもたらすものと考えられています。欧州では、2015年12月に、「欧州域内製造業の競争力強化」「新たなビジネス構築」「厳しい環境対策」という3つを念頭に置き、今後の方向性をまとめた「サーキュラー・エコノミー・パッケージ(以下、CEP)」というビジョンも採択し、これからの欧州経済をCEに移行する動きを強めています。

第1部では、経済産業省でCEに係る国際的な議論を担当している、同省産業技術環境局リサイクル推進課 課長補佐の梅田英幸様から「資源効率・循環経済政策に関する動向と今後の政策展開」、三菱総合研究所 環境・エネルギー研究本部 研究員 新井理恵より「循環経済を巡る欧州動向と今後の在り方」と題した講演を行いました。

第2部では、東京都市大学 環境学部、多摩大学ルール形成戦略研究所 客員教授、株式会社日立製作所の市川芳明様より「国際標準のビジネス活用とサーキュラーエコノミー」についてご講演をいただきました。その後、分科会活動報告と新規分科会の紹介を行いました。

終了後の懇親会にも大勢の方に参加いただき、盛況のうちに閉会を迎えました。

プログラム

第1部

【講演1】「資源効率・循環経済政策に関する動向と今後の政策展開」
 (経済産業省 産業技術環境局リサイクル推進課 課長補佐 梅田 英幸様)

梅田様

梅田様からは、CEを取り巻く国際的な動向、CEへの対応の観点からアジアをどう取り込んでいくか、そして日本国内の環境整備をどう進めていくかについてお話をいただきました。

「そもそもCEとは、RE(Resource Efficiency:環境への影響を最小限にしながら、持続可能な方法で地球の限られた資源を使用すること)を達成するための重要なテーマのひとつ」と講演をスタートした梅田様。

経済のCEへの移行は、資源利用量の削減や、これまで廃棄されていた資源が収益源に転換するなど、資源の使い方に変化を生じさせるのみならず、消費者への提供価値の変化や、新たなビジネスモデルによる付加価値の創出までも視野に入れたものです。サービス産業優位の傾向にある欧州では、このCEを推進することで、欧州域外からの天然資源の流入とそれに伴う資金の域外流出を最小化しつつ、欧州域内での付加価値最大化を図るという、まさに産業政策としての狙いがあると説明しました。

こうしたCEへの移行に向けた取組の際、必要となるのは、国際的に二次資源が循環している現状を踏まえ、グローバルにREを向上していくという視点です。そこで問題となるのが、アジアの新興国など、インフォーマルセクターを中心に不適切な廃棄物処理が行われてしまっている現状です。この問題を解消しなければ、資源損失や環境汚染、健康被害が発生してしまうのみならず、環境コストが内部化されていない異常な低コスト処理が周辺国からの歪んだ国際資源循環を促してしまう可能性があります。そこで経済産業省では、汚染性が管理された適切な国際資源循環を構築するため、「アジア省エネルギー型資源制度導入実証事業」をスタートし、海外支援を展開しています。

また、国内に目を向けると、CEに対応していくための資源循環の高度化には強靱な静脈産業の存在が不可欠です。しかし、日本の静脈産業は欧米と比較するとその規模は十分の一程度であり、静脈産業自体の成長を目指した政策が必要となります。そこで経済産業省では「廃棄物管理視点から資源政策視点の制度への転換」「静脈産業と動脈産業の連携」が必要であると考えており、それらを実現していくためのプラットフォーム作りや予算事業等を活用した成功モデルの創出を図っていくこととしていることに加え、そうした政策展開の方向性を国として取りまとめていく可能性についても、梅田様はお話しされました。

【講演2】「循環経済を巡る欧州動向と今後の在り方」
 (三菱総合研究所 環境・エネルギー研究本部 研究員 新井 理恵)

MRI新井

弊社研究員の新井からは、欧州におけるCEとその動向、そして日本におけるCEの在り方について講演を行いました。

欧州におけるCEのビジョンを示したCEPは、製品設計〜生産プロセス〜消費〜廃棄物処理・管理〜再生資源という、バリューチェーンにおける各ステップに対応する施策を用意し、新たなビジネスモデルの創出や開発・投資の促進などを行っていくものです。また、CE推進のために新たな法制度を作るのではなく、既存の制度や政策の中にCEの概念を取り込もうとしているところも、特徴的であるといいます。

ただし、すべてのステークホルダーが諸手を挙げてCEを歓迎しているかというと、決してそうとも言い切れません。ステークホルダーへのヒアリングによると、CEがもたらす効果やCEPの概念を評価する声も多い一方で、「製品の耐久性や修理可能性、リサイクル性などの規格化が困難」「実行のためには減税などのインセンティブが必要」など、その実現可能性が疑問視されているということもわかりました。

課題もあるCEですが、今後、欧州での展開が広がっていくことを考えると、欧州市場に参入する日本企業も、CEへの対応は必要になると言えます。ではCEが展開していくと日本経済はどのような姿になっていくのでしょうか。日本の静脈産業は、欧米と比べると規模は小さいながらも、高度な技術を有しています。その技術を活かし、さらに動脈産業と静脈産業の連携を図ることで、天然資源依存からの脱却とともに国際資源循環の適正化が進み、結果として、海外展開の拡大と低炭素社会実現に寄与すると指摘しました。

最後に「CEの実現を果たすことは、バリューチェーン全体を見通して効率的な経済社会を生み出し、同時に新たな付加価値を生み出すものであり、単なる環境対策にとどまらない、経済的なメリットを生み出す大きなチャンスであると考えます」と話し、講演を締めくくりました。

