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【レポート】アクティブシニアの活躍の場を
 2017年3月25日「ひろさきセカンドライフ・プロジェクト」キックオフイベント

地方創生のムーブメントの中で、移住定住促進は大きなポイントのひとつ。通常、若年層を対象にすることが多いなか、3月25日に開催された弘前市主催のイベントは、シニア、シニア予備軍等の比較的高めの年齢層を狙ったちょっと変わった取り組みです。これは「アクティブシニアが活躍するひろさきセカンドライフ・プロジェクト」のキックオフイベントで、平成32年度までに「移住者70名」を目標にし、平成29年度に本格始動するもの。この日は都内在住の弘前市出身者、移住希望者らおよそ10名が集まり、プロジェクトの概要、移住経験者の談話などに聞き入りました。

レポート写真1

セカンドライフ・プロジェクトとは

弘前市経営戦略部総括主査 土岐博志氏

レポート写真2会の冒頭でまず、弘前市経営戦略部総括主査の土岐博志氏から、「ひろさきセカンドライフ・プロジェクト」の説明がありました。

「ひろさきセカンドライフ・プロジェクト」とは、「アクティブシニアを地域の重要な担い手と捉え、地域の住民と一体になって活躍してもらう」ことを目指すもの。シニアを“行政コスト”ではなく“地域リソース”として捉え、その豊富な知恵と経験を地域に還元してもらうのが狙いです。行政からは、まずは住居というハードと、「活躍の場」というソフトを提供します。

住居は、具体的にはサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の提供が中心になります。サ高住の入居要件は、通常60歳以上ですが、国の特例制度を使い、入居要件を50歳以上に緩和して移住を促進していく方針。今年1月には空き部屋などを利用したお試し居住を実施、一人ひとりの希望を聞くオーダーメイドのスタイルで取り組み、体験者のうち1名が早くも3月から移住する予定となっています。

また、活躍の場の提供では「生きがいづくり・コミュニティの形成」「就労機会の提供」「生涯学習機会の提供」「健康づくりのための活動」などに取組んでいくことが紹介されました。特に就労機会については、移住者の経験を活かした活躍の場や、生きがい就労などの機会も提供していく予定であることも紹介されました。

活躍と交流の場を提供する「りんごの樹」

有限会社アムスカンパニー代表取締役 佐々木愛氏

レポート写真3続いて、「ひろさきセカンドライフ・プロジェクト」で提供されるサ高住「りんごの樹」を運営する有限会社アムスカンパニー代表取締役の佐々木愛氏が登壇し、りんごの樹の特徴や、暮らしぶりなどを紹介しました。

りんごの樹の特徴はなんといっても「広いこと」。一般的なサ高住が18~25平方メートルであるのに対し、こちらは32~59平方メートル。「ご家族が来ても安心して泊まっていただける」広さです。

また、全館バリアフリーで、365日24時間の見守り体制があり、室内3箇所にあるボタンを押せばすぐ駆けつけてくれる安心の体制。社会福祉法人愛成会と提携しており、同法人が運営する施設が隣接。「デイサービス、訪問介護があるので、何かあっても安心」。ほかにも、乳児保育園や幼保連携型認定こども園などがあります。りんごの樹の1階では「こども食堂」や「高齢者カフェ」を運営しており、施設内にとどまらない、多世代交流が生まれる工夫もしています。

そして、温泉やはっきりとした四季、美しい景観といった弘前市の魅力、ねぷたを始めとする祭りが根強く残る豊かな風土文化があることを話し、「弘前市でなら自分らしさを表現する場を見出すことができるのでは」と、さまざまなイベントやボランティアがあることも紹介。ボランティアは提携する社会福祉法人や医療法人、児童施設で行われており、多世代交流の楽しさとともに「地域で役立つ」やりがいを感じられるものであると佐々木氏は話しています。

そして最後に「今後の人生のパスを考えて」と投げかけます。いずれ認知機能・運動機能は低下し、サ高住も卒業しなければならない時が来るかもしれません。「その時に、選択肢が多いことが人生を安心なものにする」と指摘した上で、「自分らしいくらしを実現するために」弘前市という選択、りんごの樹のような生活を考えてほしいと語って締めくくりました。

「弘前が好きだから」移住予定者のキモチと現実

“移住者第一号”中田るり子氏

レポート写真4次に登壇したのが“移住者第一号”の中田るり子氏。中田氏は1月のお試し居住を体験して移住を決定、3月末にはりんごの樹に入居することになっています。弘前市の経営戦略部総括主幹を務める秋田美織氏との対談形式で、移住に至った経緯などを紹介しました。

中田氏はもともと弘前市出身で「18歳までは市内で過ごして、雪の多さや寒さが辛かった」思い出があったそうです。しかし「45年も都内で事務職に就いていて、もう弘前に帰りたくて帰りたくて堪らなかった」という思いを抱いていたために、平成27年頃から移住することを考え始め、市に積極的にアプローチするようになりました。

