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「2025年の日本の学びとMOOCを考える」 報告会開催レポート

ここまでの3回のワークショップの成果は、2016年7月28日に開催された報告会で改めてまとめられました。報告会では、事務局の高橋氏がこれまでの振り返りをするとともに、議論の内容を整理したうえでMOOCのこれからのあり方や、それが成立する社会像などについても言及しました。終了後には懇親会も催されています。

報告会-1

新しいMOOC

最初に3回のワークショップを振り返りながらまとめた後、まず、高橋氏は、ここまで議論された1~4のシナリオの実現条件(社会変化含む)を整理し、そこで成立しうるMOOCのコンセプトモデルを提示しました。

例えばシナリオ1は、安定的に拡大する経済を背景にグローバル化が進展した社会であり、現在の働き方、学び方の延長線上に新しいMOOCが成立すると見ます。それを高橋氏は「ビジネス志向MOOC」と呼び、ビジネス的に成功した(したい)社会人や学生、転職やキャリアアップを求める人向けに、ビジネスとして成功する可能性を示唆しています。あるいはシナリオ2は個性重視、イノベーション重視の世界観ですが、その背景には経済的な不況があり、構造改革が求められるようになると予見。シナリオ2のようなMOOCはその世界でこそ求められるようになるとしました。

このように各シナリオにおけるMOOCの可能性と社会的な成立条件のエッセンスを整理したものが《表1》になります。

報告会-2

《表1》

この中で、高橋氏は「今後世界がこのまま進んでいけば、シナリオ1、3のMOOCがクローズアップされるのではないか」と会場に投げかけました。それによると、シナリオ1はグローバル化とAIの進化によって言語の障壁が下がり、世界はよりシームレスになります。そこでは「世界レベルの競争激化とともに、グローバル市場を狙える可能性がある」。

シナリオ3は「つながり」という日本らしい文化要素が新しい価値観を支えることから、「日本が世界に先駆けて成長できる可能性」がある分野。しかしその一方で、特定の文化的なしばりがあることから大きい市場をストレートに狙うことが難しい。「しかし作りこめば息の長いビジネスになる可能性がある」と分析しています。

教育とMOOCを俯瞰的に考える

報告会-3


高橋氏からのプレゼンテーションの後、会場の参加者たちとの意見交換も行いました。テーブルを囲む形ではなく、初めての講義形式でしたが熱の入った議論が交わされました。

冒頭、シナリオ1、3に絞り込んだことの妥当性や意義についての質問と意見が集中。阪井氏は「シナリオが分れる分岐点についての合意を得るのがシナリオ・プランニング」と前置きしたうえで「1と3はグローバル化、内向化という対になっているし、2と4も対概念になっている」と説明。そして「1-3の世界と、2-4の世界が入れ替わるより大きなダイナミズムもあるだろう」と解説しています。また、ある参加者から「ばっさりと1-3、2-4の世界に分かれるのではなく、量的な割り合いの違いではないか」という意見も出され、会場からは賛同の声が多く上がっていました。

続く議論の中では、改めて教育のあり方、MOOCの可能性を考え直す意見も。「MOOCは、学ぶことで貧困から脱しようとする人たちのものであるべきではないか」とし、その考えがシナリオのどこに該当するかという議論です。これに対し阪井氏、福原氏は「良い視点」という評価とともに、これについては「日本特有の教育の課題」も同時に考えるべきという指摘がありました。日本特有の課題とは、高等教育のあり方や質、意義それ自体を議論することのない状態を指しています。阪井氏は「MOOCを巡る議論が、そのようなものに“汚染”されないように注意しなければ」と参加者に注意を促していました。貧困と教育の課題は一朝一夕に答えの出る問題ではないし、MOOCがそこで果たす役割を定義することも難しいもの。最後にMOOCに大きな宿題が出される形で議論はひとまずおあずけとなりました。

報告会-4

  左:阪井教授、右:福原教授

1回目から3回目まではもちろん、最後の報告会までもが活発な意見交換の場となった本ワークショップ。阪井、福原両氏からは「驚き」「面白かった」と高い評価。福原氏は「もっとはずした、不まじめな意見があっても良かったかもしれない」としつつも「ここまでMOOC、教育が、外部で熱心に議論された例はあまりないのではないか。非常にインパクトのある1つの成果」と高く評価しています。

議論は続く

報告会-5


懇親会にはアルコールも供されましたが、そこでも延々と教育やMOOCを巡る意見交換が活発に行われており、しかもそれが楽しげであるのが印象的でした。参加者に感想を聞くと一様に「ワークショップに参加して満足」。多様な意見が聞けたことへの満足のほか、ワークショップの過程での意見の集約手法に感嘆した声も聞かれました。これに加えて、阪井氏が指摘するように「まじめに教育について考え、知恵を絞り合い、ジャズのように即興的なコミュニケーションを交わすことは、大人になるとほとんど機会がない。その楽しさを体験してもらえたことだけでもひとつの成果だったのでは」という意義があったのでしょう。

さらに、今回の成果について、事務局の高橋氏は「MOOCとは何か、教育とは何かという難しい問題は常にあるが、非常いに面白いMOOCの可能性を提示できたと思う。事業的な成功という課題もあるが、インバウンド、地方創生などのスキームに落としこむことでさまざまな可能性が広がることも感じた。今回の成果は何らかの形で発信し、次回につなげていきたい」と話しています。(文:土屋 季之)


>「2025年の日本の学びとMOOCを考える」

株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

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