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「2025年の日本の学びとMOOCを考える」 第2回ワークショップ開催レポート

第2回ワークショップは、2016年6月30日、明治大学グローバルフロントで開催されました。

第2回WS-1


今回のワークは、前回のキーセンテンスから導かれるシナリオのモデルを掘り下げ、その成立要件を定義するところをゴールとしています。

各グループから提案されたキーセンテンスは11。そのうち、特に得票数の多かったものを選び、事務局でシナリオ・プランニングのための軸を設定しました。それが「学びの目的が“感性”か“理性”か」と、「学びの成果が“アウトプット”か“プロセス”か」です。この軸を直交させて得られる4つの象限がシナリオのモデル=世界観になります。高橋氏は、この4つの世界観を入試で例え、シナリオ1は「マークシート式入試」、2は「論述式入試」、3「AO入試」、4「推薦入試」のようなものとし、「それぞれの世界で、どんな社会になり、どんな学び方になるのかを考えて」と呼びかけました。

第2回WS-2
このモデルでは
  ・シナリオ1「学びの目的は理性を高めるためで、アウトプットで評価する」
  ・シナリオ2「学びの目的は感性を高めるためで、アウトプットで評価する」
  ・シナリオ3「学びの目的は感性を高めるためで、プロセスで評価する」
  ・シナリオ4「学びの目的は理性を高めるためで、プロセスで評価する」
の4つということになる。


ワークショップはワールドカフェ方式で行われ、オリジナルグループで1回セッションを行った後、メンバーを入れ替えて新たに2回行い、再び元のグループに戻って最後の成果をまとめるという方法を採りました。

まず各グループで、テーブルにいっぱいの模造紙に2軸を書き出し、前回宿題になっていた将来の学びに対して思うことを各人が書き出し、マトリクスに配置していくところからスタート。学びについては緑、技術についてはピンク、社会的変化は青と付箋の色は使い分けをしています。

第2回WS-3


この配置された文章は、いわばシナリオ・プランニングにおける外的要因(Force)と呼ばれるもので、この要因が2軸で描かれた世界観の中で、どのように変化するかを考える必要があります。高橋氏の事前説明では、「やり直しが利く社会になる」という要因に対して、「グローバル化の進展」という背景があり、「雇用の流動化が進」み、教育分野では「社会人の再教育が進む」のではないかという推測=要因の変化の例が示されました。しかし、いざワークに取り掛かると、各テーブルとも要因を配置することに集中します。「グローバルな学びのコミュニティが増える」「JMOOCで学びが細分化される」「高等教育が自由化する」等々、さまざまな要因を出すことに終始し、20分後に最初のメンバーチェンジ。2回目のセッションに入り、新メンバーになっても同様に要因の出しあいが続きました。

ファシリテーターの阪井氏は、「ある程度までいけば、発散は必ず限界に来て、自然と収束・結晶化の方向へ進む」とあえてコントロールはしていません。確かに2回目のセッションの途中までは配置が続きましたが、ところどころで社会変化を描くところも出始めます。例えばあるグループでは「学びの方向をIT、AIが決定する」という要因から、「自動運転」「(ドライブという)楽しみが減る」「代わりの楽しみが増える」「家電の自動化が進む(IoT)」というように、センテンスの前後に広がる生活の変化を描いています。またあるグループでは「シームレスな教育が進む」という要因に対し、「シームレスとは何か」「小学校もシームレスなのか」「学びの目的とはそもそも何なのか」と連鎖的に学びそれ自体についての理解を深めていたようでした。

描かれたさまざまな世界観

そして3回のワークを終えて、再び元のグループに戻り、「結晶化」のフェイズへ。高橋氏は書きだされた要因のうち、緑色の学習の要因に注目し、「これからの学びを考えてほしい」と呼びかけます。「ここだったら、こういう学びになる、というものを出して、世界観を描き出して」。そして、それがどんな世界なのか、一言で表す“ラベル”も付けるよう求めました。