第2部

【講演3】「国際標準のビジネス活用とサーキュラーエコノミー」
 (東京都市大学 環境学部、多摩大学ルール形成戦略研究所 客員教授/
  株式会社日立製作所 研究開発グループ社会イノベーション協創統括本部
  チーフアーキテクト室長兼知的財産本部国際標準化推進室主幹技師長 市川 芳明様)

市川様

第2部の講演では、市川様より国際標準をどのようにビジネスに活かすのかということをベースに、国際標準とCEの関連性についてお話をいただきました。

市川様はまず、これからの日本が目指すべきビジネスモデルについて話されました。それは、「共生型ビジネスモデル」と市川様が呼ぶもので、「自社独自の技術を売るという従来のビジネスモデルではなく、自社独自の技術を他社や国内官庁、果ては国外企業や政府が持つものと掛け合わせることで、大きな枠組みで社会課題を解決し、その分、高いリターンを得る」ビジネスモデルのことです。

そして、このような共生型ビジネスモデルを作り上げるために必要になるのが「市場」であり、市場を形成するために「標準」が必要となるのです。

「日本では、“標準”は公益的なもの、社会貢献的なものだと考えられてきました。競争に勝つためには、開示していいものは標準としてオープンにしますが、その一方で、他社には情報を見せたくないものは特許を取得し、クローズにします。技術軸の中に、オープンな部分とクローズな部分が混在しているわけです。これは製品そのものを標準規格とするものですが、これでは市場が成長しません」(市川様)

市川様が例として挙げたのが、かつて日立製作所が作った分析装置の例です。素晴らしい技術を持ち、世界で初めて商品化に成功したものの、売り上げは芳しくなかったそうです。これは、商品を売るためには市場形成が必要になりますが、当時、日立製作所では市場を形成する活動をまったく行っていなかったためだと、市川様は説明されました。

このことを踏まえ、市川様は「ビジネスを行う上で、技術軸だけで物事を考えるのではなく、市場軸の観点も持たなくてはなりません。そして、技術軸は特許で、市場軸は標準規格で見ることで、市場を形成していくのです」と説明されました。

またこれまで、何らかの商品やサービスを開発するとき、製品構築という、技術面にのみ焦点を当てて標準化を行ってきました。しかし市川様は、それでは市場形成を行いがたく、ビジネス的なメリットは薄く、すべての領域を標準化する「ルール形成型標準」を行うべきであると指摘されました。ルール形成型標準によってビジネスを進めることで、ビジネスが進行する過程の中で起こりうる問題を排除できるとともに、顧客に対してもルール付けを行うことができ、作り手のメリットも大きくなるというのです。このことを説明するために、市川様はこんなたとえ話をしました。

「ある警察で、非常に安い綿棒を購入したところ、殺人現場で必ず同一人物のDNAが検出されるようになりました。謎の殺人犯の手がかりはそのDNAだけ。捜査はまったく進みませんでしたが、トリックは非常に簡単で、そのDNAは、綿棒の生産工場の工員のものだったのです。これは、製品にのみ標準を適用するから起こる問題です。ルール作成型標準を導入し、製造工程や品質だけではなく、顧客の使い方にもルールを適用することで、こうした問題を排除できるようになるのです」

そして、今後新たなビジネスを生み出していくであろうCEにおいても、この技術軸と市場軸の2軸からビジネスモデルを考え、ビジネスの上流から適用できるルール形成型標準を導入し、マーケットを形成していくことが、CEを推進する企業にとっても、行政にとっても重要になるだろうと市川様は示されました。

【分科会報告】「シェアリングエコノミー分科会」取り組みの中間報告
 (株式会社ビザスク 宮川 晶行様)

宮川様

講演に続いて、株式会社ビザスクの宮川様より、現在進行中の「シェアリングエコノミー分科会」の中間報告が行われました。

シェアリングエコノミーとは、モノやお金、サービスなどを交換・共有することで成り立つ経済システムのことです。この分科会では、シェアリングエコノミーを活用したこれからの企業のあり方を探るために、「副業・女性」並びに「オープンイノベーション」という切り口から、シェアリングエコノミーについての理解を深めることを目的としています。

6月21日(火)に行われた第1回では「家庭支援と女性活躍」をテーマに、7月20日(水)に行われた第2回では「雇用とはたらく」をテーマに、それぞれ外部有識者による講演や、参加者のグループディスカッションなどを行いました。

この分科会は、第3回が8月24日(水)に、第4回が9月21日(水)に行われる予定となっています。

【新規分科会活動紹介】

最後に、新規分科会として、「健康情報活用ビジネス研究会」「インテリジェント自治体分科会」「Save Our Forest! 森林資源のフル活用に向けてスギの用途を広げるビジネスアイデアソン」「木質バイオマス熱利用推進分科会」「公共施設マネジメント分科会」の5つについて紹介しました。

  1. 健康情報活用ビジネス研究会
  2. インテリジェント自治体分科会
  3. Save Our Forest! 森林資源のフル活用に向けてスギの用途を広げるビジネスアイデアソン
  4. 木質バイオマス熱利用推進分科会
  5. 公共施設マネジメント分科会


配布資料

当日の配布資料は、下記よりダウンロードいただけます。
 2016年度研究会総会配布資料

お問合せ

プラチナ社会研究会 事務局 担当:高橋
 E-mail: platinum@mri.co.jp

株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

アンケート

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