移住体験は2泊3日。りんごの樹の空き部屋を利用してのステイで、「雪、寒さが嫌いなら、敢えてそのシーズンに来たほうが良い」とのことから1月に実施。中田氏の希望で、隣接する介護施設でのボランティア体験、郷土料理体験などに参加しています。

りんごの樹でのステイや諸体験を中田氏は「すっかり気に入った」と話します。まずりんごの樹は保育園に隣接しているため「遊んでいる小さな子どもたちの姿が間近に見える。それだけで明るい気持ちになれた」。また、郷土料理体験も懐かしく、「おばあちゃんの味を思い出し、習いたくなった」ので、移住後も通いたいと話しています。ボランティアについては、都内ですでに介護士の初任者研修を受けるなど、セカンドキャリアの選択肢に入っていたこともあり、移住後も研修を続け、さらにステップアップしていきたい考えであることも語りました。

そして最大の課題の寒さについて、中田氏は「記憶にあるよりも5度は暖かい」と驚いたことを明かし、家の中の寒さも「暖房を付けておかないと眠れないと思っていたらこれも全然そんなこともなくて、“やったあ!”という気持ちになった」ことも話しました。「一軒家では雪かきの苦労が絶えないが、集合住宅ならその心配もない」ことも、りんごの樹を選んだ理由だったそうです。

100歳まで生きるために必要なコト

特定非営利活動法人スポネット弘前理事長 鹿内葵氏

レポート写真5最後に登壇したのは、特定非営利活動法人スポネット弘前理事長の鹿内葵氏です。鹿内氏は先ごろあったダボス会議で「これからの人生100歳が当たり前になる」ことが議論されたことを挙げて、「100歳までどう生きるかを考えると、健康、スキル、人間関係・コミュニティの3つの無形財産を蓄えることが大事になるのでは」と指摘した上で、同NPOの活動について紹介しました。

もともと同NPOは「移住定住を促進する目的で活動しているのではなく、安心で安全なまち、暮らしをつくることを目的に活動してきた」と鹿内氏。りんごの樹にもほど近い、南富田町体育センターの指定管理者を務めており、さまざまな形での社会参加機会の創出に取り組んでいます。

そのひとつが「夏休み、冬休み期間の学習支援と居場所づくり事業」。主に小学生の宿題を、弘前大学の学生が手伝うという事業ですが、「百人一首指導や卓球教室などさまざまな領域に広がっている」と鹿内氏。

また、高齢者対象の「生きがいサロン事業」「地域健康教室事業」「セカンドライフ地域貢献事業」にも取り組んでいます。地域健康教室事業については「青森県は日本一の短命県。だからこそ逆に手厚く力を入れて取り組むことができる」と逆境をバネに健康促進が進められていることを紹介。ランニングクラブでは、小学生から70代まで多世代が参加し、短期間でフルマラソンに参加する人もいるなど、積極的な活動が進められています。弘前駅前の商業施設「ヒロロ」の3階にある公共スペースを利用した健康教室の運営にも携わり、受講生たちで運動会を開催するなど、その活動は非常にアクティブです。

また、セカンドライフ地域貢献事業は、アクティブシニアの知識・経験を活かした活動で、例えば「学校体育支援事業」という、専門の外部講師や地域のボランティアとして、学校体育に関わってもらう事業を展開していて、現在は退職された方が、体育の授業をサポートするなど、元気に活躍されています。「高齢者が得意なことを生かして活躍できる場をもっとつくりたい」と話しています。

最後に鹿内氏は「ずっと暮らしていきたいと思えるまちをつくることが、移住定住を促進することにもつながるのだろう」と話し、締めくくりました。

移住希望者へリーチ

3者のトークのあとは、会場を設えてのティータイム&フリートークの時間。会場では、登壇者も交えて移住や弘前のことについて語り合う参加者の姿が見られました。

「今日たまたま有楽町でこのイベントがあることを知って来た」という都内在住の50代男性は、移住を検討していたために「さまざまな選択肢を考えることができて良かった」と話しています。特に弘前を移住先に検討していたわけではないものの、「移住経験者(予定者の中田氏)の話が一番良かった。移住に伴うさまざまな不安要素を移住者目線で話してくれてとても参考になった」とも話していました。

レポート写真6 レポート写真7


また、同じく都内在住の60代女性は、「弘前は好きだが、特に移住は考えていなかった」そうですが、「サ高住の広さ、高齢者でも講師になって子どもたちに教えられるという(スポネットの)取り組みはすごく魅力的だと思えた」と話し、「たまたま興味を持って来ただけだったけど、もっと友達を連れてくれば良かった」と話していました。


本件に関するお問い合わせ
三菱総合研究所 プラチナ社会研究会
日本版CCRC推進会議事務局 E-mail: ccrc@mri.co.jp

株式会社三菱総合研究所理事長 小宮山宏

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