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ワークでは、各テーブルに三菱総研のメンバーが1人加わりエクセルのフォーマットシートに世界観を記録していきます。記録するのはその世界観の「ラベル」「学びの特徴」「実現する条件」「良い点・悪い点」。これまで書き出してきたワークからは、若干のジャンプが必要で、説明の際には会場から「難しいな!」という声が上がり、笑いを誘っていました。

この作業は、これまでの議論を元にイメージされた世界の有り様、学びのあり方がどんなものであるかを、具体的な形で描き出す作業となります。その作業のやり方もグループによってさまざまで、ラベルから先にやるところもあれば特徴から先に埋めていくところも。また、取り分けどの世界観が着手しやすいということもなかったようで、1~4の世界観の着手順もさまざまでした。まとめる作業は30分ほど取られましたが、各グループとも集中していたためあっという間に過ぎ、最後のシェアを行いました。

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最初のグループは、シナリオ1を効率化が進むことから「超効率学習社会(アンキパン社会)」、シナリオ4を「意欲の差がプロセスの格差につながる時代」であるとし、「学習意欲格差社会」とラベリング。感性がプロセスで評価されるシナリオ3では、「学びがエンターテインメントになり、プロセスを感性で楽しむ時代になる」とし、「学びエンターテインメント社会」としました。シナリオ2は「とても揉めた」と話し、価値観が競合する「価値観宗教戦争社会」と名付けました。

2番目のグループは、シナリオ1の世界を、グローバリゼーションの進展を下敷きに、「世界中で学ぶべきことが画一化する」とする「学びの標準化」と名付けました。これに対応するのがシナリオ2で、個性が重視される「個性の確立化」社会。シナリオ3は「やりたいことが可視化される「意欲の可視化」、対してシナリオ4では「努力の可視化」という社会が到来すると描いています。

3番目のグループでは、ITの発達を軸にした世界観が描かれました。シナリオ1は「旧来の学習内容がITで効率化」される社会、シナリオ4は「プロセスのログが細かく記録される社会」。対してシナリオ3は、「AIやITでできない、人間らしい力、例えば質問力などを養う」社会として、「AIとコンピューターでできない領域に集中する」世界であるとしています。

4番目に発表したグループは、シナリオ1を「現在の社会」であるとし、少し未来に進むとシナリオ4のような社会になると予言。シナリオ3を「リタイアしたら住みたい社会」としています。また、シナリオ2は「評価方法がないため厳しい社会になる」と予測しました。

5番目のグループは、シナリオ1と3のみを書き出しています。シナリオ1は「不確実な社会でJust-in-Timeな学び」とラベリング。ITによる学習の超効率化を背景に、「例えばフランス出張が決まったら、じゃあフランス語を勉強しようかなという世界になる」と例示。また、シナリオ3は、「感性」それ自体を「個性」ではなく「共鳴する(させる)力」と定義して、「共鳴できる学び」とラベリングしていました。

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シナリオの難しさ

シェアされた内容に対し、最後に福原美三氏(JMOOC事務局長、明治大学特任教授)から「物事には光と影、両方がある」とコメントがありました。「(描かれる世界での)光は加速すること、影は抑えることを考えると、前向きな議論ができるのではないか」。確かに例えばシナリオ1の「理性/アウトプット」の世界は、これまでの“詰め込み教育”などのためか、あまり良いイメージが描かれていなかったようでした。「客観的に良い、悪いを描くことができれば議論が深まる」と福原教授は話しています。

また、「世界を描く前提条件についてもう少し考察できれば良かった」とも指摘。例えばシナリオ2では、「感性を評価する」と言ってしまうと価値観の押し付けでしかありませんが、「感性的な側面をうまく評価する思考法やツールが成立すると考えれば、明るい未来も考えることができるのではないか」とし、柔軟に考えることを呼びかけていました。

事務局の高橋氏からは宿題として、今日描いた4つの社会において「MOOCがどのようになるか」を考えてくるよう要請がありました。次回はこの日出された世界観をベースに、それらの社会の成立条件を考えるとともに、その中でMOOCがどうあるべきかを考えていくことになります。(文:土屋 季之)


>第3回ワークショップ 開催報告

株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

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